中央道の渋滞はどこまで緩和するか。三鷹バス停、小仏トンネルを3車線化

全面解消は望めません

中央道の上り線で3車線化が進められています。すでに工事が進められている小仏トンネル増設に加え、三鷹バス停付近でも3車線化が決定しました。渋滞は緩和するのでしょうか。

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全国有数の渋滞区間

中央自動車道の東京都~神奈川県区間は、主に片側2車線で、全国でも有数の渋滞区間として知られています。

とくに、調布付近は年間を通して、上下線とも深刻な渋滞が発生。小仏トンネル付近、相模湖付近は、首都圏からの観光客が多く利用するため、特に観光シーズンの休日を中心に深刻な渋滞が発生しています。

また、下り線では相模湖付近の渋滞が八王子JCTまで達していることで、八王子JCT付近での渋滞が悪化しています。

こうしたことから、国土交通省では、2013年から中央道渋滞ボトルネック検討ワーキンググループを開催し、渋滞状況の分析と、対策を検討してきました。その内容を基に、中央道の渋滞対策についてみていきましょう。

小仏トンネル渋滞
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第1回資料

中央道渋滞の現状

まずは、中央道の渋滞の現状を見てみます。下図は平日上り線の渋滞を分析したものです。

中央道平日上り線渋滞分析
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料

6時~10時に国立府中IC~高井戸IC間で深刻な渋滞が起きているのがわかります。また午後には上野原IC~小仏トンネル付近でも速度低下がみられます。

次に、観光シーズン(7~10月)の休日上り線です。

中央道休日上り線渋滞分析
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料

大月IC~小仏トンネルにかけて、14時~23時に深刻な速度低下が発生し、大渋滞となっていることがわかります。八王子IC~高井戸ICにかけても断続的に渋滞が発生し、15時~18時の調布付近が深刻であることがわかります。

小仏トンネル増設

こうした状況を受け、NEXCO中日本では、小仏トンネルに新たなトンネルを掘って付加車線とし、八王子JCT付近まで約5kmを3車線化する事業を進めています。これにより、相模湖東出口付近~八王子JCT付近が片側3車線になります。事業にはすでに着手しています。

小仏トンネル3車線化
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料

また、小仏トンネル内では、スピーカーを用いた音声案内を2019年に開始しています。

混雑時には「速度が低下しています。渋滞防止のため、速やかに速度回復願います」、渋滞時には「渋滞の先頭は抜けました。速やかに速度回復願います」といった、速度回復を促す音声を流しています。

これにより、渋滞発生時交通量が6%増加し、渋滞中に捌ける交通量が4%増加したそうです。わずかですが、渋滞緩和に効果があったとしています。

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調布の3車線化の効果は?

調布付近においては、2015年12月に、上り線調布IC~三鷹バス停間に付加車線を設置し、片側3車線化しました。

これにより、三鷹バス停付近、深大寺バス停付近を先頭とする平日の渋滞発生回数が約4割減少しました。国立府中IC~深大寺バス停の混雑区間における平日の混雑時間帯の所要時間は24分から18分となり、3割短縮しています。八王子方面から来て、調布ICで降りるドライバーには大きな効果があったといえます。

ただ、3車線化は部分的なので、抜本的な改善には至っていません。渋滞の先頭が東京都心方面にシフトしただけで、三鷹バス停付近を先頭とする深刻な渋滞が残っています。

調布3車線化の効果
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料

三鷹バス停付近まで3車線化

現状の三鷹バス停付近の渋滞の原因は明快で、3車線が2車線になることにより速度低下が発生しています。くわえて、三鷹バス停付近でカーブがあり、速度低下が起こっています。さらに、その先にはサグ(勾配の谷)があり、下り坂が上り坂になることで速度低下が発生しています。

三鷹付近渋滞分析
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料

そのため、NEXCO中日本では、三鷹バス停(三鷹本線料金所)付近において、線形改良を行うとともに、約1kmにわたり付加車線を延伸します。3車線区間が三鷹バス停の先まで伸びることになります。

三鷹バス停付近3車線化
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料

といっても、車道の広さ自体は変わらないようで、路肩と中央帯を削り車道幅も狭くして、車線を増やす形になります。

また、線形改良のため、料金所の運用見直しや、下りバス停の移設なども実施します。この事業は2020年度から開始します。

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下り線の渋滞状況

次に、下り線の渋滞状況を見てみます。最初は平日下りです。

中央道渋滞分析平日下り
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料

全体に渋滞は少なく、三鷹バス停付近と八王子IC付近で多少の速度低下がみられる程度です。

ところが、休日は一変します。観光シーズン(7~10月)の休日下り線を見てみます。

中央道渋滞分析休日下り
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料

7時~14時に、相模湖付近を先頭に速度低下が発生しており、断続的に高井戸ICまで渋滞がつながっているのがわかります。この渋滞は、2014年の圏央道の相模原愛川~高尾山IC開通により、以前より激しくなっていることも、別の調査でわかっています。

とくに、三鷹バス停付近、国立府中IC付近、八王子JCT付近で渋滞がひどくなっています。

NEXCO中日本では対策として、渋滞の先頭となる相模湖付近について付加車線の設置工事を進めています。相模湖バス停付近~相模湖出口にかけて、約2kmが3車線化されます。

相模湖付近3車線化
画像:中央道渋滞ボトルネック検討WG第8回資料
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効果があるのか?

以上が、中央道の渋滞の分析と、現在行われている対策です。正直な感想をいうと、上りの小仏トンネル増設は効果がありそうですが、上り三鷹バス停付近の3車線化は、ここだけ車線増やしたところで、渋滞の先頭が動くだけでは? という気もします。

ただ、三鷹バス停の東約1kmには、建設中の外環道と接続する中央JCT(仮称)ができる予定です。そのため、将来的には3車線区間は中央ジャンクションまで達するとみられ、調布IC~中央JCT間が3車線化されることになりそうです。そうなれば、上り調布付近の深刻な渋滞が、多少は緩和されるかもしれません。

一方で、中央JCTができれば、下りは高井戸~中央JCTで渋滞が深刻になりそうです。

下りの相模湖付近の車線増設は、この区間の渋滞解消には役立ちそうですが、渋滞の先頭が小仏トンネルに移るだけのような気もします。

結局のところ、中央道は片側2車線区間が多く残っているのが課題です。上野原~談合坂の3車線化など、以前に比べて改善した面もあるものの、東名高速、関越道、東北道、常磐道といった他の首都圏の高速道路に比べると、車線数で見劣りがします。

できることなら高井戸~大月間を全面的に片側3車線化してほしいところですが、いまさら難しい、ということなのでしょう。(鎌倉淳)

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