ハワイ・ホノルルの高架鉄道「スカイライン」に乗ってみました。日立製の大型車両は広く快適ですが、車内は閑散。終点近くの車窓には農地や未利用地が広がり、かつてのつくばエクスプレス(TX)のようです。開業直後の輸送密度は1,330。開発途上にある鉄道の将来像を探ります。
「スカイライン」に乗ってみる
ホノルルの高架鉄道「スカイライン」は、オアフ島西部と、空港、ダウンタウン、アラモアナなどの市街地を結ぶことを目的に計画された路線です。

2023年6月にイーストカポレイ~アロハスタジアム間約17.3kmが、9駅で開業しました。2025年10月には、ダニエル・K・イノウエ国際空港を経て、ホノルル市の中心部に近いカリヒまで約8.4kmを延伸しています。
これにより、現在は、イーストカポレイ~カリヒ・トランジットセンター間の約25.7km、13駅を結ぶ路線となりました。
さらに延伸工事を進めていて、現在、カリヒ~シビックセンター間の約4.8kmを建設中です。その先、アラモアナまで延伸する計画もあり、全線開通すれば、イーストカポレイからアラモアナまで約32km、21駅を結ぶことになります。
今回、筆者はホノルル空港から、終点のイーストカポレイまで乗車しました。そこで折り返し、反対側の終点、カリヒ・トランジットセンターまで乗り通してみました。

設計最高速度105km/h
スカイラインは、高規格の都市鉄道です。ほぼ全線が高架で、地平区間は1km程度のみです。
軌間は1,435mmの標準軌で、直流750Vの第三軌条方式。車両は日立製の4両編成で、設計最高速度105km/hです。営業最高速度は約89km/hで、停車時間を含む平均速度は約48km/hです。
運転士が乗務しない完全自動運転です。完全自動運転の都市鉄道は、全米で初めてだそうです。
1編成の長さは78.2m、車体幅は3,048mm。この車体幅は、JR東日本の拡幅通勤車両(2,950mm)より、やや広いサイズです。
固定座席120席に加え、折りたたみ式の座席68席を備えます。立席も含めた収容力は800人以上で、20編成80両が用意されています。

車内はゆったり
実際に乗ってみても、車内はゆったり感じました。2人掛けの固定式クロスシートを中心に配置し、スーツケース、自転車、サーフボードなどを持ち込めるようなスペースもあります。
車両間の貫通路も広く、編成全体を見通せます。完全自動運転なので運転台がなく、先頭部まで客室です。「展望席」からは前方展望も楽しめます。
高架線を滑らかに走り、乗り心地も快適でした。

道路沿いの高架を西へ
空港駅を出て西へ進むと、海側にはパールハーバーが見えます。反対側には住宅街が点在し、パールリッジやワイパフ周辺では商業施設やショッピングセンターも目に付きます。
このあたりまでは、ホノルル郊外を走る都市鉄道という景色です。スカイラインの高架橋は、おもに既存の幹線道路やその周辺空間を利用しており、多くの区間でハイウェイ沿いを進みます。

広大な車両基地、その先は農地
さらに西へ進むと、ハラウラニ駅付近に大きな車両基地が現れます。
「レール・オペレーションズ・センター」と呼ばれる施設で、面積は約17ヘクタール。80両という保有車両数のわりに大規模で、広大な用地に車両がゆったりと留置されています。
車両基地には、車両の留置や検修だけでなく、運行指令機能も置かれています。そのため、敷地には余裕があるように見受けられます。

がらんとした土地に
車両基地を過ぎるあたりから、車窓の景色が大きく変わります。人家が減り、農地が目立つようになります。新しい住宅地や商業施設もありますが、その横にはまとまった農地や空地、造成中の土地が広がっています。

終点のイーストカポレイ駅周辺も新興住宅地のようです。ただ、駅前は道路があるだけで、日本のニュータウン鉄道の終点ターミナルと比べると、駅前空間は殺風景です。

筆者が思い出したのは、2005年のつくばエクスプレス(TX)開業直後です。TX開業直後の万博記念公園駅付近は、駅前に何もなく、がらんとした土地に駅がぽつんとあるような状態でした。スカイラインの終点付近も、そのときに似ています。

