北陸新幹線敦賀延伸の運行計画の概要が発表されました。東京~敦賀間を直通する列車は1日14往復が設定されます。詳細を見てみましょう。
3月16日開業
JR西日本とJR東日本は、建設中の北陸新幹線金沢~敦賀間の延伸について、開業日と運行計画の概要を発表しました。
まず、開業日は2024年3月16日です。同日に北陸新幹線が敦賀まで延伸し、新たに6駅が新幹線駅として開業します。小松、加賀温泉、芦原温泉、福井、越前たけふ、敦賀の各駅です。
東京方面の運行計画
発表された運行計画の概要を見てみましょう。
まず、東京~敦賀間を直通する定期列車として、「かがやき」が1日9往復、「はくたか」が同5往復設定されます。「かがやき」のうち5往復は速達タイプで、延伸区間では金沢、福井、敦賀のみ停車します。
「かがやき」のうち4往復は、延伸区間の小松、加賀温泉、芦原温泉、越前たけふの各駅を2往復ずつ分担して停車します。福井には全列車が停車します。
「はくたか」の5往復は、延伸区間で全駅に停車します。
最速達列車での所要時間は、東京~福井間が2時間51分、東京~敦賀間が3時間8分です。現在の北陸新幹線利用時に比べ、それぞれ36分、50分短縮します。
「かがやき」「はくたか」をあわせて、東京~福井間の直通列車は1日14往復ありますので、おおむね毎時1本程度が運行されるようです。
大阪・名古屋方面の運行計画
大阪・名古屋方面へは、「つるぎ」が富山・金沢~敦賀間で1日30往復運行します。このうち25往復が、敦賀駅で特急「サンダーバード」「しらさぎ」と接続します。内訳は、富山~敦賀間が18往復、金沢~敦賀間が7往復です。
「つるぎ」は、延伸区間の途中で福井のみ停車する速達タイプと、全駅に停車する各停タイプの2種類があります。25往復のうち、速達タイプが9往復、各停タイプが16往復です。速達タイプのうち4往復、各停タイプのうち3往復が金沢~敦賀間のみの運転です。
「サンダーバード」は1日25往復で、全列車が敦賀で北陸新幹線と接続します。したがって、大阪~金沢間は、毎時2本程度の運行頻度のようです。
「しらさぎ」は1日15往復で、うち名古屋~敦賀間が8往復、米原~敦賀間が7往復です。名古屋~金沢間と米原~金沢間が、それぞれ2時間に1本程度の運行頻度になるようです。
大阪・名古屋方面の在来線特急に接続しない「つるぎ」は、朝夜時間帯に5往復運行します。
福井は3分短縮にとどまる
最速達列車の所要時間は、大阪~福井間が1時間44分(3分短縮)、大阪~金沢間が2時間9分(22分短縮)、大阪~富山間が2時間35分(29分短縮)です。
名古屋~福井間は1時間33分(3分短縮)、名古屋~金沢間は2時間9分(16分短縮)、名古屋~富山間は2時間35分(23分短縮)です。
大阪・名古屋~福井間は3分の短縮にとどまります。敦賀駅での乗り換えの手間を考えると、この区間で新幹線開業のメリットはほとんどなさそうです。
北陸エリア内では、金沢~福井間が24分、金沢~敦賀間が41分程度となります。北陸3県内の移動はしやすくなりそうです。
並行在来線の特急廃止
北陸新幹線延伸にともない、並行在来線区間での特急は廃止されます。
具体的には、「サンダーバード」は敦賀~金沢・和倉温泉間で運行を終了。「しらさぎ」「おはようエクスプレス」「おやすみエクスプレス」は敦賀~金沢間で、「ダイナスター」は福井~金沢間で運行を終了します。
金沢~和倉温泉間の「能登かがり火」は存続し、1日5往復が運行されます。
北陸新幹線と特急列車の具体的なダイヤや運賃については未発表です。開業に向けて、鉄道・運輸機構は、9月23日から新幹線の車両などを使った試験走行を始めます。
系統分離
ここまでが、発表された運行計画の概要です。大きな特徴は、「サンダーバード」「しらさぎ」で接続する北陸新幹線列車を「つるぎ」に限定しているとみられることです。これは、北陸エリアを境に、首都圏方面と関西方面で「系統分離」していることを意味します。
首都圏方面の旅客を「かがやき」「はくたか」に、関西方面の旅客を「つるぎ」に乗せることで、北陸エリア内での座席利用を効率的する目的でしょう。また、運行障害が生じた際に、影響が広がりにくくする目的もありそうです。
関西~長野間はどうなる?
このとき気になるのが、関西~長野県の流動です。北陸新幹線敦賀延伸により、関西~長野間は敦賀経由が最速になるとみられますが、敦賀で接続するのが「つるぎ」ならば、さらに金沢や富山での乗り換えが必要になってしまいます。
実際には、敦賀で「つるぎ」と「かがやき」「はくたか」が続行する形になっていて、「サンダーバード」との接続をある程度取るのでしょう。
それでも、たとえば軽井沢に停車する敦賀発着の列車は1日5往復未満になっていて、便利とはいえません。関西との利便性が考慮されているのは長野駅までという印象も受けます。
関西から新潟方面へ向かう場合は、上越妙高で在来線特急「しらゆき」に乗り換えることになりますが、上越妙高に「かがやき」が停まらないので、敦賀から各駅停車の「はくたか」を利用しなければなりません。となると時間がかかりそうで、新潟方面へは、東京経由が今後も便利そうです。
「敦賀乗り換え」が定着
北陸新幹線の敦賀延伸により、福井県から首都圏へのアクセスは改善します。一方、大阪、名古屋方面へは乗り換えの手間が増えるだけで、アクセスが便利になるとはいえません。
金沢や富山からは、関西・東海方面への所要時間が短縮します。敦賀乗り換えの手間はかかりますが、時短効果もそれなりにあるので、石川県、富山県の利用者にはメリットが大きそうです。
京都・大阪方面へは、北陸新幹線の延伸計画が具体化しています。しかし、着工には至っておらず、完成時期は見通せません。大阪までの開業予定は2046年度とされていますが、これとて確定したものではありません。
名古屋方面への新幹線計画に至っては、ほとんど白紙です。北陸三県から中京圏への鉄道アクセスは、今後数十年にわたって「敦賀乗り換え」が定着することになります。(鎌倉淳)