ホノルル高架鉄道「スカイライン」は、ダウンタウン方面への延伸工事が進んでいます。その先、アラモアナへの延伸も設計が始まり、ワイキキへの延伸構想もあります。将来需要を見込んで余裕をもって作られた鉄道は、どこまで発展していくのでしょうか。(前編から続く)
【前編はこちら】
ホノルル高架鉄道、輸送密度1330からの挑戦。「ハワイのTX」の現在地
当初はアラモアナまで
スカイラインは当初、イーストカポレイから空港、ダウンタウンを経てアラモアナまで約32km、21駅を整備する計画でした。
2011年に着工しましたが、工事の遅れや事業費の膨張により、建設主体のホノルル高速交通公社(HART)は2022年に計画を見直しました。

当面の建設範囲をダウンタウンのシビックセンターまでの約30km、19駅とし、その先のカカアコ、アラモアナの2駅、約2kmの建設を先送りしました。
その結果、西側から段階的に開業し、現在はカリヒ・トランジットセンターまで約25.7km、13駅が営業しています。下図の青い線より左側が開業したわけです。

道路上を高架でダウンタウンへ
現在建設中となっているのが、カリヒ・トランジットセンター~シビックセンター間の約4.8kmです。6駅を新設し、チャイナタウン、ダウンタウンを貫いて進みます。
市街地では、広い幹線道路の空間を利用して高架橋を建設していきます。建設にあたり、道路地下の上下水道、電気、通信施設などを移設する必要があり、難航しているようですが、いずれ開業するのは間違いなさそうです。
シビックセンター開業予定は2031年で、2032年へずれ込む可能性も指摘されています。

シビックセンター延伸で8.4万人?
シビックセンターまで開業すれば、西オアフの住宅地とホノルル中心部が鉄道一本で結ばれます。
筆者が乗車した際には、カリヒでスカイラインを降り、路線バスに乗り換えてダウンタウンまで移動しました。この乗り換えが不要になります。
前編で触れたように、現状の利用者数は1日平均10,500人程度ですが、これでもカリヒ延伸前より3倍以上に増えました。次のシビックセンター延伸では、沿線住民が通勤・通学で利用しやすくなるため、さらに大幅な利用増が期待できます。
HARTが2022年に公表した「リカバリー・プラン」では、シビックセンターまで開業した場合、平日約84,000人の利用を予測しています。鉄道をシビックセンターまで延伸し、アラモアナ、ワイキキ、ハワイ大学方面への高頻度バスと組み合わせる計画です。

アラモアナ駅はセンター山側
シビックセンターまで伸びても、アラモアナやワイキキまで届くわけではありません。ダウンタウンで高頻度バスに乗り換えられる形になるようですが、空港からワイキキへ向かうリゾート客にとっては、まだ中途半端です。
旅行者としては、シビックセンター止まりではなく、計画が決定しているアラモアナへの延伸を実現してほしいところでしょう。
アラモアナ延伸が実現した場合、終点のアラモアナ駅は、アラモアナセンターの山側、コナ・ストリート付近に設置する計画です。路線バスとの乗り継ぎを重視した位置で、ワイキキやハワイ大学方面へのバス接続が想定されています。
ただし、日本人旅行者の利用者が多いワイキキトロリーの停留所はアラモアナセンターの海側です。鉄道駅とはセンターを挟んで反対側になるため、停留所が変わらないなら、乗り継ぎには使いにくそうです。
それでも、空港からアラモアナまで鉄道一本になれば、旅行者にとっても利用価値は高まります。アラモアナ駅で路線バスに乗り継げば、ワイキキにもアクセスしやすくなるでしょう。

