旧国鉄・JRの天北線の代替バスのうち、中頓別~音威子府間の廃止が提案されていることがわかりました。北海道新聞が報じています。かわりに乗合タクシーを運行する計画です。移管時期は2016年4月以降になる見通しです。
転換バスの利用者が減少
旧天北線は音威子府から中頓別、浜頓別、鬼志別を経て南稚内に至る148.9kmの路線でした。国鉄再建法により第二次地方交通線に指定され、JR化後の1989年5月1日に廃止されています。廃止後はバス転換され、宗谷バスが代替バスを運行してきました。代替バスの路線名は「天北線」でしたが、2011年に稚内~鬼志別間の路線を宗谷岬廻りに変更し、現在は「天北宗谷岬線」としています。
バス転換後の天北線利用者は年々減少しており、天北線地域公共交通会議の資料によりますと、2000年の転換バス利用者は年間26万人でしたが、2012年には15万8000人にまで落ち込んでいます。
音威子府~浜頓別間をタクシー転換
天北線転換バスは運行当初から赤字路線で、転換交付金をもとに積んだ基金を取り崩し赤字補填をしながら運営しています。しかし、基金も先が見えてきており、「基金があるうちに抜本的な見直しを行うことが必要」として、天北線地域公共交通会議において、将来にわたる持続可能な公共交通体系の構築をめざした生活交通ネットワーク計画の策定を検討してきました。
これによって合理化案が策定され、その骨子は、音威子府~中頓別間の天北線バスの運行を廃止するというものになるようです。天北線バスでは、浜頓別~鬼志別~稚内は1日7往復が運行されていますが、音威子府~中頓別~浜頓別間は、4往復にすぎません。浜頓別方面から音威子府を経てJRに乗り換える乗客が少ないため、この区間の廃止が打ち出されたとみられます。
音威子府~中頓別のバスを廃止する一方、新たに音威子府~中頓別~浜頓別に乗合タクシーを運行します。「バス転換」ならぬ「タクシー転換」するわけです。これにより、中頓別、浜頓別両町から音威子府までの交通機関を維持し、JR利用時の利便性を確保する、という考え方です。
路線長200km超の乗合タクシー
ただ、この案だと鬼志別(猿払村)から音威子府へは浜頓別で乗り換えになります。そのため、猿払村から「不便」との指摘が出て、乗合タクシーの運行区間を音威子府~鬼志別まで延長することも検討されています。
ところが、そうなると乗合タクシーの運行区間が200kmを超え、運転手の確保が難しくなるという問題が生じるようです。1人の乗務員が1日1往復を運転するとしても、1日400kmもの距離になります。それが法的に可能なのかはわかりませんが、可能だとしても、毎日400km運転するとなると、運転手を集めるのは確かに大変そうです。
実施目標は2015年10月でしたが、こうした異論を受けて、2016年4月以降になる見通しのようです。
長距離バスは運行
札幌、旭川から天北方面へは「天北号」(旭川~浜頓別~鬼志別)や「えさし号」(札幌・旭川~小頓別~枝幸)といった長距離バスが運行されています。そのため、音威子府~中頓別間の天北線代替バスが廃止されても、同区間でバスの運行がなくなるわけではありません。
また、乗合タクシーが運行されれば、音威子府~浜頓別間の所要時間は現在の天北線代替バスよりも短縮される見込みで、地域住民の利便性が著しく失われるというわけでもないようです。
利便性は維持されるが
この乗合タクシーは「市町村運営有償運送」として計画されています。この運送方式の場合、地元自治体にとっては、赤字補填額の8割が特別交付税の算定対象になるというメリットがあるそうです。市町村運営有償運送の利用対象は住民やその親族、関係者とされていますが、利用時に会員登録は不要ですので、空席があれば旅行者も利用できるとみられます。
乗合タクシーがどのくらいの大きさの車両を使うのかはわかりませんが、10人乗り程度のワゴンタクシーを使うのならば、コミュニティバスに近い形になるかもしれません。その場合、運転本数などに違いがなければ、これまでより利便性が大きく落ちることはなさそうです。詳細が明らかになるまではわかりませんが。
旧国鉄の特定地方交通線転換バスの廃止は、すでに湧網線などで現実になっています。今後、人口減少にともなって、各地でこうした動きが出てくるのかもしれません。特定地方交通線の選定から30年以上を経て、いよいよ転換バスも瀬戸際に立ってきた、ということなのでしょうか。