肥薩線の観光特急「はやとの風」の運行が終了します。車両は長崎線の新観光特急「ふたつ星4047」に充てられます。
現在運休中
JR九州は、吉松~鹿児島中央を結ぶ肥薩線・日豊線特急「はやとの風」の運行を2022年3月までに終了すると発表しました。「はやとの風」は現在運休中ですが、12月に運行を再開し、3月に運行終了となります。
「はやとの風」は2004年3月、九州新幹線の新八代~鹿児島中央間の開業にあわせて運行を開始しました。しかし、近年は利用が低迷し、2018年3月ダイヤ改正で、土休日を中心とした不定期列車となりました。
2020年は新型コロナウイルスの影響で4~6月に運休。夏季に運転を再開したものの、7月の熊本豪雨で肥薩線の八代~吉松間が不通になったこともあり利用が伸び悩み、9月から再び運休していました。
2021年12月25日に運転を再開する予定で、学休日と土休日に運転し、3月21日が最終運行となります。
「ふたつ星4047」に転用
肥薩線八代~人吉間は壊滅的な被害を受けており、運行再開は見通せません。そうした状況で、JR九州は「はやとの風」の廃止を決断し、西九州新幹線開業にあわせて車両を長崎・大村線の新特急「ふたつ星4047」に転用することを明らかにしました。
「ふたつ星4047」は3両編成で、2両を「はやての風」から充当し、1両を肥薩線の観光列車「いさぶろう・しんぺい」の予備車両から充当します。
「いさぶろう・しんぺい」も予備車供出
「いさぶろう・しんぺい」も、本来の運転区間である人吉~吉松間の復旧が見通せないなか、最近は鹿児島線などで運行している状況で、予備車両を維持する必要性が薄れたのでしょう。保有車両3両のうち、1両を「ふたつ星4047」に供出することになります。
JR九州は「ふたつ星4047」のデザイン案も公表。2022年秋の西九州新幹線開業にあわせて武雄温泉~長崎間で運行開始をめざします。
厳しい現実
肥薩線の不通区間の復旧について、JR九州の青柳俊彦社長は「ほとんどつくり直すに近い」と述べ、困難であることを示唆しています。復旧費用の概算は2022年3月にも示される見通しですが、100億円単位の金額になるのは間違いなく、鉄道として復活できるかはわかりません。
そうしたなか、「はやとの風」「いさぶろう・しんぺい」という肥薩線を象徴する観光列車の車両が西九州エリアへ転出するわけです。やむを得ない措置とはいえ、厳しい現実というほかありません。(鎌倉淳)