ヴァル研究所が、高速バスの座席予約システム「Sokko-bus(ソッコーバス)」の提供を開始します。新路線の東京駅~流山おおたかの森・柏の葉キャンパス線に導入されますが、どのようなシステムなのでしょうか。
高速バスの課題
高速バスを途中停留所から利用する場合、心配なのは満席です。高速バスは定員制なので、満席の場合、乗ることができません。全席予約制のバスなら座席の不安はありませんが、事前決済となると利用のハードルが高まります。
乗車時決済の予約制にすると利用者には便利ですが、予約したけれど乗車しない客(ノーショー)が出てきてしまいます。その結果として乗車率が下がり、経営上の問題になります。
ソッコーバスは、こうした高速バスの課題を解決する仕組みです。利用者は事前支払いなしにバスを予約し、乗車時に決済できます。バス会社側は、予定のバス停で予約客が乗車しなかった場合には、別の予約を受けられます。これにより、座席の販売ロスを低減します。
さらに、予約しないで乗車した客も含めて、車内の乗車状況をスマホアプリでリアルタイムに表示することが可能です。「予約で座席が埋まっているか」というだけでなく「予約と予約なしの客で、座席がどの程度埋まっているか」が事前にわかるわけです。
スマホアプリを利用
利用者から見たスマホアプリの予約画面は以下のようになっています。
運行便を検索し予約したうえで、乗車時にスマホの予約画面を乗務員に提示。提示後、「乗車する」ボタンを利用者が押します。
システムの詳細は明らかではありませんが、「乗車する」ボタンを押さなかった場合、「ノーショー」とみなされて、予約が取り消されて再販売に回されるようです。
予約から乗車確認までの一連のプロセスに利用者のスマートフォンを活用することで、バス車両内に新たなIT機器を積み込む必要がなく、容易に導入・運用開始が可能というのが、ソッコーバスの特徴です。
流山路線に投入
ソッコーバスの最初の導入先は、京成バス、JRバス関東、東武バスセントラルの3社が2021年10月1日から運行を開始する 『東京駅~流山おおたかの森・柏の葉キャンパス線』です。
この路線は、1日17便(東京発8便、柏の葉発9便)が設定され、先着順座席定員制です。東京駅~流山市内間に途中停留所はありません。
ソッコーバスが導入されるのは東京駅行きのみです。東京駅発は先着順にきっぷを買って乗車するという、昔ながらの仕組みです。途中停留所から乗車する客が多い東京行きで、ソッコーバスが使えます。
東京駅発も予約できたほうが便利ではないか、という気もしますが、とりあえずはお試しの部分もあるのでしょう。
利用者にもバス会社にメリット
東名高速や中央高速などには頻繁に高速バスが走っていて、予約なしでも利用できます。しかし、何もない高速道路の途中停留所で、予約なしで待つのは不安があるものです。ソッコーバスが導入されれば、そうした不安は解消されるでしょうし、座席予約も気楽にできるようになります。
一方で、ノーショーを再販売できるとはいえ、無料で予約ができることが、利用者の過度な座席確保を誘発しないか、という疑問もあります。そうした懸念は当然想定しているでしょうから、導入後、様子を見ながら改善していくのでしょう。
利用者にも、バス会社にもメリットがあり、導入負担の小さいシステム。うまくいけば、他の高速バス路線に広がるかもしれません。(鎌倉淳)