新幹線「喫煙ルーム廃止」に覚えた違和感。新型車両につけたのに

清掃員の負担軽減?

東海道・山陽・九州新幹線車内の喫煙ルームが廃止されます。喫煙率の低下を踏まえた措置ですが、本当にそれだけが理由なのでしょうか。

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2024年春に全面廃止

JR東海・JR西日本・JR九州の3社は、東海道・山陽・九州新幹線の車内にある喫煙ルームを2024年春にすべて廃止すると発表しました。

東海道・山陽新新幹線の16両編成車両には、現在、3、10、15号車のデッキに計3箇所の喫煙ルームが設けられています。山陽・九州新幹線の8両編成車両には、3、7号車の2箇所があります。これらの喫煙ルームを、すべて廃止します。

廃止の理由として、JR東海などは「近年の健康増進志向の高まりや喫煙率の低下」を踏まえたとしています。

喫煙ルーム廃止後、空いたスペースには非常用の飲料水を配備します。また、JR西日本は、新倉敷駅や新尾道駅など8駅にある喫煙コーナーも廃止します。

新幹線N700米原駅

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2007年に導入

昭和時代までさかのぼれば、新幹線は全席喫煙可でスタートしました。初めて禁煙車が設置されたのは1977年で、「こだま」号の16号車が禁煙車とされました。以後、少しずつ禁煙車の割合が増え続けてきましたが、1990年代までは喫煙車両が主体でした。

状況が大きく変わったのは、2003年に健康増進法が施行されてからです。

同法により、鉄道各社が受動喫煙防止の義務を負うことになり、JR東日本は2007年に新幹線全路線を禁煙化しました。

一方、JR東海・西日本は、同じ2007年に東海道・山陽新幹線に投入したN700系を全席禁煙としつつ、喫煙ルームを設置する選択をしました。以後、同新幹線では全編成に喫煙ルームが設けられてきました。

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対航空機競争で

喫煙ルームが設置された背景として、東海道・山陽新幹線の利用者は男性のビジネス客の割合が高く、利用者の喫煙率が高かったことが挙げられます。

国民生活基礎調査によりますと、2007年の喫煙率は男性39.7%、女性12.7%でした。主力の男性ビジネス客の4割が喫煙者である以上、喫煙スペースを廃止するわけにはいかなかったというわけです。

対航空機の競争という事情もありました。東海道・山陽新幹線は、首都圏から対中国・四国地方で航空機と激しく競合しています。早い段階で禁煙化が進んだ航空機に対し、喫煙が可能であることを、新幹線の一つのセールスポイントに据えたわけです。

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なぜ、このタイミング

喫煙率はその後も低下の一途をたどり、2022年には男性で25.4%、女性で7.7%にまで減っています。男性客でも喫煙者は4人に1人になってしまい、喫煙ルームの需要は以前より小さくなりました。

とはいえ、いまでも男性客で4分の1の喫煙者はいるわけで、にわかに喫煙ルームを廃止しなければならないほど、利用者が激減しているとは思えません。実際、列車によっては、喫煙ルームに列ができていることすらあります。

特段の法令改正が控えているわけでもなく、なぜ、このタイミングで廃止するのか、違和感も覚えます。

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N700Sにつけたのに

振り返ると、2020年にN700Sが導入された際、筆者は、「まだ喫煙ルームをつけるのか」と驚いた記憶があります。

喫煙率の低下をいうならば、いずれ喫煙ルームが廃止されていく方向が時代の流れであることは、すでに明らかでした。にもかかわらず、JR東海は喫煙ルームをつけるという判断をしたわけで、それだけ喫煙者を重要視していたのでしょう。

それからわずか数年での方針転換です。しかも、「新型車両に喫煙スペースを設けない」という判断ではなく、営業中車両の喫煙車を閉鎖して非常用品を置くという、直接的にサービス向上にも増収にもつながらない施策です。

こうした施策を打つとなると、喫煙率の減少以外にも、別の理由があるのではないか、と勘ぐりたくなります。

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清掃員の負担軽減策?

考えられるとすれば、清掃の手間を減らす目的でしょうか。喫煙ルームの清掃は客室清掃に比べ手間がかかりますし、清掃員が非喫煙者の場合、喫煙ルームの清掃は好まれません。

人手不足のおり、清掃員の人員確保に懸念があるのかもしれません。であれば、清掃業務量を削減して、非喫煙者のスタッフの負担を軽減することが、喫煙ルーム廃止の理由の一つの可能性もありそうです。

トイレ喫煙の予防策を

喫煙ルームの廃止で懸念されるのは、トイレなどでタバコを吸う人が出てこないか、という点でしょう。残念ながら、飛行機や東北・上越新幹線でも、そうした事例は見受けられます。

東海道・山陽新幹線で喫煙者の比率が高いなら、「トイレ喫煙」の予防策は重要になりそうです。(鎌倉淳)

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