北海道のバス運転手不足が深刻な状況になっています。2024年12月に、主要バス会社3社が大幅減便を実施しますが、これにとどまらず、さらなる減便の可能性もありそうです。
12月1日に一斉減便
北海道中央バス、ジェイ・アール北海道バス(JR北海道バス)、じょうてつの3社は、2024年12月1日にバスの減便を実施します。
北海道中央バスは、札幌と小樽地区などで路線バス143便を削減します。札幌管内の2系統、空知管内の1系統は廃止となります。同社は、2023年12月、2024年4月、同10月に減便を実施しており、この1年ほどで4度目の減便となります。運行本数はこの1年間で1割の減少です。
同社は高速バスの減便もおこないます。札幌~富良野間の「ふらの号」と札幌~岩見沢間の「いわみざわ号」で計8便を減便します。
JRバス、じょうてつも
JR北海道バスは、札幌圏で平日146便、土休日86便を減便します。北広島~南幌線など3系統は廃止となります。同社もこの1年で約20便を減便してきましたが、今回はより大規模な減便に踏み切ります。
じょうてつは、札幌市内で計40便を減便します。同社は2023年12月と2024年4月に計183便を削減。この1年で2割の減便となります。
3社合計で、運行便数が2023年11月末に計11,742便ありましたが、2024年12月に10,533便となる見通しで、札幌圏全体で約1割の減便となります。
10年で2割減
すでに広く知られている通り、バスの運転手は急激に減少しています。
上場している北海道中央バスの有価証券報告書をみると、2015年に1,740人いた従業員は、2024年に1,379人にまで減っています。10年間で約2割の減少です。
従業員の内訳は示されていませんが、バス会社の場合、多くが運転手です。
北海道中央バスに限った話ではありません。北海道バス協会の統計では、道内のバス運転手は2023年9月時点で5,417人いますが、2019年9月末と比べて1,000人近く少なくなっています。この5年間で1割以上が減少しているそうです。
高齢化と採用難
運転手の高齢化も進んでいます。北海道中央バスの場合、従業員の平均年齢が2015年に46.6歳だったところ、2024年には53歳に達しています。
いっぽう、勤続年数は13.7年だったのが、18.6年になっています。
要するに、10年間で平均年齢が約6歳、勤続年齢が約5年上がっていて、新規採用が進んでいない様子がうかがえます。
10年後にはさらに半減?
この状況を見る限り、バスの減便は今後も続きそうで、12月1日の大減便が最後になることはないでしょう。
もっといえば、10年後にバス運転手が、さらに半減してもおかしくありません。運転手が半減すれば、バスの運行本数も半減してしまうことでしょう。
上記のデータは北海道中央バスのものですが、同社は道内最大手の上場企業で、採用では有利なはずです。道内の中小の路線バス会社は、さらに厳しい状況に陥っている可能性もあります。
上場4社を比較する
では、大手バス会社同士を比較するとどうなるでしょうか。
路線バスを主たる事業とする上場企業は、4社あります。北海道中央バス、神奈川中央交通、新潟交通、神姫バスです。4社を比較すると、従業員数の漸減傾向は、どの会社も似たようなものです。
しかし、平均年齢の上昇は、北海道中央バスで目立ちます。上場4社で2015年の従業員平均年齢が高かったのは神奈川中央交通ですが、同社はこの10年で約2歳しか上昇していません。
これに対し、北海道中央バスが、いまや平均年齢がもっとも高い会社になりました。
バス運転手をどう確保するか
平均勤続年数でも、北海道中央バスは、上場4社でもっとも高くなっています。
一般論でいえば、平均勤続年数が高い企業は、従業員にとって居心地のいい会社とも受けとめられます。
しかし、従業員減と平均年齢の上昇をともなっていると、新規採用がうまくいっていないことを示唆しています。
8割が50歳以上
そもそも、大型二種免許の保有者数が減少しています。2023年度の北海道内での大型二種免許の保有者数は約94,000人です。2014年度が約118,000人でしたので、10年間で約2割減っています。
減少の理由は明確で、新たに大型二種免許を取る人が少ないのです。2023年度の道内での教習所卒業者数は431人、交付件数は544件にすぎません。
ただ、道内だけが少ないというわけではなく、大型二種の取得件数が少なくなっているのは全国的です。その結果、現在の全国の大型二種免許の保有者数の8割が50歳以上となっています。
運転免許保有者が少なすぎ
道内の大型二種免許の年齢別保有者数の統計は見当たりませんが、全国の趨勢と比べても大差ないでしょう。
この傾向が続けば、50代以上の運転手が完全リタイアする20年後には、バスの運転手はいまの2割程度になってしまう可能性が高そうです。採用がうまくいって3割程度でしょうか。3割減ではなく、3割になってしまうのです。
北海道では、今後、函館線長万部~小樽間の廃止なども控えています。10年、20年後の公共交通をどう確保するのか。長い目でみた判断が求められそうです。(鎌倉淳)