クレジットカードの海外旅行保険で「治療費用」が充実しているのは? JAL、ANAカードは全然ダメ

海外旅行に出かけるときに必要なのが海外旅行保険。最近はクレジットカード付帯のものを使う人が増えています。でも、よく調べると、補償内容は意外と手薄。「死亡・後遺障害」の金額が大きくても、「治療費用」が安い場合が少なくありません。

いうまでもありませんが、海外旅行保険でもっとも大事なのは「治療費用」で、次いで「救援者費用」です。AIUによると、保険金支払い件数の約73%が「治療・救援費用」だそうです。海外では日本の健康保険が使えませんし、お金がなければ十分な治療が受けられない、という場合もあります。したがって、万一に備えて潤沢な治療費と救援者費を準備しておくことは大事です。

では、クレジットカードの海外旅行保険で、「治療費用」「救援者費用」が充実しているカードはどれなのでしょうか? 調べてみました。

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治療費用はいくら必要?

最初に、海外で病気や怪我をした場合に、いくらの保障があれば十分なのでしょうか。たとえばイタリアで腹膜炎にかかった28歳女性は、治療費に71万円、救援者費用が180万円かかったそうです(AIUの事例)。脳梗塞なら1,000万円近い治療費がかかることもあります。

訪問国にもよるので一概にはいえませんが、最低100万円、万全の保障を求めるなら1,000万円くらいは必要のようです。実際、市販の海外旅行保険のパックでは、安いプランでも「治療費1,000万円」「救援者1,000万円」がデフォルトです。

JAL、ANAの一般カードは「治療費保障なし」

まず、旅好きの多くが所持しているJALカードやANAカードをみてみましょう。驚くことに、「JALカードVISA」や「ANAカードJCB」といった一般カード(年会費2,000円)では、治療費用は補償されません。ゼロ円です。

JAL、ANAの一般カードで治療費用の補償があるのは、「アメリカン・エキスプレス・カード」だけですが、アメックスは「一般カード」でも年会費6,000円ですから、お安くはありません。その「JALアメックス」「ANAアメックス」ですら、治療費用、救援者費用は各100万円にすぎません。

最近人気がある東京メトロ提携の「ソラチカカード」(年会費2,000円)も、ANA一般カードの一種ですから、海外旅行で治療費用補償はありません。ソラチカカードのウェブサイトをいくら見ても、このことは書いておらず、「海外旅行損害保険:最高1,000万円」とあるだけです。気をつけましょう。

JAL、ANAのゴールドカードは?

JALカードやANAカードのゴールドカードではどうでしょうか。JALの「CLUB-Aゴールドカード」(年会費16,000円)とANAの「ワイドゴールドカード」(年会費14,000円)のいずれも、VISA/MasterとJCBで補償額が異なります。

JALゴールドのVISA/Masterでは治療費用150万円、救援者費用150万円、ANAゴールドのVISA/Masterでは治療費用150万円、救援者費用100万円となっています。JCBはJALゴールドもANAゴールドも治療費用300万円、救援者費用400万円です。

JCBゴールドの「治療費用300万円、救援者費用400万円」は他と比較しても高い保険内容ですが、VISAやMasterゴールドの「治療費用150万円」は、ゴールドカードとしては低いです。航空会社のゴールドカードだから海外旅行保険も充実しているだろう、とお考えの方は、気をつけましょう。

さらなる上のプラチナはどうでしょうか。「JAL・JCBカード」のプラチナ(年会費31,000円)では、治療費用・救援者費用とも1000万円で、十分な保障内容と言えます。しかし、同じプラチナでも、「JAL アメリカン・エキスプレス・カード」ではいずれも200万円です。JAL・JCBのプラチナは値段相応の万全な保障と言えるでしょうが、アメックスは残念です。

JALカード

オリジナルブランドは?