(2021)
アラモアナ延伸の見通し
アラモアナ延伸は決定している計画ですが、未着手です。
しかし、HARTは2025年、シビックセンター~アラモアナ間約2kmの設計に約5,300万ドル(約85億円)を投じることを決めました。85億円は半端な金額ではなく、本気で作る意思が感じられる予算です。
とはいえ、建設費は約16億ドル(約2,560億円)と見込まれていて、設計費の約30倍です。建設資金はまだ確保されておらず、開業見通しは立っていません。
ワイキキ延伸は?
旅行者としては、アラモアナ止まりではなく、さらにワイキキまで鉄道で行ければ便利です。
アラモアナから先、ワイキキやハワイ大学マノア校方面への延伸は、以前から将来構想として検討されてきました。
2026年には、スカイライン将来の延伸について、HART理事会の一部委員が検討した報告書が公表され、アラモアナからワイキキエリア西端のフォート・デ・ルッシー付近まで約1.9kmを建設する場合、概算で約11億ドル(約1,750億円)の費用がかかると試算されました。地下鉄なら約23億ドル(約3,700億円)と、倍増します。

ワイキキ中心部を抜け、ハワイ大学マノア校まで地下鉄を延ばす計画も紹介されました。
これができると観光客には非常に便利そうですが、事業費は88億ドル(1兆4,000億円)と途方もない金額になります。また、これは一部委員の検討にすぎず、公式な延伸計画ではありません。

アラモアナまでの延伸が実現すれば、ワイキキ方面も改めて俎上に上るでしょう。ただ、試算で示された事業費は巨額で、実現へのハードルは高そうです。
そもそも、アラモアナ延伸自体が着工に至っていないため、ワイキキ延伸について事業化や開業時期を語れる段階にはありません。
経営状況厳しく
スカイラインの需要予測は、計画の見直しに伴って変化してきました。当初、アラモアナ全通時に1日11万~12万人規模を見込んでいましたが、2022年に公表された「リカバリー・プラン」で、シビックセンターまでの暫定全通時で平日約84,000人とされました。
これに対し、2026年7月の平日平均は約11,700人です。部分開業とはいえ、現状では需要予測に全く届いていません。
経営状況も厳しく、カリヒ延伸後の2026年度に、ホノルル市はスカイラインの年間運営費として約1億2070万ドル(約193億円)を計上しています。この金額に何が含まれているのかまではわかりませんが、路線維持のための公費負担が年間190億円前後に達している可能性があります。
鉄道利用が根付くまで
ただ、ハワイは自動車交通が主体の地域であり、都市鉄道の敷設は初めてです。新しい公共交通が地域に定着するには、時間がかかるものです。
本邦の例でいえば、沖縄のゆいレールも開業後、需要予測を下回る時期がありましたが、その後は利用者が増え、2両編成だった車両を3両編成にする事業を進めています。
つくばエクスプレスも、開業当初は駅前に何もない駅も目立ちましたが、街ができるにつれて利用者が増え、6両編成を8両編成にする事業を進めています。
スカイラインの当初計画では、2両編成で運行を始め、需要に応じて3両、4両へ増結する計画でした。しかし、技術面・運用面で複雑になることから、4両固定編成に変更しました。
つまり、沿線の成長を先取りした車両編成になっているわけで、当初は輸送力が過剰にならざるを得ず、赤字も膨らみやすい構造になっています。現状のガラガラの状況や、財政負担は、ある程度は想定内だったともいえます。
輸送密度35,000人も?
仮に、シビックセンター延伸後に、需要予測通り平日利用者が1日84,000人にまで増え、平均乗車距離も路線延長に応じて伸びると仮定すると、平日の輸送密度は約35,000人になります。現在の推定輸送密度は4,500人程度ですので、7.7倍にしなければなりません。
比較すると、JR仙石線のあおば通~東塩釜間の輸送密度が40,739人(2024年度)、ゆいレールが16,521人(2023年度)です。ホノルルの都市圏人口は100万人前後で、仙台より少なく、那覇より多いです。
そのため、35,000人はやや厳しい数字にもみえますが、ダウンタウンへ直通し、その便利さが地域住民に広まれば、実現は可能でしょう。
利用者が増えれば、ラッシュ時には増発が必要になるかも知れません。スカイラインは完全無人運転なので、運転士を増やさずに増発できるのは強みです。
筆者が乗ったガラガラの列車が、混雑対策を迫られるようになれば、いまは輸送力過剰に見える車両や車両基地などの余裕が生きてきます。そうなると、ワイキキへの延伸も視野に入るかも知れません。そんな未来も期待したいところです。(鎌倉淳)





















