「ローカル路線バス乗り継ぎ対決旅 陣取り合戦」第2弾 房総半島を分析する。名参謀が勝利を呼び寄せた

すぐにめくって、すぐに聞く

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中島の幸運

河合チームのルートを検証してみます。最初のポイントは、君津の陣のなごみの里を出て、中島のバス停にたどり着くまででしょうか。

当初、一行はなごみの里の親切なお客さんのアドバイスにしたがって、「やさまる」近くにある堀の内のバス停を発見。しかし、次のバスが13時までありませんでした。

一行は近隣店舗に聞き込んで別のコミュニティバス路線が出ているバス停を教えられます。そのバス停を見つける前に、中島のバス停を発見。ここは日東交通バスの始発ターミナルになっていて、一行は11時30分発の木更津行きのバスを捕まえました。

店舗で教えられたバス停は、おそらく小糸川循環線というコミュニティバスの小糸郵便局前です。小糸郵便局前発は11時11分で、理容室から1kmあまり離れているので、ギリギリ間に合わなかったでしょう。間に合ったとしても君津駅行きで、木更津には行きません。その点で、中島バス停の11時30分発木更津行きバスに乗れたのは大きな幸運でした。行き先もタイミングも完璧です。

仮に、このバスに乗り遅れていたら、次の木更津行きは13時40分までなく、ここでタクシー利用に追い込まれていたはずです。

八幡宿でバスを待ったら

次のポイントは、夕方に八幡宿駅から浜野駅までタクシーを使って渋滞にはまってしまったところでしょうか。仮に、次のバスを待っていたらどうなっていたでしょうか。

▽1日目
五井駅西口17:03→17:23八幡宿駅西口19:20→19:58千葉駅

実際ルートの千葉駅到着が18時26分ですので、約1時間半遅くなります。そうすると、波奈本店でのミッション後に四街道を目指すにしても、千葉駅の出発が21時以降になってしまい、躊躇したのではないでしょうか。すなわち、1日目に四街道の陣が取れなかった可能性が高いです。

後述しますが、1日目に四街道に到達したことこそが、今回の勝因でした。そう考えると、1,600円を費やして八幡宿~浜野間でタクシーに乗ったのは正しかったといってよさそうです。

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佐倉ルート

次に、1日目の夜、河合一行は四街道で泊まらずに、引き返して千葉に宿泊しました。四街道には宿がほとんどないので妥当な判断ですが、仮に翌朝、再び四街道を経て北上していたらどうなっていたでしょうか。これは、仮に1日目に四街道に至らずに千葉泊になっていた場合でも同じです。

▽2日目
千葉駅07:30→08:01四街道駅08:09→09:02京成佐倉駅(☆?佐倉市)09:58→10:20京成酒々井駅10:30→10:50酒々井プレミアムアウトレット(☆?酒々井町)11:30→11:50京成酒々井駅→タクシー3km→宗吾霊堂12:20→12:35京成成田駅

ミッションポイントは、京成佐倉駅周辺と、酒々井プレミアムアウトレットと仮定しました。この場合、2日目に2陣を獲得できます。これを「佐倉ルート」と呼びます。

2日目の千葉駅の出発時間を7時半と仮定して、四街道を経て佐倉ルートに入った場合、京成成田駅に昼過ぎに到着します。その後、ルイルイの実際ルートのように栄町を往復することも可能です。そうすると3陣となります。隣接する都市として印西市がありますが、市域が広くミッションポイントがどこか見当も付かないので、ここでは考慮に入れません。

佐倉ルートから富里へ

もし河合チームが佐倉ルートを採り、酒井プレミアムアウトレットがミッションポイントだった場合、おそらく富里市や八街市の陣を狙いたくなるでしょう。というのも、酒々井プレミアムアウトレットは八街市、富里市と近接していて、どちらにも歩いて市域に入れるからです。

切れ味鋭いパックンを擁する河合チームですので、プレミアムアウトレットに着いたら、歩いて八街市に入り、さらに富里市にも市境をまたいで偵察したかもしれません。すると、プレミアムアウトレットから、香取神社まで4km弱しか離れていないことに気づく可能性もあります。

その場合、こういうことあり得ます。

▽2日目
千葉駅07:30→08:01四街道駅08:09→09:02京成佐倉駅(☆?佐倉市)09:58→10:20京成酒々井駅10:30→10:50酒々井プレミアムアウトレット(☆?酒々井町)→偵察+徒歩3.2km→香取神社(☆富里市)→徒歩1.3km→住野四ツ角13:34→13:48八街駅→徒歩0.8km→生形商店(☆八街市)→徒歩0.8km→八街駅14:36→15:14京成成田駅

このように、2日目に獲得できる陣は4つとなります。1日目の6陣とあわせて計10陣となっていたでしょう。

前述したように、河合チームが東金に進出してこなかった場合、ルイルイチームは御宿と長南の取りこぼしがなければ10陣を獲得できます。となると同点ですが、じつは八街が重なります。ルイルイの「未実現ルート」のほうが、河合の「佐倉ルート」よりも早く八街に到着できますので、河合チームは八街を取りこぼします。となると、10対9で太川チームの勝ちとなります。

このあたりの検証は、仮定に仮定を重ねているので、あまり意味はありません。ただ、河合チームが四街道から佐倉を目指していたら、オンエアよりも互角の勝負になっていたことは察せられます。逆に言うと、河合チームが千葉駅から成東方面へ向かって、太川の進出先を封じたのが勝因だったことが、改めてわかります。

