「GALA日帰りきっぷ」廃止10年でどう変わったか。最後のE2系で訪れてみた

輸送密度は右肩下がり

「GALA日帰りきっぷ」の販売が終了して10年が経ちました。便利でお得なきっぷの廃止と惜しまれましたが、10年でGALA湯沢スキー場はどう変わったのでしょうか。上越新幹線の最後のE2系に乗って行ってみました。

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2012年度に廃止

GALA湯沢スキー場は、言わずと知れた新幹線直結のスキー場です。東京駅から上越新幹線で最速74分という抜群のアクセスで、首都圏からの日帰りスキー場として親しまれてきました。

2000年代にGALA湯沢スキー場に通った経験があれば、「GALA日帰りきっぷ」をご記憶の方も多いでしょう。ガーラ湯沢駅までの往復乗車券・指定席特急券とリフト1日券、レンタル、スクールの割引券がセットになった企画きっぷです。

GALA湯沢スキー場

販売最終年度となった2011年度(11-12年シーズン)の場合、東京都区内からの価格はA期間(主に平日)が12,200円、B期間(おもに週末)が13,200円でした。出発当日に駅の券売機でも購入でき、すべての上越新幹線列車が利用可能という使い勝手のいいきっぷとして人気でした。

2012年度に廃止されましたが、便利なきっぷだっただけに、その販売終了を嘆く声は小さくありませんでした。

GALA日帰りきっぷ

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オンライン販売専用の時代に

販売終了となった明確な理由はわかりませんが、この頃のJR東日本は「お得すぎる企画きっぷ」の見直しを進めていて、その流れのなかでの廃止判断だったように思えます。

「GALA日帰りきっぷ」廃止後は、JR東日本の旅行会社「びゅうプラザ」が販売する「ワンデーGALA」をはじめとした旅行商品が代替の役割を果たしました。

当時は、店舗でしか購入できないなど不便でしたが、2015年度よりネット販売を開始。オンラインで前日18時まで購入可能となりました。駅の指定席券売機でのチケット受け取りも始まり、利便性が高まりました。

一方、「びゅうプラザ」の店舗は徐々に縮小。新型コロナを契機として2022年2月28日に全店舗で営業を終了しました。パッケージツアー(びゅう旅行商品)としての「ワンデーGALA」も2021年度で販売を終了し、2022年度(22-23年シーズン)は、ダイナミックパッケージに組み込んで、リフト券とセットで販売する形となりました。

「GALA日帰りきっぷ」廃止10年で、GALA湯沢スキー場と新幹線のセット券は、オンライン専用販売の時代になったわけです。

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「日帰りきっぷ」より安く

前置きが長くなりましたが、筆者も2023年3月上旬の平日、びゅうのダイナミックパッケージで「半日GALA」を購入して、GALA湯沢へ日帰りスキーに出かけてみました。

前日に予約・購入して、価格は9,500円でした。この2~3年は、びゅうトラベルの「日帰りGALA」の平日自由席プランを9,000円前後で利用していたので、半日指定席で9,500円なら、大きな値上げというほどではありません。2011年度の「GALA日帰りきっぷ」の平日価格12,200円に比べると、十分に安い水準です。

値段が高くなる週末でも、検索したところ「ワンデーGALA」を1万円台前半で購入できることが多く、10年前に比べて高くなった、というほどではなさそうです。後述しますが、リフト代は高騰しているので、それを勘案すれば低価格です。

チケットは東京駅の券売機で受け取ります。出てきたのは往復の新幹線きっぷ2枚のみ。クーポン類(リフト引換券)がないので不安を覚えますが、いまの「ワンデーGALA」(半日GALA含む)では、クーポンは電子化され発券されません。

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最後のE2系「たにがわ」

東京駅を9時52分に出る「たにがわ83号」に乗車します。車両はE2系。2023年3月18日ダイヤ改正で上越新幹線から引退しましたので、今回が最後の乗車となりました。

