JR九州は、「旅名人の九州満喫きっぷ」をQRコードによりデジタル化し、9月からスマートフォンアプリ「my route」で発売します。3日分の利用権を個別に管理する仕組みで、好きな日に1日ずつ利用できます。この方式は青春18きっぷにも適用できそうで、「1日ずつ利用」復活のモデルになるかもしれません。
「旅名人の九州満喫きっぷ」をデジタル化
JR九州は、九州内15の鉄軌道事業者で利用できる「旅名人の九州満喫きっぷ」をデジタル化すると発表しました。
「旅名人の九州満喫きっぷ」は、九州の鉄軌道各社の普通列車や路面電車などを自由に組み合わせて利用できるフリーきっぷです。
これまではJR九州のみどりの窓口や指定席券売機などで販売していましたが、新たにデジタル版としてQRチケットをmy routeアプリで発売。スマートフォンから購入できるようになります。

15社局が利用対象
「旅名人の九州満喫きっぷ」で利用できるのは次の15社局です。
JR九州、北九州モノレール、平成筑豊鉄道、筑豊電気鉄道、福岡市地下鉄、西鉄電車、甘木鉄道、松浦鉄道、島原鉄道、熊本電気鉄道、熊本市電、南阿蘇鉄道、くま川鉄道、肥薩おれんじ鉄道、鹿児島市電
これらの線区で、普通・快速列車の普通車自由席と日田彦山線BRTが利用できます。西鉄では、特急・急行列車も乗車可能です。ただし、西鉄では12月31日は利用できません。

1日券3回分で13,000円
「旅名人の九州満喫きっぷ」は、1日乗り放題券3回分をセットにした商品です。現在は3回分セットで12,000円で、有効期間は3ヶ月。紙のきっぷでのみ発売されています。
2026年9月1日からは、my routeで販売するデジタル版が加わります。価格は13,000円で、1,000円の値上げとなります。紙のきっぷの販売も継続しますが、同日から14,000円に値上げされます。
デジタル版は購入日を含め7日以内に利用を開始する必要があり、利用開始後は90日間の間に3回利用できます。各1日券は利用開始日の翌日午前2時まで有効です。
QRコードで改札通過
デジタル版の利用方法は、アプリに表示されるQRコードを、QRコード対応改札機にかざして利用します。または、駅設置のQRコードを読み取ることでも利用できます。
QRコード乗車ができるのは、JR九州のQRチケレス対象駅のみです。それ以外のJR九州の駅や、他の鉄道・軌道事業者では、アプリのチケット画面を駅係員や乗務員に提示して乗車します。
今回のデジタル化は、一般社団法人九州MaaS協議会が国土交通省の2026年度「観光MaaS推進事業」の一環として実施する取り組みです。

「3日分」を別々に使える
「旅名人の九州満喫きっぷ」デジタル版の特徴は、「1日乗り放題×3回」をセットで管理する点です。
利用者は、アプリに表示される3枚の1日券から、その日に使う分について「利用する」ボタンを押します。すると、その1日券だけが有効となり、残り2日分はそのまま残ります。
利用開始後90日以内であれば、好きな日を選んで3日分を使い切ることができます。同一日に複数人での利用も可能です。
紙のきっぷでも同様の利用形態でしたが、デジタル化によって1日券ごとの利用状況をシステム上で管理できるようになりました。
青春18きっぷでも?
この仕組みを見て思い浮かぶのが、「青春18きっぷ」です。技術的には、同様の方式を採用できる可能性があります。
「青春18きっぷ」は、かつて1日券が5回分セットという設定で、有効期間内なら任意の1日を選んで利用できました。しかし、2024年冬から連続利用制に移行し、「5日間用」は連続する5日間、「3日間用」は連続する3日間しか利用できなくなりました。
これにより、従来のように、「今日1日使い、来週もう1日使う」といった利用方法はできなくなっています。
一方、連続利用化により、「青春18きっぷ」は自動改札機を通過できるようになりました。
JR各社は制度変更について詳細な理由を説明していませんが、有人改札の人員削減などを背景に、磁気券で自動改札対応を実現するための制度変更だったとみられています。
青春18きっぷをデジタル化するなら
今回の「旅名人の九州満喫きっぷ」の仕組みをみると、QRコードを使ってデジタル化すれば、自動改札対応で非連続利用に戻すことも可能になりそうです。
「青春18きっぷ」をQRコード対応にする場合、購入するとアプリ内に5枚の1日券が付与され、その都度「利用する」を押して使用開始する方式が考えられます。
使った分だけ利用権が消費され、残り日数はサーバー側で管理されるため、非連続での利用が可能になります。QRチケットでは、以前の紙のきっぷのような押印は不要で、QR対応の自動改札機を通過できます。対応改札機がない場合のみ、有人改札を通過することになります。
アプリによる管理で、転売防止や不正利用対策も可能でしょう。
現実には課題も
いうまでもありませんが、「青春18きっぷ」は全国のJR各社共通商品であり、九州内で完結する「旅名人の九州満喫きっぷ」とは事情が異なります。これまでに、JR全社で利用できるQRコード方式のデジタルチケットが発売された例は、おそらくありません。
現時点でQRコード対応の改札機は、磁気券の改札機に比べると数が少なく、会社によって普及度の差が大きいという問題もあります。「青春18きっぷ」をQRチケットにすると、特定の駅で、限られた改札機に利用者が集中し、混乱するという事態も考えられます。
少なくとも、現時点で、「青春18きっぷ」のような大型商品をQR化にするには、対応改札機の数が足りていません。
ただ、全国の鉄道会社で磁気券そのものが廃止される流れがあり、代替としてQR乗車券の導入が進んでいます。となると、いずれQR対応改札機が広く普及する可能性は高く、「青春18きっぷ」のQRチケット化のハードルも下がりそうです。
導入に向けた課題はありますが、「複数日分の利用権をデジタルで管理し、好きな日に1日ずつ使う」という仕組みそのものは、「旅名人」のデジタルきっぷによって十分実現可能であることが示されたといえます。
販売枚数回復には
「青春18きっぷ」が連続利用制へ移行したことで、販売枚数は大きく減少しました。2023年度には約62万枚を売り上げていましたが、2025年度は約24万枚にまで減少したことが報じられています。
販売枚数減には連続利用制への移行が大きく影響したとみられます。実際、利用者からは、従来の仕組みを望む声が今も少なくありません。
販売枚数を回復させるのであれば、デジタルチケットによる非連続利用の仕組みの復活は効果的でしょう。
他の問題も
一方で、かつての「青春18きっぷ」には、特定の路線・列車に混雑が偏在するなどといった問題も抱えていました。したがって、技術的に可能だからといって、実際に非連続利用が復活するかどうかは、そうした問題も踏まえて判断されるでしょう。
「青春18きっぷ」はJR旅客6社の商品のため、制度変更には旅客6社が合意しなければなりません。「青春18きっぷ」に対する考え方には、各社で温度差があり、そこにJR6社共通商品の難しさがあります。
要するに、残る課題はシステムではなく、QRコード対応改札機の普及と、JR各社の考え方といえそうです。(鎌倉淳)























