「新仙岩トンネル」で秋田新幹線はこう変わる! 東京~秋田3時間へ

盛岡~秋田を7分短縮

秋田新幹線の「新仙岩トンネル」構想が動き出します。実現すれば、東京~秋田間が3時間で結ばれそうです。

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奥羽山脈の分水嶺

「新仙岩トンネル」は、秋田新幹線(田沢湖線)の赤渕~田沢湖間で建設が構想されている新トンネルです。

この区間には、奥羽山脈の分水嶺として仙岩峠があり、同線は現在、全長3.9kmの仙岩トンネルでこれを越えています。

秋田新幹線の最高速度は130km/hですが、仙岩トンネルを含む赤渕~田沢湖間は急曲線が多く、60-80km/h程度に抑えられています。さらに、この区間は雪、雨、強風などの自然災害の影響を受けやすく、遅延、運休が生じやすくなっています。

新仙岩トンネル
画像:「秋田新幹線の線区改善に関する一考察」より

そして、この区間には、築50年の橋梁が集中しており、架け替えの必要に迫られています。ところが、急曲線が連続するため、架替時に仮線を作るなどの配線変更が困難で、更新施工時には秋田新幹線の長期運休や、莫大な工事費、工期が必要になります。

こうした課題を一気に解決するのが、赤渕~田沢湖間に長大トンネルを掘削するという、「新仙岩トンネル」構想です。実現すれば、同区間は長大トンネルを含む新ルートに切り替わります。

新仙岩トンネル
画像:秋田県
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7分短縮

「新仙岩トンネル」構想は少し前からあり、2009年には、JR東日本東北工事事務所が、「秋田新幹線の線区改善に関する一考察」という論文を土木学会に発表しました。

それによりますと、トンネルルートとして3案を検討し、このうち12.4kmのトンネルを含む全長14.964mの案を選定しています。下図の「案3」です。

新仙岩トンネル
画像:「秋田新幹線の線区改善に関する一考察」より

赤渕~田沢湖間は18.1kmありますが、新トンネルにより同区間が3kmほど短くなり、大半がトンネル区間になります。トンネルは単線ですが、ほぼ中央に全長約200mの交換設備を設置。E6系7両編成がすれ違えるようにします。

新仙岩トンネル
画像:「秋田新幹線の線区改善に関する一考察」より

トンネルを含む新線区間の最高速度は160km/hに引き上げます。これにより、秋田新幹線の所要時間が盛岡~秋田間で約7分短縮すると見込みます。

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東京~秋田3時間

この「考察」の公表後、JR東日本は2015年5月にボーリングなどの現地調査に着手。2017年11月に、秋田県にトンネル構想を説明しています。これを受け、秋田県とJR東日本が協力し、新仙岩トンネル整備計画の実現に向けて、国による予算措置を求める要望などをおこなってきました。

2019年1月には、佐竹敬久秋田県知事が、東京~秋田間の新幹線での所要時間を3時間まで短縮できるとの考えを、JR側から示されたと明かしました。これは東北新幹線の360km/h運転を前提に、新トンネルを建設した場合の試算で、現状の最短3時間37分から、約30分も短縮します。

こうした経緯を経て、2021年7月26日、JR東日本と秋田県は「新仙岩トンネル」を建設するための覚書を締結。新仙岩トンネルの早期実現で合意するとともに、今後は、事業スキームの確定や、事業化のための調査・検討、財政的な支援を得るための国への働きかけなどを、共同で実施していきます。

在来線への影響

「新仙岩トンネル」について、現時点で公表されている概要は、事業区間が赤渕~田沢湖間の15kmであり、着工から11年の工期を見込み、事業費は約700億円ということだけです。

ルートなど詳細は公表されていませんが、事業区間の距離は、上記の「考察」とほぼ同じであることから、これをベースにしているのは間違いなさそうです。

秋田新幹線はミニ新幹線で、田沢湖線の普通列車と線路を共用しています。新トンネルができた場合の田沢湖線への影響ですが、赤渕~田沢湖間に在来線の駅はありませんので、「新仙岩トンネル」による駅の廃止はありません。

この区間は岩手・秋田の県境にあることから、もともと普通列車の運転本数は少なく、定期列車は4往復のみです。新トンネル開通によって、普通列車も時間短縮が実現しますので、地元の利用者にもメリットがあります。

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ミニ新幹線に匹敵

上述したとおり、「新仙岩トンネル」は、老朽化施設の更新が関係しているため、JR東日本には推進する強い動機があります。東京への時間距離が短縮されるため、秋田県にもメリットがあります。JRと秋田県の思惑が一致するので、早期に事業化される可能性は高そうです。

気になるのは、覚書に岩手県が加わっていないことでしょうか。「新仙岩トンネル」は、岩手・秋田県境に建設されるため、岩手県も関係自治体です。しかし、岩手県としては、巨費を投じてまでトンネルを掘るメリットに乏しく、資金負担には後ろ向きと思われます。

約700億円の事業費は、地方の鉄道路線への投資としては高額です。時代が違うとはいえ、秋田新幹線建設時の直接工事費が598億円ですので、ミニ新幹線を新規に建設するのと同じくらいの大事業となるわけです。

開業時期は?

新トンネルを作るのは確実として、国、自治体、JRの費用分担をどうするかが、今後の大きなポイントになります。

覚書締結時に、JR東日本は700億円のうち6割(約420億円)までを負担する意向を示しています。鉄道新線の事業者負担と考えれば異例の負担率の高さですが、老朽化した設備の更新費用を考えれば見合うのでしょう。

JR東日本としては、「幹線鉄道等活性化事業費補助」の活用を想定しているとみられます。この補助金では、国と地方自治体がそれぞれ2割を上限に補助ができます。残り6割をJRが負担するという枠組みです。自治体負担分について、秋田県と岩手県がどう負担するのかは、今後の協議になるでしょう。

気になる開業時期ですが、今後、事業スキームを速やかにまとめ上げたとして、環境アセス手続きを含めると、少なくとも15年程度はかかりそう。となると、「新仙岩トンネル」の開通は、早くても2030年代後半になりそうです。(鎌倉淳)

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