高知の路面電車、とさでん交通の部分廃止が議論になりはじめました。線路や車両維持に必要な投資ができておらず、高知市の検討会で路線縮小の意見が出てきています。
日本最古の路面電車
とさでん交通は高知市、南国市、いの町にまたがる路面電車を運行しています。はりまや橋を中心に、東西線(伊野線・ごめん線)と南北線(桟橋線)の2路線があり、合計の軌道距離25.3kmは日本一の長さです。
1904(明治37)年に開業し、現役の路面電車の路線としては日本最古の歴史を誇ります。しかし、近年は経営難に苦しんでおり、2021年度決算では約2億1000万円の赤字を計上しました。
必要な設備更新を先送りしてきたことで、設備の老朽化も深刻になってきました。
こうした状況を背景に、地元の高知市では、将来の交通網を維持・確保するために「地域公共交通あり方検討会」を設置。2022年12月から路面電車や路線バスの将来像について議論をはじめています。
その内容から、高知の路面電車の現状と課題をみてみましょう。
約6本に1便
まず、とさでん交通の路面電車の概況を見ていきましょう。
高知市中心部のはりまや橋では、伊野線が1日上下各172便を運行していて、約6分に1便のペースです。東の終点・後免町では1日上下60便で、約15分に1便。西の終点・伊野では上下23便で、約40分に1便です。
市街地では市内交通にふさわしい頻繁運行をしていて、郊外部でも40分間隔の朝倉~伊野間を除けば、一定のフリークエンシーを確保しています。
市内は200円均一
運賃は、高知市内中心部で200円均一です。沿線を運行する路線バスと比べると、3割から4割程度安い運賃水準です。
郊外部では値段が上がり、後免町や伊野までといった末端部まで行くと、はりやま橋から480円かかります。JR線の260円に比べると8割程度高くなっています。
年間600万人の利用者
利用状況は、年間600万人程度で推移してきました。しかし、新型コロナ禍で大きく減少し、2020年度は420万人程度にまで落ち込みました。
2021年度はやや回復しましたが、450万人に程度にとどまっています。
平均車齢は60年近く
車両は老朽化が進んでいます。2021年現在で平均車齢は57年と古く、そのうち7割を60年以上の車両が占めています。
運行している63両のうち、低床車両は2002年、2018年、2021年に導入した3両だけです。
ノーガード電停が多数
高知市内には上下線合わせて119の電停あり、うちバリアフリー電停は42電停(約35%)、上屋が設置されているのは81電停(約68%)です。
郊外部では、電停用地が確保できていないため、安全施設がなく道路上に白線で電停の位置を囲んだ「ノーガード電停」が多く残されています。
バリアフリー化で遅れていて、安全上、課題のある停留所が多く残されているということです。
乗務員数は確保
乗務員数は、2022年現在で104人。10年後の2031年でも106人を想定していて、一定数は確保できる見込みです。技術員は39名で、10年後には33人と微減の見込みです。
数年後に技術員の手当が必要になるかもしれませんが、当面の人員についてはおおむね問題なさそうです。