JR東日本が、吾妻線長野原草津口~大前間について、総合的な交通体系に関する議論を沿線自治体に申し入れました。今後、鉄道路線そのものの「あり方」にかかわる議論になりそうです。
輸送密度263
JR東日本は、群馬県、長野原町、嬬恋村の3自治体に対し、吾妻線長野原草津口~大前間13.3kmについて、「沿線地域の総合的な交通体系に関する議論」を申し入れたと発表しました。
吾妻線は渋川~大前間55.3kmを結ぶ路線。渋川~長野原草津口間は上野直通の特急列車も走る観光路線ですが、長野原草津口~大前間は普通列車が1日10.5往復走るのみ。とくに最末端の万座・鹿沢口~大前間は1日4.5往復だけとなっています。
2022年度の輸送密度は、渋川~長野原草津口間の2,461に対し、長野原草津口~大前間は263。年間4億6300万円の赤字を計上し、営業係数は2,759と厳しい状況です。
1971開業、利用は低迷
吾妻線が大前まで開通したのは1971年。終点の一つ手前の万座・鹿沢口は鹿沢温泉方面の玄関口として整備され、特急や急行が乗り入れました。鹿沢温泉方面へのバス路線も発着し、観光拠点としての機能を果たしました。
しかし、1987年度の段階でも輸送密度は791にとどまっていて、利用が低迷していました。2007年には鹿沢方面へのバス路線が廃止。2016年には、特急「草津」も長野原草津口で打ち切りとなり、長野原草津口~大前間は完全なローカル区間となっています。
任意協議会を想定
JR東日本は、吾妻線長野原草津口~大前間の現状を「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていない状況」と分析したうえで、地域住民の役に立つ交通モードが鉄道でいいのか「存続や廃止という前提を置かない議論が必要」としています。
「総合的な交通体系」とは、鉄道、バス、タクシーを含めた交通体系を意味します。前提を置かずに議論するということは、鉄道のバス転換も含めた議論であることを示しています。いわゆる「あり方」協議です。
JRによると、今回の申し入れは任意協議会を想定しており、再構築協議会などの法定協議ではないようです。ただ、輸送密度200人台は再構築協議会開催の要件を満たしうる数字であり、存廃にかかわる議論に進む可能性もありそうです。(鎌倉淳)