JR東海が、東海道・山陽新幹線の次期車両「S0系」を発表しました。N700S以来のフルモデルチェンジで、2029年7月に営業運転を開始する予定です。グリーン車の刷新、自動運転、地震対策など、発表された新型車両の全容を詳しく紹介します。
新型「S0系」を発表
JR東海は、東海道・山陽新幹線の次期車両として、「S0系」を導入することを明らかにしました。N700S以来のフルモデルチェンジとなる新型車両で、2029年7月に営業運転を開始する予定です。
形式名の「S」は、Shinkansen(新幹線)とSupreme(スプリーム)に由来します。現行のN700系シリーズを超える革新的な車両として、東海道・山陽新幹線における新たな進化の基点を表す「0」を組み合わせ、「S0系」と名付けました。
S0系は、これまでの技術開発の成果を取り入れ、自動運転システム(GOA2)を搭載するほか、安全性、利便性、快適性、環境性能を高めます。
N700Sと同様に、さまざまな両数の編成を容易に構成できる「標準車両」として開発します。
先頭形状を一新
S0系では、車両の外観を一新します。
N700Sの先頭形状は「デュアル スプリーム ウィング形」と呼ばれています。S0系では、これをさらに発展させ、新たに開発した「ツイン リーメクス形」を採用します。
「リーメクス」は鳥の風切羽を意味します。風切羽は、鳥が飛行する際に空気の流れを受け、揚力などを生み出す翼の羽です。
S0系では、車体側面から先頭部に至る滑らかな面のねじれを、風切羽の形態になぞらえました。列車の先頭と後尾のどちらでも、空気の流れを制御する形状を表現しています。

グリーン車を刷新
S0系の客室設備の大きなトピックスは、グリーン車の刷新です。新たに「多機能アームレスト座席」と「パーティション座席」の2種類を設け、利用者の多様なニーズに対応します。
多機能アームレスト座席は、8号車と9号車に設置します。8号車は68席、9号車は64席です。
座席にはスマートフォンホルダー、ドリンクホルダーを設け、肘掛けに収納できる大型テーブルを装備します。移動中のパソコン作業や飲食などに使いやすい構造とします。

パーティション座席は10号車に設置します。座席間に大型の仕切りを設け、隣席からの視線を遮りやすくします。こちらも肘掛け収納式の大型テーブルを備えます。
10号車のパーティション座席は48席です。公表された車内配置図には、このほかに「スプリームクラス・キャビン」1席と「スプリームクラス・シート」6席も示されています。

パウダーコーナー新設
グリーン車では、9号車のデッキ部にパウダーコーナーを新設します。
移動中にも落ち着いて身だしなみを整えられる空間で、鏡や照明、カウンターなどを備えます。従来の洗面所とは別に、身だしなみを整えるための設備を設けることで、車内の利便性を高めます。

グリーン車では、無料Wi-Fiサービスも拡充します。
従来の7・8号車に加え、9・10号車にも「S Wi-Fi for Biz」を導入します。さらに、8~10号車には「5G対応透明ガラスアンテナ」を搭載します。
透明ガラスアンテナは、車体の窓ガラス部分に取り付けるもので、通信容量の拡大などにより、従来よりも安定した通信環境を実現します。

乗り心地を改善
乗り心地も改善します。
新幹線には、走行中の車体の揺れを抑える「フルアクティブダンパ」が搭載されています。S0系では、この制振制御を改良し、列車同士がすれ違う際の横方向の揺れを、現行車両と比較して約10%低減します。
改良の対象はグリーン車の8~10号車と、普通車の7号車です。
グリーン車の座席では、足元スペースも拡大します。
座席のリクライニング可能角度を調整するとともに、跳ね上げ式のフットレストを採用します。これにより、足元スペースをN700Sと比較して約140mm拡大し、後列の座席に座る乗客の圧迫感を軽減します。
リクライニング可能角度の調整は、普通車でも実施します。

荷物置場を拡張
普通車とグリーン車に共通する改良として、荷物置場を拡充します。
新幹線では、訪日外国人旅行者を含め、大型のスーツケースを持ち込む乗客が増加しています。S0系では、こうした需要に対応するため、デッキ部の荷物置場を現在の6箇所から9箇所に増やします。
新たに荷物置場を設けるのは3・7・15号車で、編成全体の収容能力を高めます。
さらに、客室内の荷棚も拡大します。
先頭車では、荷棚の高さと奥行きを広げることで、荷物を置けるスペースを約25%拡大します。中間車では奥行きを広げ、荷棚スペースを約5%増やします。
これにより、大型のスーツケースなども、従来より荷棚に収納しやすくなります。
トイレも広く
洗面所やトイレの設備も改善します。
女性専用トイレは、従来よりスペースを約25%拡大します。さらに、室内にベビーベッドを新設し、乳幼児を連れた乗客も利用しやすくします。
男性専用トイレは、従来の折り戸から引き戸に変更します。洗面所についても間口を拡大し、出入りしやすい構造にします。
これらの改良にあわせてデッキ部分のレイアウトを見直し、荷物置場と洗面・トイレ設備を配置します。なお、洗面所の間口拡大は一部の号車を除きます。

