北海道新幹線、開業延期の影響は? 2034年ごろになりそうで

3~4年遅れ

北海道新幹線札幌延伸の開業が遅れそうです。予定していた2031年春には間に合わず、現状の工事遅延を織り込めば、工期短縮策を講じても2034年ごろになりそうです。どういう影響があるのでしょうか。

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最大4年遅れ

北海道新幹線は新青森~新函館北斗間が開業済みで、新函館北斗~札幌間について延伸工事をすすめています。延伸が決定したのは2011年で、当時は2035年度の開業予定でした。

それでは遅すぎるということで、2015年に開業前倒しが決定。2030年度(2031年春)の開業予定が新たに設定されました。

しかし、建設工事に遅れが生じており、長万部~倶知安間の羊蹄トンネルでは、巨大な岩塊に行く手を阻まれ、予定から4年遅れとなっています。

H5系北海道新幹線

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オリンピック断念で

4年の遅れを取り戻すのは容易ではなく、札幌延伸開業の延期は不可避と思われてきました。ただ、札幌市が2030年のオリンピックを誘致しているという政治的な事情があり、これまで新幹線開業延期が公に語られることはありませんでした。

新幹線札幌開業とオリンピック開催は、直接関係しませんが、オリンピックが決まれば前倒し開業が議論の俎上にのぼる可能性があったためです。

しかし、結局、札幌市は2030年のオリンピック誘致を断念。次回の2034年についても、2030年と同時に開催地を決めることになったため、事実上、札幌開催の途は絶たれています。

これにより、札幌オリンピックは、実現するとしても2038年以降が確定的となり、北海道新幹線札幌延伸とリンクすることはなくなりました。

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早くても2033年ごろ?

オリンピックという国家プロジェクトの事情から開放されたことにより、今後、北海道新幹線札幌延伸の「開業延期」は、工事の進捗状況を見ながら技術的な議論に入ることになるでしょう。

といっても、すでに北海道新幹線の工期問題については、国交省の有識者会議で議論されています。2022年12月には「北海道新幹線(新函館北斗・札幌間)の整備に関する報告書」がまとめられていて、「3~4年程度遅れている工区も存在」することを認めています。

一方で、工期短縮策も検討しており、「相当の事業期間が残っており、工程の工夫について各受注者と協議中であること等から、現時点で工期を見通すことは困難」としています。つまり、開業時期を明確にすることは避けています。

とはいえ、人手不足もあり、大幅な工期短縮は困難とみられます。工事が3~4年遅れているという現実をみれば、短くても2年、長ければ4年程度の開業延期となりそうです。すなわち、新開業時期は、早くて2033年ごろ、遅ければ2035年春になる、ということです。

あいだを取れば、2034年春ごろが一つのメドになりそうです。

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バス転換も延期へ

北海道新幹線札幌開業延期による影響は多岐にわたります。

鉄道ファンの注目度が高いのは並行在来線の扱いでしょう。

新幹線開業とともに、函館線函館~長万部~小樽間がJRから切り離され、バス転換されることが決まっていますが、北海道新幹線の開業が遅れるほど、バス転換の時期も後ろ倒しになります。JR北海道としては、3~4年の運行継続を見込んでおく必要があります。

バス転換に関しては、バスの運転士を確保できるのかという問題が浮上しています。ただ、開業延期は、バス転換の大方針が変わる理由にはなりません。

沿線の人口減少は進んでおり、後志地区では2030年から2035年の5年間に1割も人口が減ると予測されています。となれば、必要とされる輸送力も相応に減るわけで、むしろ、バス転換へのハードルは下がるかもしれません。

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函館駅乗り入れは?

函館市が計画している、新幹線の函館駅乗り入れ構想も、後ろ倒しになります。函館市は北海道新幹線札幌開業にあわせて、新幹線函館駅乗り入れを実現する「同時開業」の目標を掲げています。札幌延伸が後ろ倒しになれば、時間的な余裕ができ、実現性は高まるでしょう。

もっとも、この構想は、そもそも2030年度までに実現するのは日程的に厳しいとみられてきました。そう考えると、計画の旗を振る大泉市長は、最初から札幌延伸開業の後ろ倒しを織り込んだうえで、「同時開業」を掲げていたのかもしれません。

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再開発にも影響

沿線の駅周辺の再開発構想にも影響を与えます。とくに札幌駅周辺は、新幹線開業にあわせて、大がかりな再開発工事が進められています。新幹線の開業が遅れたら、「器はできたのに列車が来ない」状況に陥ります。

ただ、2030年を目標に進められていた建設工事の一部が後ろ倒しになることで、人手不足などの問題が緩和される側面もあるでしょう。

倶知安町は、在来線撤去を前提としたまちづくりを進めています。そのため、同町は函館線長万部~小樽間のバス転換前倒しを求めています。

しかし、新幹線開業が数年遅れるとなれば、それも難しくなるでしょう。バス運転手不足もあり、「転換前倒し」は遠のく可能性が高そうです。

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JR北海道の経営問題

北海道新幹線札幌開業延期は、JR北海道の経営問題にもカゲを落とします。

政府は2018年に、JR北海道に対し「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を発出しています。そのなかで、「北海道新幹線の札幌延伸の効果が発現する2030年度に、JR北海道が経営自立することを目指す」ことを求めています。

これを受け、JR北海道は2031年度に経営自立を果たすことを経営目標に掲げています。

しかし、監督命令の前提となる2030年度開業が先送りになれば、JR北海道の経営自立も先送りにならざるをえません。

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貨物調整金制度は?

密かな注目点としては貨物調整金制度の見直しが挙げられます。

貨物調整金は、貨物列車走行による経費の一部を、国が鉄道事業者(第三セクター鉄道)に支払う制度を指します。2015年の「政府・与党申し合わせ」では、「現在整備中の新幹線が全線開業する2030年度までに、貸付料を財源とせずに並行在来線に必要な線路使用料の確実な支払いを確保する新制度へ移行する」ことが定められています。

つまり、現状の貨物調整金制度は2030年度までに終了して新制度に移行するわけですが、「現在整備中の新幹線が全線開業する」ことが前提となっています。北海道新幹線開業が遅れれば、貨物調整金制度の新制度移行も後ろ倒しになる可能性があります。

貨物調整金の新制度移行は、全国の第三セクター鉄道の経営に大きな影響を及ぼすポイントです。北海道新幹線の開業延期により、新制度移行も延期されるのかは不明ですが、注目点といえるでしょう。

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事業費増が及ぼす影響

北海道新幹線札幌開業延期は、事業費増にもつながります。2022年の有識者会議報告書は、約6450億円の事業費増加の見込みを示しています。今後、さらに事業費が増えることも想定されます。

整備新幹線の予算は有限なので、北海道新幹線の事業費増が、次に控える北陸新幹線新大阪延伸の建設に影響を及ぼす可能性もあります。さらに、その「次」の可能性がある、四国や東九州新幹線に影響を及ぼすかもしれません。

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新たな開業時期の提示を

ということで、北海道新幹線札幌延伸開業の延期は、多方面に及びます。1年程度の延期なら誤差の範囲かもしれませんが、4年となると影響は大きくなりそうです。

関係者としては、早めに新たな開業時期を提示してほしいところでしょう。

一方、国交省としては「2度の開業延期」は絶対に避けたいところです。したがって、新たな開業時期の公表は、工事の見通しがある程度ついてからになるかもしれません。(鎌倉淳)

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