イランが個人の自由旅行を禁止するようです。観光ビザの取得には旅行会社による事前手配が必要になり、ガイドの添乗も義務づけられるとのこと。外国の旅行ニュースサイトが報じました。
ツアー参加を義務づけへ
外国旅行メディアのトラベル・アンド・ツアー・ワールドは、2025年8月23日付で、「イランで観光客のツアー参加を義務づけへ。個人旅行は禁止」と題する記事を掲載しました。
記事によりますと、イラン外務省は2025年8月より、ビザの新しい規則を施行します。新規則では、外国人観光客に対し、公式に登録された旅行代理店を通じたツアーへの参加を義務づけます。
これにより、個人の自由旅行は事実上禁止されます。イランを訪れる観光客は、詳細な履歴書、現地旅行会社との契約書、ホテルの予約状況といった書類の提出が義務づけられます。
SNSのリンク記載も
履歴書には、渡航歴、学歴、職歴、さらにはソーシャルメディアのプロフィールへのリンクなどの記載も必要です。
現地旅行会社との契約書には、ツアーの詳細に加え、旅行日、ルート、目的地を明記した詳細な旅程表が記載されている必要があります。旅行会社は正式に登録された会社に限られます。
旅行会社ではホテルの予約もしておく必要があります。いわゆる民泊も含め、個人での宿泊手配は、新規則では厳しく禁止されます。
ガイドも同行
イラン滞在中は、資格を有するガイドの同行が常時義務づけられます。このガイドは、旅行全行程に同行することもできますし、区間ごとに複数の現地ガイドを割り当てることもできます。
新規則に基づくビザ申請の処理時間は、週末と祝日を除いて通常2~3週間かかります。この期間内に、イラン外務省は申請を審査し、ビザ発給要件を満たしていること、および申請者が国家安全保障上のリスクを及ぼさないことを確認するということです。
大使館ウェブサイトに記載なし
以上が、報じられている、イランの新たなビザ制度の概要です。
ただし、現時点で、在日本イラン大使館のウェブサイトに、新たなビザ制度の記載はありません。
日本国籍保有者は、15日以内の滞在なら、イラン入国時に観光ビザは免除されていますが、その記載も、大使館ウェブサイトにはそのまま掲示されています。16日以上の滞在に必要なビザの申請についても、上記のような詳細な書類の提出については記載されていません。
北朝鮮、ブータンに匹敵
報道が事実なら、「旧共産圏方式」とでもいうような厳しい入国管理制度が、イランで実施されることになります。
個人で自由旅行ができないだけでなく、全行程でガイド同行が必要となると、世界的にみてもかなり厳しい条件です。筆者が思いつく限りでは、北朝鮮やブータンに匹敵する制限といえます。
手配は公認旅行会社に限られ、ガイドは有資格者のみということですので、観光客の受け入れ能力も限られることになります。当然、料金も高額になるでしょう。
ユーラシア横断旅行が困難に
日本はイランと伝統的に友好関係にあり、短期旅行の観光ビザは免除されてきました。中長期旅行でも、観光ビザの取得は容易です。ビザを取得すれば、イラン国内を自由に旅行できます。
かつては、パキスタンから入国してトルコに抜けることも可能でした。「ユーラシア横断」のルートとしても、イランの自由旅行は欠かせない要件です。
現在は、パキスタン・イラン国境の治安が悪化し、外務省の渡航自粛勧告がでていることから、陸路旅行者は激減しました。
そのうえ、上記の規制が本当に実施されるなら、バックパッカーのユーラシア横断旅行は、ほぼ不可能になるでしょう。ユーラシア横断ルートとしてはロシア経由もありますが、現在はウクライナとの戦争で旅行が困難になっています。
それにしても、この数年、世界各地で戦乱が起こり、旅行者には厳しい時代となりました。平和が戻り、世界各地で自由旅行を楽しめる時代が、再び訪れることを願わずにはいられません。(鎌倉淳)
【参考記事】
「New Regulations In Iran Now Require Tourists To Join Organized Tours And Prohibit Independent Travel Starting In August 2025」(TRAVEL AND TOUR WORLD)