東京都が計画する都心部・臨海地域地下鉄で、新駅に有事の避難施設(シェルター)を設ける方向性が示されました。政府が2026年3月に決定した新方針を踏まえたもので、地下鉄駅を有事の際に身を守る場所として活用します。国の補助制度を活用して、建設費をまかなう狙いもありそうです。
地下駅をシェルターに
都心部・臨海地域地下鉄(臨海地下鉄)は、東京駅周辺と有明・東京ビッグサイト周辺を結ぶ地下鉄新線です。全部で7つの駅が設置される予定ですが、これらの駅の地下空間を、有事の際に身を守る避難施設(シェルター)として活用する方向性が示されました。
東京都が公表した「都心部・臨海地域地下鉄構想 駅とまちとの連携に関する検討の場」の第6回議事概要によりますと、地下鉄の建設によって生まれる「余白空間」について、避難施設としての機能を持たせることを前提に、検討を進めることを確認しました。
これは、政府が2026年3月31日に閣議決定した「緊急事態を想定した避難施設(シェルター)の確保に関する基本方針」を踏まえたものです。

政府が新方針を決定
政府の基本方針は、ミサイル攻撃などの緊急事態に備え、全国でシェルターを増やしていくものです。自然災害時の避難施設としても使えるデュアルユースができるように整備を進めます。
政府はこれまでも、地下施設や頑丈な建物を「緊急一時避難施設」に指定してきました。こうした施設の収容人数は全国人口の150%を超えています。ただ、学校や公民館など地上施設が多く、有事の際に安全性の高い地下施設に限ると5%超にとどまっています。
そこで政府は、基本方針で、主要駅や大規模な建物を新しく造る場合、地下空間をシェルターとして活用することを重視する姿勢を鮮明にしました。地下駅や地下街などでは、数時間から数日程度の避難にも対応できるよう、設備を充実させることを目指します。
具体的には、避難スペースや備蓄倉庫、電気設備を確保し、簡易トイレや簡易ベッドなどを備えることを想定しています。平常時には会議室や交流スペースなどとして使い、災害などを含む緊急時には避難場所に切り替えます。
国の補助制度も活用か
シェルターの整備には、国の補助金を活用できる可能性があります。
政府の基本方針では、シェルターの整備にあたり、防災・減災や国土強靱化に関する既存の支援制度を最大限活用する方針を示しています。つまり、災害を含む緊急事態を想定したシェルターの整備に、自然災害対策などの補助制度を活用できることになります。
たとえば、国の「災害時拠点強靱化緊急促進事業」は、地震などで帰宅できなくなった人を一時的に受け入れる施設の整備を支援する制度です。避難スペースや備蓄倉庫、関連設備などが補助対象となり、条件を満たせば国や自治体から補助を受けられます。
実際に、こうした制度を活用するかどうかは未定ですが、臨海地下鉄の新駅にシェルター機能を付加して整備すれば、国のさまざまな支援制度を活用できる可能性があります。
臨海地下鉄への影響
2022年に東京都が公表した臨海地下鉄の計画案では、全長約6.1km、7駅を設け、2040年代前半の開業を目指しています。概算事業費は約4,200億~5,100億円に上ります。
東京都は、建設費の一部を国などが負担する「地下高速鉄道整備事業費補助」または「都市鉄道利便増進事業費補助」の活用を想定しています。国の補助率は、前者が対象経費の35%、後者が原則3分の1です。
東京都の試算では、こうした補助制度の活用を前提に、累積資金収支が開業から30年以内に黒字転換すると見込んでいます。ただし、これは概算段階の試算で、近年の建設費高騰を十分に織り込んでいるとはいえません。東京都は事業性をさらに高める仕組みの検討も必要としています。
採算性向上の可能性
そこで注目されるのが、今回明らかになった、シェルター整備に対する国の支援というわけです。
地下鉄駅に避難施設を設け、従来の鉄道整備の補助金に加えて防災・国土強靱化関連の補助金も活用できれば、新線建設事業の初期費用を軽減し、採算性を向上できる可能性があります。
ただし、現時点で決まっていることはありません。
臨海地下鉄は、これから駅の構造を具体化する段階にあります。駅にどのような施設を設け、整備費をどのように分担するかが、今後の焦点となりそうです。(鎌倉淳)





