車内は空いていて、終点・ガーラ湯沢駅で降りたのは、ざっとみたところ、全車両で100人くらいでしょうか。平日午前中の遅い時間とはいえ、少し寂しい気もします。

お得なきっぷの廃止やコロナ禍を経て、GALA湯沢の客足は落ちてしまったのでしょうか。

たにがわE2系

リフト券は自動発券機で

改札口を抜けると、スキー場の有人カウンターがあります。

少し前まで、「GALA日帰りきっぷ」や「日帰りGALA」で到着したら、この有人カウンターに並んでリフト券の引き替えをしなければならなかったのですが、今はメールで送られてきたQR コードを自動発券機にかざせば、リフト券が出てきます。

GALA湯沢

そのためか、有人カウンターのスタッフは少なく、列もできていません。

ちなみに、GALA湯沢の1日券の正規価格は、現地購入で6,000円、WEB購入で5,600円です。レンタルセットも1日6,000円です。10年前の2013年シーズンの価格を調べてみると、リフト1日券が4,500円、レンタルが4,800円となっていました。

10年で3割程度の上昇率です。ただ、昨シーズンのリフト券は5,200円、レンタルは5,000円でしたので、実際は、今シーズンに2割程度、一気に上がっています。

ロッカーは、1,000円で1日使い放題のシステムに変化ありません。安っぽい券売機に現金を挿入し、ロッカー番号が印字された紙が出てくるのは「十年一日」のように同じでした。

GALA湯沢

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外国語が飛び交い

ゴンドラで山上に上がると、レストハウスでは、外国語が飛び交っています。中国語や韓国語が多いですが、欧米系も少なくありません。正確なところはわかりませんが、体感で3割くらいが外国人ではないか、という気がします。10年前から大きく変わった点があるとすれば、外国人率の高さでしょう。

コロナ禍の昨年や一昨年は、日本人率が高かったですが、入国規制の緩和を受けて、早くもインバウンド客が戻ってきているようです。

ちなみに、JR東日本は、外国人向けに「JR TOKYO PASS」という関東地方のフリーきっぷを発売していて、ガーラ湯沢もエリアに含まれます。価格は3日間10,180円です。このチケットの保有者は、GALA湯沢の1日券が平日4,800円で購入できます。

ゴンドラだけの利用で、ゲレンデのリフトに乗らないなら、2,000円で利用できます。東京観光のついでに雪に触れたいという外国人には、これで十分なようで、ゴンドラ降り場横の狭い雪遊びエリアが、やけに混雑していました。

GALA湯沢スキー場外国人パス

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ヘルメット装着率は低く

ゲレンデでは、「コース外滑走禁止」の放送がひっきりなしに流れます。以前のGALA湯沢では、こうした放送がここまで頻繁には流れていなかった気がします。最近はGALAでもコース外に滑り出す人が増えたのでしょうか。

平日でもリフトはフル稼働していて、リフト待ちはほとんどなく快適です。それでもコースはそれなりに混雑しており、幅の狭い初級者コースでは、若いスノーボーダーがあちこちでよろよろしています。

気になるのは、初級者コースでよろめいている若者のほとんどが、ヘルメットをしていないことです。先日、悲惨な事故が起きたばかりですが、それが影響している様子はなさそうです。

スキー・スノボでのヘルメット装着率は10年前よりは高まったようですが、まだまだ低いという印象は否めません。

そろそろ、スキー場のレンタルセットに、もれなくヘルメットを含める時期に来ている気がします。混雑の激しいGALA湯沢スキー場こそが、先鞭を付けてほしいところです。

GALA湯沢スキー場

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自由席に大行列

夕方まで滑り、帰りは17時08分発の「たにがわ86号」です。指定席は満席。駅の改札口には「自由席」と「指定席」のレーンがあり、自由席には大行列ができていました。

GALA湯沢

発車時刻15分前に改札が始まります。行列がどんどん改札内に吸い込まれていきます。

筆者は指定席だったので、ゆっくりホームに降りて自由席をのぞいてみると、空席はちらほら残っているものの、かなりの乗車率で、デッキに立っている人もいます。以前の平日のガーラで、帰路の列車はここまで混雑しなかったように思います。