2日目に四街道で引き返していたら

もう一つ、仮に河合チームが1日目に千葉までしか到達できず、2日目に四街道へ行って折り返していたらどうなっていたでしょうか。

▽2日目
千葉駅07:05→07:31四街道十字路07:55→08:25千葉駅08:40→09:37上宿→徒歩すぐ→木村屋ベーカリー(☆東金市)→徒歩すぐ→上宿10:32→10:48浪切不動→徒歩すぐ→浪切不動院(☆山武市)→徒歩すぐ→浪切不動11:48→12:00成東駅

このように、東金の木村屋ベーカリーには10時前に着けます。ルイルイが構想していた「未実現ルート」の東金着は10時半頃ですので、やはり河合チームが先に着きます。そう考えると、東金、山武の両陣は、元来の設定として河合チームが取りやすくなっていた、と考えることもできます。

ただ、2日目に四街道まで出たら、千葉まで折り返して成東へ向かうよりは、佐倉へ向かうのが自然です。そう考えると、「2日目四街道折り返し」は、可能性としては低かったと思われます。

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香取神社はどこにある?

破竹の勢いだった河合チームが唯一苦戦したのが、富里市の香取神社探しでした。先に少し触れましたが、ミッションポイントの香取神社は、富里市の南部にあります。

河合一行は、バス乗客への聞き込みから成田市に近い位置にあると勘違いし、結局見つけ出せませんでした。

富里市の香取神社の最寄りバス停は、住野四ツ角です。厄介なことに、住野四ツ角は八街市内にありますので、八街からバスに乗った場合、最寄りバス停では、まだしおりをめくれません。しおりをめくって、ミッションポイントがどこか知ったときには、最寄りバス停は通り過ぎているという、ちょっと意地悪な配置になっています。

八街からのバス車内で香取神社の位置を正確に把握したとして、降車できる最短のバス停は南山団地入口と思われます。そこから香取神社まで、約2.6kmを歩かなければなりません。すなわち、以下のようになります。

▽2日目
八街駅12:10→12:25南山神社入口→徒歩2.6km→香取神社(☆富里市)→徒歩1.3km→住野四ツ角14:47→15:14京成成田駅

要するに、富里市の香取神社は知名度が低く見つけにくいうえに、八街からのバスだと最寄りバス停が通り過ぎてからでないとしおりをめくれないという仕掛けになっていました。つまり、クリアするのが難しい、トラップ的なミッションポイントだったといえます。ここをスルーした太川チームは、ある意味正しかったことになります。

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河合チームの真の勝因

全体を振り返ってみると、今回の河合チームの勝因が、東金封じにあることに間違いありません。それは、1日目に丁寧な聞き込みでバス停を探し出し、適切なタイミングでタクシーを使い、絶妙な乗り継ぎを成功させて、千葉駅に最速で到達できた結果です。千葉駅に早着できたので、波奈本店でのミッションをこなした後、四街道まで足を伸ばす余力が残りました。

もし、1日目に四街道まで行けなかったら、2日目朝に手近な四街道方面へ向かい、そのまま北上して佐倉ルートを採った可能性が高いでしょう。そうなると、東金や山武の陣を太川チームに譲ることになり、勝敗の帰趨はわかりませんでした。

要するに、完璧な乗り継ぎで千葉に到達し、1日目に四街道の陣を獲得できたことが真の勝因で、結果としてそれが翌日の東金封じにつながった、ということです。

取りこぼしが痛く

対する太川チームは、御宿と長南の取りこぼしが響きました。仮にこの2つを獲得できていれば9陣になっていて引き分けに持ち込めていたはずです。

一方で、この2つをどちらも落とすと、仮に河合チームが東金に来なくても、勝ち目は薄かったと思われます。つまり、太川チームの真の敗因は、東金を封じられたことよりも、御宿、長南を取りこぼしたことにあるように思えます。

あるいは、外房の小さな自治体をできるだけ多く潰すという、当初描いていた戦略を貫徹すれば、勝機はありました。茂原周辺のバスに休日運休が多いのは確かですが、動いている路線もありますので、念入りに探せばもう少し陣を取ることができたでしょう。明確な戦略なしに進み、陣を見落としてしまったことが、太川チームの敗因と言えそうです。

要するに、番組を見ていると天下分け目は東金にあったように感じてしまうのですが、実はその前に勝敗は決していた、ということです。

名参謀パックン

メンバーの動きを見ていると、河合チームはパックンの活躍が光りました。頭脳明晰な上に行動力があり、臆せずコミュニケーションを展開。「すぐにめくって、すぐに聞く」と攻略のコツをすぐに把握し、リーダー河合を補佐する「名参謀」として勝利に貢献しました。ハーバード大卒はダテでなく、これまでの「対決旅」のゲストに比べても、異次元の有能さを見せつけました。

別府も地図読みなどで好プレーを見せましたし、河合はチームをうまくまとめました。「三人寄れば文殊の知恵」といいますが、三者三様に知恵を出し合い、チームプレーで見落としなく最善の選択をしたといえそうです。

一方の太川チームは、いつものことですがルイルイ一人が情報収集やルート選択を背負い込みました。いわば太川のワンマンチームです。ルイルイは経験豊富なバス旅のプロですが、人間ですからときにミスをします。それをフォローする補佐役がいませんでした。エースで4番の名選手がいるワンマンチームが、チームプレーを徹底した挑戦者に敗退した、とでもいえましょうか。

今回は、道路地図がメンバー全員に与えられたこともあり、各人が役割を果たしやすい環境にあり、それがチームプレーを生む土壌にもなりました。これからの対決旅は、リーダーを補佐するゲストの能力が勝敗を左右するようになるかもしれません。(鎌倉淳)

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