JR西日本のローカル線の輸送密度が少なすぎる件。北陸エリア「飛び地」路線より中国山地が心配

もうすぐ北陸新幹線開業ですが、気になるのは、北陸本線の第三セクター移管に伴って誕生する「飛び地」のローカル線です。これらの輸送密度はどのくらいのなのだろうか、と調べてみました。

最近のJR西日本は全路線の区間別平均通過人員を発表しています。「データで見るJR西日本2014」という資料で、ウェブで誰でも閲覧できます。平均通過人員とは、いわゆる輸送密度です。

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「飛び地」各路線の輸送密度

まず、北陸新幹線開業にともなって「飛び地」となる在来線各路線の1kmあたり平均通過人員を見てみましょう。データは2013年度のものです。
(単位:人/日)

七尾線・津幡~和倉温泉(59.5km)4,294
城端線・高岡~城端(29.9km)2,628
氷見線・高岡~氷見(16.5km)2,536
高山線・猪谷~富山(36.6km)1,868
大糸線・南小谷~糸魚川(35.3km)130

大糸線の南小谷~糸魚川間がぶっちぎりです。ただし、2013年の大糸線は土砂災害による長期運休がありましたので、その点は考慮する必要はあるかもしれません。

大糸線南小谷

大糸線・信濃大町~南小谷は752

ちなみに、JR東日本の資料によりますと、同じ大糸線でも松本~信濃大町は6,048、信濃大町~南小谷は752ですので、末端に行くにつれ急激に利用者が減っていることが裏付けられています。非電化区間の南小谷~糸魚川間の存廃問題ばかりを耳にしますが、冷静にみてみれば、信濃大町~南小谷もかなり少ない利用者数です。

それに比べると、七尾線は国鉄時代の特定地方交通線にも指定されないレベルで、まずまずの利用者数。城端線、氷見線、高山線は特定地方交通線レベルですが、最近のローカル線の輸送密度としては、各地でよくある水準です。

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最低は芸備線の「8」

ところで、「データで見るJR西日本2014」をみてみると、もっと危ない区間があります。発表されている数字のなかで、平均通過人員の最低は芸備線・東城~備後落合で8。「8」です。うーむ、これはなかなかですな。

この区間は1日3往復しか運転されていない超過疎区間ですが、いくら3往復でももう少し乗って欲しいところです。

平均通過人員「低い順」ランキング

以下、公表されているJR西日本各線の1kmあたり平均通過人員を低い順に並べてみましょう。500人/日までをランキングにしてみました。
(単位:人/日)

1位 芸備線・東城~備後落合(25.8km)8
2位 三江線・三次~江津(108.1km)44
3位 大糸線・南小谷~糸魚川(35.3m)130
4位 因美線・東津山~智頭(31.9km)185
5位 芸備線・備後落合~三次(45.7km)197
6位 福塩線・府中~塩町(54.4km)211
7位 木次線・備後落合~宍道(81.9km)245
8位 山陰本線・益田~長門市(85.1km)290
9位 姫新線・中国勝山~新見(34.3km)290
10位 山口線・津和野~益田(31.0km)393
11位 小野田線・小野田~居能など(13.9km)431
12位 山口線・宮野~津和野(47.4km)465
13位 山陰本線・長門市~小串 長門市~仙崎(52.8km)465
14位 越美北線・越前花堂~九頭竜湖(52.5km)493

ちなみに、最高は東海道線・大阪~神戸の391,030でした。

備後落合駅

中国山地のローカル線は大不振

2013年は、中国地方で豪雨被害が相次ぎ、三江線、山口線、山陰本線で長期の不通区間が発生しています。その影響も数字に出ているとみられます。また、こういう統計は、区間をどこで分断してピックアップするかで数字が変わります。そのため、一概に数字だけで判断するわけにはいきません。

とはいうものの、やはり中国山地エリアのローカル線の不振が目に付きます。このエリアのローカル線の輸送量が少ないとは想像していましたが、それにしても輸送密度300以下のオン・パレードには驚かされます。輸送密度500人以下は、鉄道よりバスのほうが輸送適性があると言われても仕方のない数字です。

都市部と山岳部に大きな落差

同じ芸備線でも、三次~狩留家は1,569、狩留家~広島は9,168と、都市近郊はそれなりの数字を残しています。「盲腸線ではなく、つながっているネットワークが大事」という意見もありますが、都市部と山岳部でこれだけの差があると、ネットワークを分断して盲腸線になってでも都市部だけ残す、という選択もあり得るのではないか、と考えざるをえません。

要するに、北陸本線の「飛び地」ローカル線よりも、中国地方の山岳ローカル線の心配をしたほうがよさそうです。

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