エイトライナー、メトロセブンはいつ開業できる? 「環八、環七地下鉄」の大構想

次期答申を見据え

エイトライナー、メトロセブンは、「環八」「環七」に沿って走る鉄道新線計画です。計画自体は古くからありますが、実現の見通しはあるのでしょうか。

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区部周辺部環状交通」

エイトライナーとメトロセブンは、東京都心から約10km圏を走る環状鉄道計画です。エイトライナーが「環状8号」、メトロセブンが「環状7号」という道路に沿って走り、両線は赤羽で接続します。導入空間の道路が異なるため「エイト」と「セブン」と名称が分かれていますが、現在は「区部周辺部環状交通」として、一体的に調査が進められています。

詳細ルートは決まっていませんが、過去の調査でのエイトライナーのルート案は、田園調布(東急東横線)から二子玉川(東急田園都市線)、千歳船橋西(小田急線)、八幡山(京王線)、高井戸(京王井の頭線)、荻窪(JR中央線)、井荻(西武新宿線)、練馬高野台(西武池袋線)、練馬春日町(都営大江戸線)、平和台(メトロ有楽町線)、東武練馬東(東武東上線)、志村三丁目(都営三田線)を経て、赤羽(JR東北線)に至ります。

メトロセブンは、赤羽から江北陸橋(日暮里舎人ライナー)、西新井(東武伊勢崎線)、六町(つくばエクスプレス)、北綾瀬(メトロ千代田線)、亀有(JR常磐線)、青砥(京成本線)、東新小岩(JR総武線)、一之江(都営新宿線)、葛西(メトロ東西線)を経て葛西臨海公園(JR京葉線)に至ります。

ルートには未決定の部分が含まれますが、両路線をあわせると、約60kmに達する長大路線となります。

エイトライナー・メトロセブン路線図
画像:エイトライナー促進協議会資料
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総事業費1兆円規模

エイトライナー・メトロセブンは、2016年に公表された交通政策審議会答申198号で「中量軌道等の導入や整備効果の高い区間の優先整備など整備方策について、検討が行われることを期待」と記されました。これを受け、沿線自治体では小型地下鉄のほか、新交通システム、モノレール、LRT、BRTといった中量軌道システムの導入について調査を進めています。

これまでの調査報告によれば、総事業費は、地下鉄系が9,000億円から1兆5,000億円程度、中量軌道系は、高架系(モノレール、新交通システム)は1兆5,000億から1兆9,000億円、地上系(LRT、BRT)は1200億~3000億円となっています。

エイトライナー、メトロセブン事業費
画像:エイトライナー促進協議会資料
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スマート・リニアメトロ

地下鉄系でもっとも安いのが「スマート・リニアメトロ」です。シールド断面や駅スペースを小型化することにより、従来の地下鉄と比較して建設費の縮減等が期待できる新たな交通システムです。総事業費は9,000億円程度と見積もられていて、通常の地下鉄の1兆5,000億円より4割も安いです。

その理由として、スマート・リニアメトロは急曲線を曲がれるので、広い道路なら用地買収をせずに線路を敷設できること。また、急勾配にも強いので、地下の埋設物を回避したり、駅のみ浅い位置に作るといった芸当が可能であることなどが挙げられます。

ただ、スマート・リニアメトロは、まだ実用化されていないシステムです。沖縄などで導入計画がありますが、単独で導入するとなると、車両費用などで量産効果が得られにくいなど、デメリットもあります。

エイトライナー、メトロセブンスマートリニア
画像:エイトライナー促進協議会資料
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地平化、高架構造も検討

導入システム以外の費用削減策も示されています。たとえば、駅構造を単純化し、島式ホームから直接地上に上がる形状にすることで、コンコース階を省略するといった案です。

一部区間では、地平化や高架構造も検討します。環八の高井戸~砧公園間や、環七の一之江~葛西臨海公園間などは、道路幅が広いため「高架・地平構造の可能性のある区間」とされています。一部区間の地平化を実施すれば、事業費を8,132億円まで縮減できるという試算も出ています。

エイトライナーメトロセブン
画像:エイトライナー促進協議会資料
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現実には2兆円規模に?

ただ、これらの試算は、2012年度の調査で地下鉄建設費を計算し、そこから「いくら削減できるか」という考え方で概算事業費を算出しています。

2012年当時の調査は、それ以前、つまり2000年代の地下鉄建設費を元に概算していますので、キロ当たり単価が200億円程度です。しかし、近年の地下鉄の建設費は290億円から450億円となっていて、南北線の品川延伸などでは500億円を超えています。

場所の違いがあるにせよ、エイトライナー・メトロセブンの試算では、キロ当たり単価が近年の地下鉄の建設相場の半額程度で見積もられているわけです。したがって、いまから全線を地下鉄で整備するとなると、どんなに費用を節減しても2兆円規模になりそうです。

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非地下鉄の試算

モノレール、新交通システム、LRT、BRTといった、非地下鉄の試算は近年の相場に基づいています。高架系(モノレール、新交通システム)の概算事業費が1.5兆円から1.9兆円、地上系(LRT、BRT)は1,200億円から3,000億円と算出されています。

高架系の概算費用が地下鉄より高いですが、最近の試算ですので、より現実の価格を反映しているにすぎません。

高架系、地上系とも、道路拡幅などを必要とするため、用地取得費が高額になります。環八・環七沿いには高層マンションが多いので、道路拡幅を行うとなれば相当な費用と期間が必要となるでしょう。

LRTやBRTは低額ですが、道路の車線を占有するとなると、道路混雑の問題があり簡単ではありません。

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同一のシステムが適切なのか

エイトライナー、メトロセブンは約60kmにおよぶ長大路線のため、沿線の特性が区間によりだいぶ異なります。そのため、すべてを同一のシステムとして導入することが適切なのか、という疑問もあります。

たとえば、LRTやBRTは、交通量が多く混雑する二子玉川~荻窪間などには適さないでしょうが、道路幅が広く、比較的交通量の少ない葛西~葛西臨海公園間などでは可能かもしれません。

あるいは、外環道の東名延伸が実現すれば、環八にも余裕ができ、二子玉川~荻窪間で地上系のシステムを入れる余地が生まれるかもしれません。そうしたさまざまな論点を整理する必要があります。

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次期答申を見据え

エイトライナー協議会では、今後も調査を進め、近いうちに区間別・システム別に需要予測や収支採算性を取りまとめます。それを踏まえて、数年以内に「あり方」を整理する方針です。

見据えているのは、交通政策審議会の次期答申です。

現答申の目標期限が2030年なので、2028年頃には次期答申への審議が始まる見通しです。東京圏で鉄道新線を着工するには、交通政策審議会答申に盛り込まれることが事実上の要件になっていますので、ここでいかに前向きな表現を勝ち取るかが一つのポイントになるでしょう。

見方を変えれば、エイトライナー、メトロセブンが2030年までに事業着手する見通しはありません。実現するとしても、2030年以降の話で、どんなに順調にいっても、開業は2040年代でしょう。その場合も、全線での事業着手は期待薄で、比較的高い需要の見積もられる区間から手を付ける、という形になりそうです。

もちろん、全区間で事業着手できない可能性も、低いとはいえません。(鎌倉淳)

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