ウズベキスタンのカリモフ大統領が死去しました。カリモフ大統領は、四半世紀にわたり独裁体制を敷いてきた大統領で、死亡により政情不安定に陥る可能性もあります。旅行計画の方は要注意です。
チムール帝国の古都
ウズベキスタンは、チムール帝国の古都サマルカンドや、シルクロードの隊商都市ブハラ、ヒヴァなどを抱え、シルクロードの観光資源が豊富な国です。治安はおおむね良く、テロや誘拐も少なく、中央アジアのなかでは自由旅行がしやすい国の一つでした。バックパッカーにも人気があります。
筆者が訪れたのは、もう十年以上前ですが、街中を歩いていても防犯に気をつかわずにすみ、砂漠をタクシーですっ飛ばしてもゲリラの心配をしなくてもいいような状態で、おおむね安心して旅行をすることができました。
ただ、治安の良さは、独裁体制の裏返しでもあります。独裁体制が崩壊すると、押さえつけられていた反政府勢力が息を吹き返したり、さまざまな事情で急速に治安が悪化したりする場合もあります。デモが起きたり、ひどい場合は内戦が起こる可能性もなくはありません。
今回は病死のようですから、「崩壊」とは状況が異なりますが、今後の動向がどうなるかは見通せません。
3ヶ月以内に選挙
報道によると、カリモフ大統領に明確な後継者はいないようです。憲法上は3カ月以内に選挙を実施し、後任の大統領を決めることになっているそうですが、民主的な選挙が行われる可能性は低く、側近や親族など少数のグループによって後継体制が決められると見られます。その際、民衆の不満が爆発して、なんてこともありえますから、ちょっと要注意です。
もともと官憲が腐敗気味の国で、町を歩いていたら警官に賄賂をねだられるというような面倒くささはありました。そういう国は、国民が体制に不満を抱いている可能性が高いです。
ウズベキスタンは、青いモスクが美しく、隊商都市の情感も素晴らしく、旅行者的な視点からみれば、シルクロード観光のハイライトです。政治体制はその国民が決めることではありますが、旅行者としては安定した民主的な政権移行が行われることを願わずにいられません。(鎌倉淳)