混雑する理由として考えられるのは、列車本数の減少です。今シーズンの平日の運行本数は1日8往復。夕方の列車本数をみると、14時台から19時台にかけて毎時1本が運行されるだけなので、帰路の有効本数は5本です。

ガーラ湯沢駅時刻表

これに対し、2013年3月の平日の同じ時間帯の運行本数は7本ありました。ピーク時となる17時台には2本あり、うち1本は越後湯沢で増結するE4系16連でした。輸送力は、10年前より低下しているわけで、混雑はその影響かもしれません。

ただ、これで運び切れていないわけでもなく、行列はきれいに車内に収まり、自由席にも多少の空席は残っています。JRとしては、現在の輸送力で十分と考えているのでしょう。

GALA湯沢駅

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輸送密度は右肩下がり

実際、越後湯沢~ガーラ湯沢間(ガーラ支線)の輸送密度を調べてみると、この10年間で右肩下がりです。

直近ピークは2013年度の1,091で、それからほぼ一貫して減少してきました。新型コロナ禍前の2018年度は753と、ピークから3割も減っています。

「GALA日帰りきっぷ」廃止の影響が出ていたのか、とも勘ぐってしまいます。

スキー場利用者数は横ばい

ただ、毎年のようにGALA湯沢に滑りに来ている身としては、「コロナ前に3割も減っていたかな?」という肌感覚での疑問もあります。

そこで、GALA湯沢スキー場の利用者数の推移を調べてみると、2013年度は32万人、2018年度も33万人で、ほとんど変わっていません。

新幹線の輸送密度は減っていたのに、スキー場の利用者は減っていなかったのです。

GALA湯沢スキー場利用者の多くは、新幹線を利用しています。バスやマイカー利用者もいますが、湯沢地区で最も混雑するゲレンデに、新幹線以外でわざわざ来る客は少数です。

そうした特性を考えると、輸送密度とスキー場利用者数の動きが3割も違うのは、不思議な話です。

GALA湯沢の輸送密度と利用者数

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輸送密度に反映されていない?

その理由は定かではありませんが、外国人向けのフリーきっぷを利用した乗車人員が、輸送密度に十分に反映されていないのではないか、と推測します。

わかりやすくするために乱暴に書くと、日本人利用者が減り、フリーきっぷを使った外国人利用者が増えたのではないか、ということです。フリーきっぷ利用者が輸送密度に正確に反映されない場合、フリーきっぷ客の比率が高まると、スキー場利用者数は変わらないのに、統計上の輸送密度は低下してしまいます。

2020年度を底としたコロナ禍では、輸送密度よりスキー場利用者数の落ち込みが激しかったですが、フリーパス利用の外国人観光客が急激に落ち込んだと考えれば、輸送密度の変化が相対的に小さかったことも腑に落ちます。

この推測が当たっているかはわかりません。ちなみに、湯沢町の観光統計速報によると、2022年度(今シーズン)のGALA湯沢の利用者数は、昨シーズンより2割程度増えています。このペースでいけば年間25万人程度の利用者数になりますが、輸送密度がどういう数字になるのかは、注目です。

GALA湯沢スキー場

時代のターニングポイント

振り返ると、2012年度の「GALA日帰りきっぷ」廃止は、ひとつの時代のターニングポイントを象徴していたのかもしれません。

この10年で紙のきっぷは縮小し、デジタル化、非接触化が進みました。日本人のスキー・スノボ人口は減る一方、インバウンド客は増えていきました。こうした2010年代の動きのなかで、「GALA日帰りきっぷ」は役割を終えたのでしょう。

GALA湯沢スキー場は、いまも首都圏から訪れやすいゲレンデであることに変わりなく、多くのスキーヤー、スノーボーダーで賑わっています。これからの10年も、利用者の安全に配慮された、使いやすいスキー場であり続けて欲しいところです。(鎌倉淳)

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