相鉄「新たな相互直通乗り入れ先」はどこ? 中期経営計画で検討表明

東京駅に乗り入れる?

相模鉄道が「新たな相互直通乗り入れ先の検討・具体化」を新たな中期経営計画で掲げました。2022年度下期の東急直通を見据えたものとみられますが、どこを想定しているのでしょうか。

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第6次中期経営計画

相模鉄道は、2030年を目標年度とする「長期ビジョン」と、2024年度を目標とする「第6次中期経営計画」を策定し、公表しました。

中期経営計画では、2022年度下期に開始する東急との相互直通運転に関連する事業と、ホテルや住宅など不動産業を基軸に据え、構造改革と収益力向上を目指します。2024年度の売上高の計画を2936億円とし、コロナ禍前(2018年度)に比べ13%増に設定しました。

鉄道ファンの注目を集めたのが、「新たな相互直通乗り入れ先の検討・具体化」という一文。「選ばれる沿線の創造」の一項目として記されているのですが、これまでに公表されていない新たな直通先の検討をうかがわせる表現です。どこを想定しているのか考えてみましょう。

相鉄中期経営計画
画像:相鉄グループ「長期ビジョン”Vision2030”」及び「第6次中期経営計画(2022年度~2024年度)」より

東急線直通を見据え

相鉄は2019年にJRとの相互直通運転を開始し、新宿への乗り入れを実現しました。2022年度下期には東急との相互直通運転を予定していて、東横線と目黒線に乗り入れることが示されています。東急線には朝ラッシュ時に毎時10~14本程度、その他の時間帯に4~6本程度を運行する予定です。

「新たな相互直通乗り入れ先の検討・具体化」は、素直に考えれば、この東急線直通運転を見据えたものとみられます。

相鉄中期経営計画
画像:相鉄グループ「長期ビジョン”Vision2030”」及び「第6次中期経営計画(2022年度~2024年度)」より
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東武東上線、西武池袋線?

現時点で正式発表されていない乗り入れ先の候補としては、東急東横線系統としてはメトロ副都心線・有楽町線、東武東上線、西武池袋線。東急目黒線系統としてはメトロ南北線、都営三田線、埼玉高速鉄道でしょうか。これらの路線が「新たな相互直通乗り入れ先」の検討対象とみられます。

これまでに明らかになった車両動向などから、東急東横線、メトロ副都心線・有楽町線、東急目黒線、メトロ南北線、都営三田線へ乗り入れることは、ほぼ確実でしょう。

ただ、「どの駅まで乗り入れるか」は未公表です。メトロ副都心線・有楽町線への直通の可能性は高いですが、その先、東武東上線、西武池袋線にまで乗り入れるのかは一つのポイントです。「新たな相互直通乗り入れ先」の検討対象になり得るでしょう。

相鉄12000系

東京駅直通は?

もう一つの注目点は、JR直通線です。2019年に開業したJR直通線は、運行本数が少ないこともあってか利用状況は芳しくありません。2020年度のJR直通線の利用者数は1日21,000人、計画の4割程度にとどまりました。新型コロナの影響を差し引いても低い数字です。

JR相鉄線利用状況
画像:相鉄ホールディングス株式会社
2021年3月期決算説明会資料より

2022年度に東急東横線への直通列車が運行を開始すれば、JR直通線と方向が重なります。そのため、JR直通線の利用客の大幅増は、今後も見込みにくいでしょう。

となると、検討の期待が高まるのが、JR東京駅方面への乗り入れです。JR直通線は横須賀線を走りますので、品川を経て東京駅へ乗り入れることは物理的に可能です。相鉄沿線から品川や東京駅周辺への通勤客は多いでしょうから、「新たな相互直通乗り入れ先」として東京駅直通を期待する人は多そうです。

とはいえ、JR横須賀線の車両は最短11両編成ですので、最大10両対応の相鉄線には入れません。JR相鉄直通線が東京駅へ相互乗り入れをするなら、JR側も相鉄乗り入れ用の10両編成の車両を用意して東京駅発着で運用することになりますが、そこまでするのか、という疑問も浮かびます。

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東京駅直通の条件は?

もともと、JR東日本は、相鉄直通線の東京駅乗り入れに後ろ向きでした。開業前に、横浜市が東京駅乗り入れを要望したところ、「接続する横須賀線等の運行が高頻度で、設備上、多方面へ向かう運行本数の確保が困難であることから、開業時は新宿方面への運行を基本にしている」と回答しました(2018年12月横浜市議会・林文子市長答弁より)。

一方で、JR東日本は、2020年度に神奈川県鉄道輸送力増強促進会議から提出された要望に対し、「現時点では新宿方面以外への運行の予定はございませんが、開業後のご利用状況を見極めてまいります」と回答し、利用状況によっては東京駅方面への乗り入れを検討することを示唆しています。

要は、東京駅直通は「設備の問題」で困難だが、「利用状況」によっては検討するということです。

減便ダイヤ改正で

JR東日本は2022年3月に、減便・減車を含む大規模なダイヤ改正を実施することを明らかにしています。運転本数が少ないJR相鉄線直通列車を減便するとは考えにくいですが、横須賀線の減便はあり得る話です。

横須賀線が減便すれば、東京駅方面へのスジが空くので、相鉄線直通列車が入る余地ができます。「設備の問題」が解消し、新宿直通の「利用状況」の低さを勘案すれば、東京駅直通の可能性が出てきた、という理屈も成り立つでしょう。

JR東日本の深澤社長は、日本経済新聞のインタビュー(2021年11月27日付)で、新型コロナ後の旅客需要は「よくて9割」と見込んでいることを明らかにしました。ならば、JR側が新たな収益源として相鉄直通線に目を付けても不思議はなく、東京駅直通列車を検討する余地が出てくるかもしれません。

とはいえ、JR相鉄直通線全体の運行本数を増やさないなら、新宿・東京両方面へ運行すると、それぞれの方面の運行本数が限られてしまい、実用性に難が生じます。JRが全体に減便ダイヤを目指す中で、JR相鉄直通線の総本数を増やさないのであれば、やはり東京駅直通は当面難しそうです。

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小田急、相模線乗り入れは?

全く将来的な話で「新たな相互直通乗り入れ先」として、小田急線やJR相模線への乗り入れを求める声もあります。

これに関して、相鉄は否定的です。2020年度の神奈川県鉄道輸送力増強促進会議でも、相鉄の小田急乗り入れの要望は出されましたが、相鉄は「当社車両が小田急線に乗り入れるためには、信号保安設備、車両設備及び駅設備等の改修を行うために大規模かつ多額の設備投資と両社における運行ダイヤの調整が必要であり、現段階での乗入れは困難であると判断しております」と回答しました。

JR相模線乗り入れに関しても、「相模線が単線構造であるため、運行面で大きな課題があるとともに、編成両数をはじめ車両設備や駅設備等について乖離が大きい」としたうえで、「新規の輸送需要の発生が見込めない」ことから、「現状においては、事業採算性が確保できない」とより強い調子で否定しています。

そもそも、今回、「新たな相互直通乗り入れ先の検討・具体化」の記述がなされたのは3年間の中期経営計画です。今後3年間で、小田急や相模線乗り入れは「検討」できるかもしれませんが、「具体化」は無理でしょう。

あれこれ書いてきましたが、3年間の中期経営計画における「新たな相互直通乗り入れ先」は、やはり東急線とつながっている系統を指すのでしょう。多彩な直通先で、相鉄線がより使いやすく、魅力ある路線になることを期待しましょう。(鎌倉淳)

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