JR東日本ローカル線の輸送密度は500以下が多数。実質最下位は陸羽東線。幹線も県境は苦戦

JRグループでもっとも経営規模が大きいのがJR東日本。全JRの鉄道運輸収入の4割を占め、経営基盤は磐石です。しかし、JR各社で最も多くのローカル線を抱えるのも、またJR東日本です。

では、JR東日本のローカル線の輸送密度はどれくらいなのでしょうか。ランキングにしてみました。

広告

各路線の輸送密度を詳細に公表

JR東日本は、各路線の平均通過人員(輸送密度)のデータを詳細に公表しています。輸送密度は1日1キロあたりの旅客数を示します。

JR東日本の資料を基にした、区間別輸送密度ランキングは以下の通りです。輸送密度4,000人/日以下を集めてみました。

データは2013年度のものですが、東日本大震災や集中豪雨などによる被災の影響を受けている区間に関しては、参考として2010年度の数字も付けました。2010年度の数値は( )内に記しています。岩泉線に関しては、( )内は2009年度の数字です。また、不通区間の数字は代行バスのものです。(単位:人/日)

陸羽東線

2013年度JR東日本輸送密度低い順ランキング

1位 只見線 会津川口~只見 22(49)
2位 岩泉線 茂市~岩泉 23(29)
3位 陸羽東線 鳴子温泉~最上 110
4位 只見線 只見~小出 112(147)
5位 花輪線 荒屋新町~鹿角花輪 126
6位 北上線 ほっとゆだ~横手 155
7位 津軽線 中小国~三厩 163
7位 飯山線 戸狩野沢温泉~津南 163
9位 米坂線 小国~坂町 189
10位 大船渡線 気仙沼~盛 200*(426)

11位 久留里線 久留里~上総亀山 216
12位 只見線 会津坂下~会津川口 219
13位 山田線 上米内~宮古 220(184)
14位 気仙沼線 前谷地~柳津 263(696)
15位 気仙沼線 柳津~気仙沼 268*(839)
16位 水郡線 常陸大子~磐城塙 282
17位 山田線 宮古~釜石 328*(693)
18位 磐越東線 いわき~小野新町 395
19位 陸羽西線 新庄~余目 403
20位 山田線 盛岡~上米内 462(403)

21位 飯山線 津南~越後川口 466
22位 磐越西線 喜多方~五泉 527
23位 米坂線 米沢~小国 538
24位 北上線 北上~ほっとゆだ 543
25位 吾妻線 長野原草津口~大前 545
26位 花輪線 好摩~荒屋新町 570
27位 弥彦線 弥彦~吉田 572
28位 花輪線 鹿角花輪~大館 577
29位 中央本線 辰野~塩尻 606
30位 大湊線 野辺地~大湊 612

31位 大糸線 信濃大町~南小谷 752
32位 釜石線 花巻~釜石 874(900)
33位 越後線 柏崎~吉田  945
34位 大船渡線 一ノ関~気仙沼 976(903)
35位 八戸線 八戸~久慈 1,043
36位 上越線 越後湯沢~ガーラ湯沢 1,061
37位 水郡線 常陸大宮~常陸大子 1,108
38位 水郡線 磐城塙~安積永盛 1,114
39位 奥羽本線 新庄~大曲  1,128
40位 上越線 水上~越後湯沢 1,150

41位 陸羽東線 古川~鳴子温泉 1,182
42位 小海線 小淵沢~小諸 1,211
43位 石巻線 小牛田~女川 1,229(1,509)
44位 鹿島線 香取~鹿島サッカースタジアム 1,305
45位 只見線 会津若松~会津坂下 1,315
46位 羽越本線 酒田~羽後本荘 1,705
47位 奥羽本線 大館~弘前 1,718
48位 五能線 五所川原~川部 1,747
49位 飯山線 豊野~戸狩野沢温泉 1,869
50位 久留里線 木更津~久留里 1,945

51位 羽越本線 新津~新発田 1,974
52位 常磐線 原ノ町~岩沼  2,185(5,714)
53位 羽越本線 村上~鶴岡 2,359
54位 東北本線 小牛田~一ノ関  2,630
55位 磐越東線 小野新町~郡山 2,689
56位 羽越本線 鶴岡~酒田  2,800
57位 東北本線 黒磯~新白河 2,824
58位 八高線 高麗川~倉賀野  2,881
59位 奥羽本線 追分~大館 2,938
60位 吾妻線 渋川~長野原草津口 2,991

61位 中央本線 岡谷~辰野  3,001
62位 内房線 君津~安房鴨川 3,411
63位 信越本線 長野~直江津 3,838
64位 仙山線 愛子~羽前千歳 3,868

