和歌山港と徳島港を結ぶ南海フェリーが、8月1日から2往復減便し、1日6往復になります。理由は乗務員不足です。同社は2028年3月の航路撤退を表明していますが、すでに船員の流出が始まっている可能性もあり、航路廃止が前倒しになる懸念もあります。実際に乗船して、状況をみてきました。
8月1日から2往復減便
南海フェリーは、和歌山港と徳島港とを2時間15分で結ぶ航路です。「フェリーかつらぎ」と「フェリーあい」の2隻体制で1日8往復を運航。近畿地方南部と四国を結ぶショートカットルートとして利用されてきました。
この航路について、親会社の南海電鉄は、2028年度3月をメドに撤退すると発表しました。燃油費高騰や利用者減少による赤字に加え、「フェリーかつらぎ」が就航から26年を経過し、更新時期を迎えているという理由からです。
さらに乗務員不足により、8月1日から1日2往復を減便することも発表しました。航路撤退を受けて、すでに船員の流出が始まっている可能性がありそうです。

平日午後便に乗船
7月上旬の平日の午後便に、徳島港から乗船してみました。徳島駅から市バスに乗車し、20分ほどでフェリー乗り場に到着します。バスから船に乗り継いだのは、筆者も含めて5人ほどでした。
フェリーターミナルはこぢまんりしています。

1階にはチケット売り場と売店があるだけで、喫茶店は閉業しています。チケット売り場の横の階段を上がると、すぐに小さな待合室で、乗船口に接していました。待合室にいたのは10人ほどでしょうか。

乗船したのは13時20分発の「6便」です。運航は2019年に就航した「フェリーあい」。徳島のカラー「藍色・ジャパンブルー」をイメージした船体で、内部も明るく華やかです。

僚船「かつらぎ」とすれ違い
待つほどもなく出港。甲板に上がると、左手遠くに鳴門大橋がかすみ、手前には渦潮とおぼしき白波も見て取れます。
やがて淡路島の南に浮かぶ沼島が間近に見えると、右手で僚船の「フェリーかつらぎ」とすれ違います。「フェリーかつらぎ」は1998年の就航で、遠目にも老朽化が進んでいるように感じられます。
今回発表された減便も、対象は「フェリーかつらぎ」の運航便です。

客は30人あまり
船内を改めて歩いて、乗船人数を数えてみると、30人あまりでした。旅客定員は427名なので、乗船率は1割にも満たないわけです。
車両甲板ものぞいてみましたが、トラックが7台、乗用車が5台程度でした。8tトラック換算37台を搭載できるので、2割程度の積載率です。

ビジネスコーナーは人気なく
船室は椅子席、じゅうたん席、テーブル席、ソファー席、ビジネスコーナーと多彩。ネット予約で500円を支払えば、グリーン席にも乗船できます。
どの席も空いていましたが、とくに椅子席とビジネスコーナーは人がほとんどいませんでした。
いっぽう、ソファ席には横になっているおじさんが見受けられました。定番のじゅうたん席(桟敷席)には、比較的利用者が集まっていました。といっても、一区画数人ですが。

2時間20分があっという間
紀淡海峡の南にさしかかると、横揺れが少し強くなりました。友が島を眺めているうちに、和歌山の製鉄所が次第に近づき、反対側の港に接岸します。
所要時間は2時間20分ですが、地図と照らし合わせながら景色を眺めているとあっという間でした。

10名程度が列車乗り継ぎ
和歌山港では、南海和歌山港駅まで、150メートルほどの連絡橋を渡ります。フェリーの到着後、約10分で列車が出発するダイヤになっていて、慌ただしいですが、接続は良好です。
待っていたのは、2両編成の和歌山市行き。乗客は10名程度でした。おそらくは、これが徒歩客のすべてでしょう。

5分ほどで和歌山市駅に到着し、難波行きの特急に連絡します。これに乗れば1時間ほどで難波に着けますが、筆者は和歌山市駅で下車しました。

平均14%の乗船率
南海フェリーによれば、2024年度の利用者は年間35.7万人。自動車輸送台数は乗用車とトラックをあわせて11.5万台です。
計算すると、1日あたり1,000人弱、1便平均の乗船人数は約60人にとどまります。「フェリーあい」の旅客定員は427名ですので、平均乗船率は約14%にすぎません。
筆者が乗船した便の利用者は30名程度でしたが、特異的に少なかったのではなく、平日午後便は、いつもこの程度なのでしょう。

クルージングの仕掛けに乏しく
まとめてみると、徳島から和歌山へ、船と列車を組み合わせた乗り継ぎルートは、旅行者には面白いです。2時間あまりという所要時間も適度で、船旅を少し楽しむにはちょうどいいでしょう。
ただ、船内には売店も喫茶もゲームコーナーもなく、自販機があるだけで、観光客がクルージングを楽しむ仕掛けがないのはやや残念でした。「フェリーあい」は2019年に就航した新造船で、機能的で快適ですが、少し遊び心があってもよかったかもしれません。

仮定の話ではありますが、瀬戸内海汽船(松山~広島)の「シーパセオ」のようなクルーズフェリーが投入されていれば、「乗るのが目的」の客が集まり、少しは利用状況が違ったのではないか、という気もします。

ただ、現実的には、これだけ利用者が少ないと、多少の需要喚起策でどうにかなるものではないのかもしれません。
存続するには、和歌山県と徳島県が協力して第三セクターを設立し、航路を継承するくらいしか手立てはなさそうです。ただ、行政の腰は重く、航路を維持する熱意は感じられません。

乗務員不足で前倒しも
現在、船員不足は全国的です。廃止が決まった航路に対し、船員の引き抜きが始まるのは避けられません。
8月からの減便が乗務員不足に起因するものであれば、今後、南海フェリーで新規採用はされないでしょうから、復便は望み薄です。
むしろ、さらに乗務員が不足し、運航継続が難しくなり、廃止が早まる可能性もあります。一度乗ってみたいとお考えの方は、お早めに。(鎌倉淳)






















