JR津軽線、転換バス「共同運営方式」が画期的な理由。蟹田-三厩間、JR東日本が提案

いまより負担が軽くなる?

大雨で被災して運休が続く津軽線蟹田~三厩間について、JR東日本が新たな案を提示しました。NPO法人が代替バスや町営バスなどの地域交通を共同運営するものです。これまでにない提案ですが、どこが画期的なのでしょうか。

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NPO法人を設立し共同運営

JR津軽線は、2022年8月の大雨で盛土崩落などの被害が出て、蟹田~三厩間で不通が続いています。JR東日本は、利用者が少ないことを理由に復旧を見送っていて、バスや乗合タクシーなどへの転換を提案しています。

この問題を話し合う沿線市町村長会議(首長級会議)の第2回会合が2024年2月28日に開かれました。各社報道によると、JRはバスや乗合タクシーなど自動車交通への転換の方向性を改めて示し、施設整備や運行などにかかる経費として30億円~40億円を支援することを明らかにしました。

バスや乗り合いタクシーの運営期間は18年以上を想定し、運行体系は3年ごとに見直します。将来的には、JRが主体となってNPO法人を設立し、沿線自治体の町営バスを含め地域交通を一括で共同運営する構想も示しました。

沿線の外ヶ浜町と今別町と合意すれば、最短で2025年4月に新たな交通体系に転換し、数年後に共同運営に移るということです。

津軽線三厩駅

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エリア一括協定運行事業か

報道では明確になっていませんが、JRが提案しているのは、「エリア一括協定運行事業」と呼ばれる方式のようです。これは、国交省の「アフターコロナに向けた地域交通の『リ・デザイン』有識者検討会」の提言を受け、2023年度から導入された、国の新たな補助制度です。

交通事業者が一定のエリアを一括して運行(エリア一括協定運行)する場合に、国交省として長期安定的な支援をするものです。

具体的には、これまで地方のバス路線には、路線ごとに赤字欠損という形で、国が補助金を拠出してきました。これに対し、エリア一括協定運行では、自治体と交通事業者が協定を締結し、一定のエリアについて一括して運行する場合、その事業全体に対して補助金を拠出します。

赤字路線に対する欠損補助ではなく、黒字路線も含めたエリア全体の公共交通に対し一定の補助金を払うことで、地域全体の交通ネットワークを維持しやすくする狙いがあります。

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自治体と事業者が協定を締結

エリア一括協定運行をおこなう場合、自治体と交通事業者が協議して、運賃、路線、運行回数といったサービス水準や、自治体の費用負担、官民の役割分担などについて協定を締結します。

事業者は協定に基づき複数年にわたりバスやタクシーを運行し、自治体は事業者に対しその対価を支払います。国は、事業初年度に事業期間全体の補助金を明示し、期間を通じて予算面で支援します。

補助金は赤字補填ではありませんので、利益が出れば事業者に帰属します。ただし、次の協定期間には補助金が減少する仕組みです。

JRが津軽線に対して示した案は、エリア一括協定運行をする事業者として法人を設立し、国の補助金を受けながら、地域公共交通を長期的に維持していこうという枠組みとみられます。

蟹田~三厩間では、JR代替バスと町営バスとで運行ルートが重なりますので、一括運行することで効率的になります。共同運営の場合、JRが一定の資金を拠出しますので、自治体の公共交通に投じる費用を、現状より軽減できる可能性が高いでしょう。JRも鉄道運行費用に比べれば、負担を軽減できます。

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対照的な反応

JRの案に対し、沿線自治体の首長は対照的な反応を見せています。外ケ浜町の山崎結子町長は「地域とJRが一体となって住民に優しい交通体系をつくる先進事例にできれば、すごくいい」と、歓迎する意向を示しました。

一方、今別町の阿部義治町長は「これだけ投資するのであれば、津軽線を工事復旧して動かせるのではないか」と指摘し、鉄道維持を求める姿勢を改めて示しています。

JR盛岡支社長は「津軽線の運行に毎年6億円から7億円かかる。代替交通のスキームだと2億円弱。津軽線よりも費用負担は薄い」と強調。理解を求めました。

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「手切れ金」方式ではなく

今回の案が画期的なのは、鉄道を廃止することにより、自治体の公共交通に対する費用負担が軽減される可能性がある、という点です。

これまでの鉄道廃止案は、鉄道会社が「手切れ金」を渡して、自治体が代替バスの運行費用に充てる形がほとんどでした。「手切れ金」を使い尽くすと、公共交通維持の費用負担が自治体にのしかかりますし、既存の公営バスの負担が減ることもありません。

一方、今回のJR案は、詳細は明らかでないので断言はできませんが、報道されている範囲では、自治体の費用負担を、既存交通も含めて現状より軽くしようという試みのようです。

要するに、鉄道がなくなったら自治体財政がラクになる、というスキームなわけです。

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自治体にもメリットがあるスキーム

JR東日本は、今後、津軽線以外でも、ローカル線の整理に向き合わなわなければなりません。そのために、自治体にとってもメリットがあるスキームを提示したのでしょう。

端的にいえば、「ローカル線廃止による経済的受益をJRと自治体が分け合うスキーム」です。これまでは、廃止による受益の多くがJRに帰属していたので、大きく異なります。今後、各地のローカル線問題への対応策として、一つのモデルケースとなるかもしれません。

存廃の議論の行方は見えませんが、最終的には「自治体の公共交通維持費用負担が、今より減る」ということが明確になるのであれば、自治体財政の改善を意味しますので、廃止は町民のメリットになります。となると、今別町もJR案を受け入れるほかないのではないでしょうか。(鎌倉淳)

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