2015年12月に路線を環状化(ループ化)した札幌市電が好調です。札幌市交通局は、市電の利用者が、ループ化後1年で約1割増加したと発表しました。事前の想定を大きく上回ったことで、桑園、苗穂への延伸検討に弾みがつくのでしょうか。
週末の利用者増が目立つ
札幌市電がループ化されたのは、2015年12月20日です。利用者数をループ化前後で比較したところ、ループ化後の利用者は1日あたり平均2万4396人と、ループ化前の2万1993人から2403人(11%)増えました。札幌市が事前に想定していた1日平均600人増を大きく上回っています。
平均乗客数は、平日が2194人(9.3%)増の2万5674人、土日祝日が2243人(12.4%)増の2万376人となり、週末の利用者増が目立ちました。月別では、開業した2015年12月が3879人増と最も伸びが大きく、その後は1066人増(2月)~2901人増(8月)で推移しました。12月は開業効果でしょうが、その後も手堅く利用者が増えたようです。
「1割」というと軽く感じる人がいるかもしれませんが、成熟した市街地の既存交通機関で、1年で10%増というのは、かなり大きな数字です。
値上げで客離れが起きないか
札幌市電のループ化に関しては、実施まで賛否が分かれました。札幌市のメインストリートである駅前通を走る新路線のため、交通渋滞などが危惧されたからです。サイドリザベーション方式での敷設に対しても、不安視する声が少なくありませんでした。
それでも、札幌市はサイドリザベーション方式で軌道を敷設し、新設した狸小路電停は、歩道からの乗降をしやすくしました。こうした施策も利用者増に貢献したとみられます。
札幌市電では2017年4月から運賃を170円から200円に値上げすることを決めていますので、値上げによって客離れが起きないかが、次の焦点になりそうです。
延伸構想の実現性は?
札幌市では、今後、市電の札幌駅や苗穂、桑園方面への延伸を構想しています。現実的には札幌駅への延伸が最初の課題になりそうですが、地元記者に尋ねてみると、「札幌駅~すすきのには、すでに地下鉄が走っていて、その地上に路面電車を走らせることに関しては反対論も根強い」とのこと。実現できるかは不透明です。
サイドリザベーション方式で延伸すれば、駅前通の長い区間でタクシーの乗降や荷さばきに制限がかかるので、そうした点への不満も大きいようです。
北海道新幹線開業へ向けて
ただ、ループ化による好調がこのまま続けば、札幌駅を経て苗穂方面への延伸を支持する声も大きくなるかもしれません。開業後1年だけで判断するのは早計ですが、市電沿線の人口も増加しているとのことなので、市電の好調はある程度続きそうです。
札幌市では、北海道新幹線が開業する2030年度に向けて、札幌駅周辺の整備がこれから進められます。タイミング的にも恵まれており、市電の札幌駅延伸は、より現実味を帯びて議論されるのではないでしょうか。(鎌倉淳)