*山田線宮古~釜石間は振替バス輸送。定期券及び回数券利用者のみ計上。
*気仙沼線柳津~気仙沼間、大船渡線気仙沼~盛は、はBRT輸送の数字。

広告

東北山岳路線は低迷

いつものことですが、こういう統計は、どこで区間を区切るかによって数字が大きく変わります。そのため、公表数字だけをランキングしてすべてを判断することはできません。ランキングを見ると、「JR東日本は輸送密度2,000以下の区間がとても多い」という印象を受けるかもしれませんが、そういう区間をあえて分離して統計表示しているから、ともいえます。

とはいうものの、JR東日本といえど、ローカル線の輸送密度の落ち込み方は想像以上、と感じられた方が多いのではないでしょうか。

1位の只見線会津川口~只見間と、2位の岩泉線は、災害により代行バスが運転されていた区間ですので、実際はバスの輸送密度です。したがって、実質的な輸送密度最下位は、陸羽東線の鳴子温泉~最上間の110ということになります。以下、花輪線、北上線、飯山線、米坂線といった東北地方の山岳路線の県境区間が、輸送密度100台に低迷しています。

万座・鹿沢口~大前は94

JR西日本の中国地方の山岳路線でも輸送密度100台の区間は少なかったので、東北地方の肋骨線の輸送量の低さは深刻といえます。

ちなみに、JR東日本が只見線の復旧に関連して提出した別の資料によりますと、2010年度の輸送密度は、岩泉線・茂市~岩泉が29、只見線・会津川口~入広瀬が52、津軽線・津軽浜名~三厩が70、吾妻線・万座・鹿沢口~大前が94で、この4区間が100人/日以下となっています。

このように、一部分だけを切り分ければ、100以下の数字も出てきます。ただ、末端だけを切り取った万座鹿沢口~大前でさえ94と考えると、東北山地の100台という数字は、やはりかなり低いといえます。

JR東日本はローカル線を維持してきたが

輸送密度500以下に目を転じると、約20もの区間があります。輸送密度500以下の路線はバスのほうが輸送適性があるといわれても仕方のない区間ですので、これらの区間はいつ廃止されてもおかしくない、といえます。ただ、JR東日本は、これまでローカル線の維持には力を尽くしてきましたし、その方針は変えていないようですので、何もなければこれらの路線といえど当面は維持されるでしょう。

しかし、災害で大きな被害を被った場合は別です。たとえば土砂災害を受けた岩泉線は、復旧しないで廃線にするという決断を下しています。只見線の会津川口~只見間はまだ結論が出ていませんが、やはり廃線の方向です。津波で被災した山田線の宮古~釜石間は復旧させますが、三陸鉄道への移管を条件にしました。

こうしてみてみると、現在は運行を続けているJR東日本の低輸送密度区間も、大きな災害に見舞われたら、その時点で廃止、という可能性は高いといえます。とくに、山岳路線は被災しやすいもの。そういう視点に立てば、上記のランキングのうち、3位~10位くらいまでは、被災したらその時点で廃止されても不思議ではない路線、といえるでしょう。200以上の輸送密度の区間に関しては、只見線で復旧実績があります。被害の程度にもよると思われますが。

幹線でも県境は苦戦

幹線・準幹線区間に目を転じると、羽越本線、奥羽本線といった日本海側の路線の低さが目につきます。羽越本線・酒田~羽後本荘の1,705や、奥羽本線・大館~弘前の1,718は国鉄時代の第一次特定地方交通線レベルですし、羽越本線・鶴岡~酒田といった、比較的人口の多いエリアでも、2,800と第二次地方交通線レベルです。

また、東北本線・小牛田~一ノ関2,630や、東北本線・黒磯~新白河2,824も、気になる数字です。これらは比較的運転本数が多い区間ですが、運転本数に比例するほどの利用者はいないことを物語ります。県境というのは幹線であっても輸送量がかなり落ち込むようです。

輸送密度激増の区間が一つだけ

ところで、上記のランキングのなかで、近年輸送密度が激増している区間が一つだけあります。おわかりでしょうか。

36位 上越線 越後湯沢~ガーラ湯沢 1,061

この区間は、2009年度は 691に過ぎなかったのですが、2013年度はついに1,000の大台に乗せました。確認できる範囲でのこの区間の過去最低は 2006年度の646で、そこからみると7年で6割増し。1,061はおそらく過去最高と思われます。

ガーラ湯沢への割引きっぷ「GALA日帰りきっぷ」は2011年度を最後に販売が中止になりましたが、こうした利用者の急増が背景にあったからかもしれません。

広告