「立山砂防工事専用軌道」体験乗車の受付がスタート。38段スイッチバックの「トロッコ列車」に乗れる!

立山砂防工事専用軌道のトロッコ列車体験乗車の2014年度の受付開始が、5月23日と決まりました。

立山砂防工事専用軌道は、日本最大の38段スイッチバックで知られた山岳路線です。文字通り砂防工事の専用路線で、一般には未公開の「幻の鉄道」ですが、夏のシーズンに限って、「見学会」の体裁で一般人の乗車を受け入れています。今年もその概要が発表されました。

広告

非鉄道事業者の鉄道で最長距離

立山砂防工事専用軌道(以下、立山砂防軌道)は、富山地方鉄道立山駅近くの千寿ヶ原を起点とし、水谷までの約18キロを結んでいます。軌間は610ミリの軽便鉄道です。1927年に一部開通し、水谷まで開通したのが1965年のことです。

日本には、「時刻表にない鉄道」が数多くありますが、立山砂防軌道は、一般人が乗車できる非鉄道事業者の鉄道としては日本最長の距離を誇ります(参考:「時刻表にない鉄道データベース」)。しかも、その間にスイッチバックが38カ所もあり、これももちろん日本最多。というよりも、これほどの数のスイッチバックを有する鉄道は世界的にも類例がないようです。

立山砂防軌道トロッコ列車

立山砂防軌道のトロッコ列車に一般人が乗れるようになったのは、1984年のことです。当時は富山県民に限って乗車が可能でした。1998年に立山カルデラ砂防博物館が開館してからは、博物館の主催で見学会が定期的に開催されるようになり、今では誰でも乗車可能になっています。見学会は鉄道ファンには高い人気があり、そのため参加希望者は多く、申込者を対象に抽選が行われます。時期にもよりますが、倍率は2倍~7倍にものぼるようで、なかなかの狭き門です。

この見学会は、正式には「立山カルデラ砂防体験学習会」といいます。「砂防」を学習するのが目的の会で、専用軌道乗車は学習の一環、という体裁をとっています。が、現実にはこの「幻の鉄道」に乗れるのが学習会の目玉になっています。実際、トロッコ乗車がなければ、「砂防」を学ぶために立山まで出かける人は少ないですよね。

広告

立山カルデラ砂防体験学習会のコース

「立山カルデラ砂防体験学習会」にはいくつかのコースが設定されています。このうち、個人が参加できてトロッコ列車に乗れるのは、「トロッコ個人コース」です。2014年度は、7月2日から10月15日までの約3ヶ月半の間に、14日間が設定されました。設定日はいずれも水曜日です。平日ど真ん中なので参加しにくいですが、受け入れ側の作業との兼ね合いの事情があるようです。

当日の見学コースは「1班」と「2班」にわかれ、「1班」が最初にトロッコ乗車して山に入ります。「2班」は最初にバスに乗り山に入り、下山するときにトロッコに乗ります。鉄道ファンの人気は「1班」ですが、選ぶことはできません。「1班」の場合の見学ルートは、以下のようになります。

①トロッコ乗車
常願寺川の各砂防堰堤を軌道沿線から見学。途中、樺平の18段連続スイッチバックで標高差200mを30分かけて登るのがハイライト
②水谷下車
水谷平はカルデラ内の工事関係者や水谷出張所職員約250人が生活している最前線基地。
③白岩砂防堰堤見学
1939年に完成したカルデラの出口にある基幹砂防堰堤。
④六九谷展望台見学
カルデラ内部や崩壊跡、その崩落土でできた多枝原平の台地が一望できる展望地。
⑤多枝原平展望台
土石流の流れを規制する分散導流提がある地点。
⑥立山温泉跡地
かつて温泉旅館があった場所。廃屋跡あり。
⑦湯川12号砂防堰堤
平成21年に完成した湯川本川上流部の堰堤。
⑧跡津川断層露頭
安政の大地震を引き起こしたA級活断層の露頭。国の天然記念物。

「堰堤」とか「断層」とか、文字にするといかめしい見学地が並びますが、見てみると結構面白いです。「トロッコ以外は時間のムダ」と思って参加する人も多いですが、参加してみると「面白かった」という感想になるようです。

集合は「1班」が8時30分、「2班」が9時10分、解散は「1班」が16時30分、「2班」が17時です。立山カルデラ砂防博物館は、富山地方鉄道の立山駅近くにありますので、参加するにはその近くか、富山市内に泊まる必要があります。

立山砂防軌道トロッコ列車

トロッコ列車の申込方法

さて、トロッコ列車に乗れる「立山カルデラ砂防体験学習会」の申込方法は、はがきかウェブサイトからの応募です。今年の受付開始は、5月23日です。この「見学会」の申込みの特徴は、受付開始から受付締切までの期間がきわめて短い、ということにあります。たとえば、5月23日に受付開始される7月2日の見学会の受付締切は5月28日。わずか6日間しかありません。昨日紹介した「黒部ルート」よりも受付期間は圧倒的に短いのに、倍率は高いのです。とくに、紅葉の美しい秋の回の倍率はきわめて高くなります。

しかも、せっかく当たっても、悪天候では見学会は中止されます。悪天候の基準は「前日昼の天気予報で降水確率50%以上」という、かなり厳しい設定になっています。そのため実施率は60~70%程度。とくに、梅雨の時期の7月上旬の実施率は悪いようです。筆者も、せっかく富山まで出かけたのに、雨天中止になってしまったことがありました。

この見学会も、北陸新幹線開業後はさらなる倍率の上昇が予想されます。今年はその意味で、低倍率で参加しやすい最後のチャンスです。とくに、年間の受付開始直後の7月の回は、比較的低倍率ですので、「乗ってみたい」と思っている方は、お早めの応募をおすすめします。

時刻表に載っていない鉄道に乗りにいく

広告
前の記事黒部峡谷鉄道の未公開区間「上部軌道」に乗れる! 「黒部ルート見学会」は2014年が最後の低倍率か?
次の記事JR北海道の国鉄型「赤電」711系が引退へ。代替に新型733系を投入、快速「エアポート」はロングシートに。