東武鉄道が新型特急車両として500系を導入します。500系は3両編成で分割併合可能な点が大きな特徴。このため、「きぬ」と「けごん」の併結などが考えられ、東武鉄道の特急系統が大きく変わりそうです。ここでは、500系がどう運用されるのかを考えてみましょう。
川崎重工が70年ぶり供給
東武で新型特急車両の製造が予告されたのは2014年4月のこと。「東武グループ中期経営計画2014~2016」において、「新型特急の投入(日光線・伊勢崎線系統)」との文言が盛り込まれました。そして、2015年4月22日に500系の導入を公式発表。4月30日には東武鉄道の2015年度の設備投資計画が発表され、そこでも500系新造はトップで伝えられています。
500系の製造は川崎重工です。最初の納入は2016年度内で、2017年春から運用開始。3連8編成24両が導入されます。川崎重工が東武鉄道向けに車両を供給するのは、1946年に納入した通勤型電車63系以来、実に70年ぶりとなります。
300系・350系の置き換えか
東武の鉄道車両と言えば、100系「スペーシア」と、200系・250系「りょうもう」が思い浮かびます。さらに「しもつけ」「きりふり」「ゆのさと」用の300系・350系も健在です。500系はこのうち、もっとも経年が長い300・350系を置き換えるものと思われます。
ただ、現在の300・350系の運用にそのまま500系をあてはめるとは思えません。東武鉄道はプレスリリースでは、「500系の導入に合わせて、当社の広域な路線ネットワークをより活かした特急列車の運行形態を構築し、今まで以上に特急列車の利便性をお客さまに提案してまいります」との文言を添えており、新型車両の投入に伴って運用を大きく変えることを示唆しています。
「きぬ」「けごん」の併結列車が誕生か
500系で特徴的なのは、両運転台とも併結可能な構造(中央貫通方式)であることです。これは、特急列車で分割・併合を行うことを示しています。東武は路線網が広いため、分割・併合に適した区間はたくさんあります。下今市での日光方面と鬼怒川方面が真っ先に思い浮かびますが、新栃木での日光方面と宇都宮方面、春日部での日光方面と伊勢崎方面、館林での赤城方面と葛生方面、といった候補もあります。
また、500系は3両編成が基本ですから、ホーム有効長の短い野岩鉄道や会津鉄道に乗り入れられます。たとえば6両編成の「きぬ」を鬼怒川温泉で分割し、一部車両だけ野岩線に乗り入れる、といったこともできます。
現実的に考えた場合、現在の「きぬ」と「けごん」を併結運転し、下今市で分割・併合する運用が想定されているのは間違いないでしょう。新栃木での「しもつけ」と「きぬ」「けごん」分割・併合も可能性が高そうです。
地下鉄直通はあるか
先頭車両に貫通扉がついていることから、「地下鉄直通もあるのでは?」と期待してしまいます。小田急MSEのように地下鉄に乗り入れて、さらには東急にも入り込み、「中央林間~鬼怒川温泉」なんて特急を妄想してしまいそうです。
しかし、500系の車体幅は2,870mmです。半蔵門線直通用50050系の車体幅は2,770mmですので、500系は半蔵門線に乗り入れることはできなさそうです。
一方、日比谷線直通用20000系の車体幅は2874mmとなっていて、500系とほぼ同じです。日比谷線は、現在全車両の車体長を20m化する事業を行っていて、2019年までに通勤車両は全て20m車7連になります。これに関連し、トンネル内のカーブが20m車でも曲がれるように改造されます。ただ、500系がこのトンネル改造後に通れるようになるのかは、定かではありません。
100系よりシートピッチは狭い
500系の特徴として、シートピッチが1,000mmである点もあげられます。100系は1,100 mmで「グリーン車並み」と言われたものですが、500系は200系の985mmに近く、「普通車レベル」といえそうです。
100mm、つまり10cmの差は結構大きいので、客室の「格」としては、500系は100系よりも劣る、ということになります。
カジュアルで機動力のある特急車両に
総合的にみてみると、500系は、豪華さが売り物の100系スペーシアの後継車両ではなく、カジュアルで機動力のある新しいコンセプトの特急車両といえそうです。そのため、これまでの特急系統とは異なる、新しい列車が誕生するのかもしれません。
東武は「スカイツリートレイン」で、野岩線・会津線直通の浅草~会津田島の特急を運行したり、大宮発着の特急を設定したりしています。「スカイツリートレイン」が実験的な列車だとすれば、500系投入を見据え、これらの路線での特急の需要を探ってきたのかもしれません。
であれば、500系の投入後、野岩線直通や大宮発着の特急が増えることもありそうです。「きぬ」「けごん」の併結運転にも利用されるでしょうが、それ以外でどんな列車に使われるのか、注目したいところです。