中途半端な状態で
スカイラインは、10分間隔で運行しています。イーストカポレイから、10分後の列車で折り返し、東の終点であるカリヒ・トランジットセンターに向かいました。
カリヒはホノルル市街地の西端部に位置します。駅を出てペデストリアンデッキを進むと、バスターミナルのホームに降りられます。

ここから市街地へのバスが出ていて、乗り継ぎはスムーズでした。

カリヒ・トランジットセンターの先には、チャイナタウン、ダウンタウン、カカアコ、アラモアナ、ワイキキと、ホノルルの主要な市街地が続きます。
地元住民にとって、スカイラインの主たる価値は、西オアフからダウンタウン方面への通勤・通学利用でしょう。しかし、線路はまだダウンタウンに届いておらず、市街地の入口で終わっています。
旅行者にとっても、空港駅こそ開業しましたが、市街地方面へ進むと2駅で終点のカリヒに着いてしまいます。ショッピングモールのあるアラモアナや、ホテルが密集するワイキキには届きません。
そういう中途半端な状態だからか、筆者が利用した日曜日の午後、往復とも車内はガラガラでした。もっとも混んでいた区間でも、1編成に20人程度しか乗っていませんでした。

空港延伸で利用者は3倍以上に
米連邦交通局(FTA)の統計によると、カリヒ延伸前にあたる2024年の年間乗車人員は115万7841人でした。単純平均すれば、1日約3,160人です。
ただし、これは、カリヒ延伸前の統計です。2025年10月にカリヒまで延伸すると状況は変わりました。
ホノルル市交通局(DTS)のスカイラインの2026年7月の月別利用実績を見ると、1日平均10,559人に達しています。カリヒという、ホノルル中心部の端に達したことで、利用者数は開業当初の3倍以上になったわけです。
ただ、日曜日に限ると7,163人で、筆者が乗った日曜日は利用者が少ないようでした。
輸送密度は1,330人
日本の鉄道でよく使われる、輸送密度に換算してみます。
FTAの2024年統計によると、スカイラインの年間旅客輸送量は524万4236人マイルです。メートル法に換算すると、約844万人kmとなります。
当時の営業区間は、イーストカポレイ~アロハスタジアム間の約17.3kmでした。
年間輸送人キロを営業距離と営業日数(366日)で割ると、輸送密度が計算でき、約1,330人となります。
また、年間輸送人キロを年間利用者数で割ると、平均乗車距離が約7.3kmと計算できます。
現状は4,500人程度か
これは、カリヒ延伸前の2024年実績です。延伸後のFTA統計は出ていませんが、月別利用者数の速報によれば1日10,500人程度ですので、延伸前の3.3倍に増えています。一方、営業キロは約25.7kmとなり、約1.5倍となりました。
実際の平均乗車距離が不明なので、正確なところはわかりませんが、仮に平均乗車距離も1.5倍に伸びたとして、1日10,500人の利用者と仮定すれば、輸送密度は4,500人程度となります。
簡単にいえば、ホノルル高架鉄道は、輸送密度1,300人程度でスタートし、延伸により4,500人程度にまで増加したと推定できる、ということです。
どこまで増えるか
推定輸送密度4,500人という数字だけを見れば、800人以上の収容力の列車が、日中に10分間隔で運行している現状は、輸送力過剰にも感じられます。
しかし、いうまでもありませんが、スカイラインは現状の需要に合わせて造られた鉄道ではありません。
西側ではこれから沿線開発が進みます。東側では、市街地に路線が延びていきます。施設や車両は、アラモアナまで約32kmを運行することを前提に用意されています。そのため、車両にも、車両基地にも余裕があるのでしょう。
現在のスカイラインは、西側では街の完成を待ち、東側では線路の完成を待っている、という状態です。鉄道事業としては黎明期にあたります。
現時点では大きく見える「器」を、将来の延伸でどこまで埋められるか。ダウンタウンのシビックセンター延伸は2031年頃の予定です。「ハワイのTX」の利用者がどこまで増えるかが注目です。(鎌倉淳)
【後編はこちら】
ホノルル高架鉄道、輸送密度1330からの挑戦。「ハワイのTX」の現在地





















