八戸・室蘭フェリーが休止へ。「宮蘭航路」3年半で力尽く

トラック利用が伸び悩み

八戸と室蘭を結ぶフェリーが、2021年12月末を以て運航休止になりそうです。宮古と室蘭を結ぶフェリーとしてスタートした航路ですが、開設から3年半で両港から完全撤退の見通しとなりました。

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収支厳しく

シルバーフェリーを運航する川崎近海汽船は、青森県八戸港と北海道室蘭港を結ぶフェリーの運航を2021年12月末を以て休止する方針を明らかにしました。今後、地元自治体など関係者との協議を進めます。

八戸・室蘭航路の前身は、2018年6月に運航開始した岩手県宮古港と室蘭港を結ぶフェリーです。同航路は就航直後から利用が伸び悩み、同10月には南下便の八戸寄港を開始。2020年4月には宮古寄港を取り止め、八戸・室蘭航路となっていました。しかし、新型コロナウイルス感染症などの影響もあり、収支は依然として大変厳しい状況でした。

また、運航船「シルバークィーン」の老朽化も進み、船齢20年を超えているため更新が必要となったものの、採算状況から新造船投入も困難な状況です。こうしたことから、12月末での運航中止の判断に至ったとのことです。

宮蘭フェリー
画像:宮古市

特例変更で苦戦

前身となる「宮蘭航路」は、2015年3月に就航計画が発表されました。就航の背景として、厚生労働省の改善基準告示の「トラックのフェリー特例」がありました。これは、トラックがフェリーを利用する際の労働時間の取り扱いを定めたものです。

当時の通達では、運転手の乗船時間のうち2時間を労働時間とし、残りを休息時間とする扱いになっていました。1日に必要とされる休息時間は8時間のため、フェリーにトラックが連続10時間以上乗ればクリアできます。宮蘭航路は、片道の運航時間を10時間とし、基準にぴたり適用するように設計されました。

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ところが、この扱いが2015年9月1日に変更。トラックドライバーのフェリー乗船時間を全て休息時間とするようになりました。これにより、航海時間8時間の八苫航路が特例にぴたり適応する形になったのです。

宮蘭航路は八苫航路からのトラック客の遷移を期待していたのですが、この扱い変更により、就航直後から苦戦します。2020年1月には船舶使用燃料油のルール改正があり燃料コストが上がり、さらに新型コロナによる需要の減衰がとどめとなってしまいました。

個人旅行者には人気

宮蘭航路ができた際には、本州と北海道を結ぶ新たなルートとして、旅行者の期待も高まりました。実際、宮古寄港時代の旅客の利用状況は悪くなかったようで、個人旅行者には一定の人気がありました。しかし、肝心のトラックが集まらなければ、フェリーの存続は不可能です。

宮古寄港を取りやめたことで、室蘭港発着を維持する必要性も薄れてしまいました。その結果、3年半という短い期間で航路の幕を閉じることになり残念です。(鎌倉淳)

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