では、基準となるオリジナルブランドのカードはどうでしょうか。三井住友VISAカードの場合、一般カードにあたる「クラシックカードA」(年会費1,500円)は、自動付帯で治療費用100万円、救援者費用150万円です。ゴールドカード(年会費10,000円)の場合、治療費用300万円、救援者費用500万円と充実します。

三井住友VISAカードのゴールドの場合、年会費は10,000円しますが、リボ払いを選択して年1回使うという条件で、年会費は5,000円になります。利用金額の制限はありませんので、上手に使えば、海外旅行に年に複数回行く人なら、海外旅行保険だけで元が取れそうです。

JCBオリジナルの場合、一般カード(年会費1,250円)で治療費用100万円、救援者費用100万円です。ゴールドカード(年会費10,000円)は、治療費用300万円、救援者費用400万円です。JCBの場合、ゴールドカードはブランド提携先に関わらず同じ補償内容のようです。

外資系を見てみると

外資系の航空会社を見てみましょう。デルタスカイマイルJCBカードでは、「テイクオフカード」(年会費1,500円)は治療費用、救援者費用とも50万円。一般カード(10,000円)はともに200万円、ゴールドカード(18,000円)は300万円/400万円です。

一般カード水準では、JAL、ANAより少し補償内容が高くなっています。

JR系カードは意外に充実

旅好きで利用している人が多いカードとして、JR系のカードも見てみましょう。まずは、JR東日本のビュー・カード。国内鉄道会社のカードだから、海外旅行保険は充実していないかと思いきや、一般的な「ビュー・スイカ」(年会費477円)で、自動付帯の治療費用として50万円の補償があります。

JR東海の「エクスプレスカード」(年会費1,000円)の場合は、自動付帯の治療費用として200万円、救援者費用も200万円です。年会費1,000円で200万円の補償は高水準です。一方、JR西日本の「J-WESTカード」では、海外旅行保険は利用付帯ですので、支払をしないと補償はありません。

全体的には、JAL、ANAの一般カードよりも、JRの一般カードのほうが、海外旅行保険の治療補償に関しては充実しているといえそうです。

旅行会社のクレジットカードは?

旅行会社のクレジットカードもみてみましょう。HISのSkywalkerカード(年会費1,000円)は、治療費用・救援者費用が各200万円と比較的高水準。ゴールドカード(年会費10,000円)でも同じ内容ですので、ゴールドのありがたみはなさそうです。

JTBカードは、提携先のオリジナルカードと条件が同じです。JTB三井住友カード(年会費1,500円)は、自動付帯で治療費用100万円、救援者費用150万円です。ゴールドカード(年会費10,000円)の場合、治療費用300万円、救援者費用500万円です。

相場はネット保険の10分の1の補償?

一つ一つのカードを取り上げ始めるときりがないので、このへんでまとめてみましょう。年会費1,000円台の一般カードの場合で、治療・救援者費用各100万円が相場、年会費1万円程度のゴールドカードの場合で、治療・救援者費用各300万円が相場のようです。

ちなみに、ネット保険での治療・救援者費用の補償額は、最安値パックでも1,000万円です。一例を挙げると、7日間のアメリカ旅行をする場合の海外旅行保険料は、損保ジャパン日本興亜の場合、ネットで検索できる最低パック価格が2,930円で、1,000万円の治療費用と救援者費用が保険内容に含まれています。

そう考えると、補償金額100万円が一般的なカード付帯保険は、ネット保険の10分の1の補償内容が相場、といえます。

ムダなのか、手薄なのか?

ネットのパック海外旅行保険がムダに高いのか、クレジットカード付帯保険の補償内容が心細いのか。どう判断するかは、意見が分かれるところでしょう。

最近は、カード保険の手薄な部分だけ保険を掛ける、という方法もあります。たとえば、治療費用だけ1000万円の補償になるよう保険をプラスする、というものです。場所にもよりますが、1週間で1,000円ちょっとで足せますので、そういう方法も選択肢になりそうです。

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