自動運転を導入
S0系のシステム上の大きな特徴が、自動運転システム「GOA2」の搭載です。
GOA2は、運転士が運転室に乗務する自動運転の方式です。S0系では、出発時にボタンを押すと、あらかじめ設定した計画速度に従って自動的に走行し、目的駅に定刻で到着して、所定の位置に停止します。
計画速度は、省エネルギー運転となるように設定します。効率的な加速操作や、モーターの駆動力を使わずに走行する「惰行」を活用し、消費電力を抑えながら運転します。
停車時には、列車を駅の所定位置に自動的に停止させる「TASC(定位置停止装置)」を使用します。TASCについては、すでに2026年9月から東海道新幹線の全営業列車で使用を開始しています。

遅延回復も自動化
S0系の自動運転には、列車の遅れを最小限に抑える機能も備えます。
運行中に急な徐行などが発生した場合、最新の運転情報を受信して計画速度を自動的に更新します。そのうえで、回復運転を行い、列車の遅延をできるだけ小さくします。
このために導入するのが、40GHz帯を利用する「ミリ波列車無線」です。従来の通信方式より高速・大容量の通信が可能で、ダイヤ情報や速度制限などを車両へ伝送します。
運行管理システム「コムトラック」からの運転情報を、ミリ波列車無線で車両に伝える仕組みは、2030年度末から使用を開始する予定です。

自動運転による効率的な走行や、効率の高い電気機器の搭載によって、省エネルギー性能も向上します。編成全体の消費電力量をN700Sと比較して約6%削減します。
地震時の停止を早期化
地震発生時の安全対策も強化します。
現行の新幹線では、地震を検知すると、地上設備を介して送電を停止し、列車のブレーキを作動させます。このため、地震検知からブレーキ開始まで2秒程度かかります。
S0系では、ミリ波列車無線を使って地震検知情報を車両へ直接伝送する「早期地震検知システム」を導入します。これにより、地震検知からブレーキ開始までの時間を0.2秒程度に短縮します。現行方式の約10分の1となります。
さらに、ブレーキ制御も改良します。時速285kmから地震時のブレーキを作動させた場合、停止までの距離をN700Sと比較して約5%短縮します。
地震情報の伝達を速めるとともに、ブレーキ性能を改善することで、地震発生時の列車停止を早期化します。
再生アルミを拡大
車体の素材にも環境負荷を減らす工夫を取り入れます。
N700Sでは、廃車となった新幹線車両などから回収したアルミ部材を再利用する「アルミ水平リサイクル」を進めています。2026年度以降に追加投入するN700Sでは、屋根や車体側面の一部に再生アルミ部材を使用します。車両の構体に占める割合は約14%です。
S0系では、この使用範囲を床や妻面の一部にも拡大します。
これにより、車両の構体における再生アルミ部材の使用割合を約20%に高めます。N700Sと比較すると、約6ポイントの増加です。
さらに、車体素材のほぼすべてをリサイクル可能なアルミ部材に統一します。廃車時に回収した素材を新たな車両に再利用する水平リサイクルを推進し、環境負荷を低減します。
2032年度までに25編成
S0系は、2028年8月に確認試験車を1編成投入し、各種試験を実施します。その後、2029年7月から営業運転を開始する予定です。
営業用車両の投入計画は以下の通りです。
・2029年度:8編成
・2030年度:7編成
・2031年度:7編成
・2032年度上期:3編成
合計:25編成
2032年度上期までに25編成を投入する計画です。2032年度下期以降の投入計画は未定です。
N700Sにも新機能
S0系で導入する新機能の一部は、既存のN700SやN700Aにも展開します。対象となる機能によって、改造する車両や実施時期が異なります。
まず、グリーン車の無料Wi-Fiサービスの拡充は、既存のN700Sを対象に2027年1月以降、順次実施します。8~10号車が対象ですが、8号車については「S Wi-Fi for Biz」をすでに導入しています。
2028年4月以降は、グリーン車の座席設備などの改造を始めます。
8・9号車の多機能アームレスト座席と、10号車のパーティション座席は、N700SとN700Aにも導入します。リクライニング可能角度の調整と跳ね上げ式フットレストの採用も、両形式が対象となります。
ただし、2031年3月までに廃車を予定しているN700Aは、これらの改造の対象外です。
9号車のパウダーコーナーと、フルアクティブダンパの制振制御の改良は、N700Sを対象に実施します。フルアクティブダンパの改良対象は7~10号車ですが、7号車についてはスプリームクラス・キャビンの設置状況によって対象が異なります。
一方、デッキ部の荷物置場拡大、荷棚スペースの拡大、洗面・トイレ設備の刷新については、既存車両への改造を予定していません。
自動運転も既存車へ
自動運転システムと地震対策についても、既存車両に新機能を追加します。
自動運転システム(GOA2)は、N700Sを対象に2029年10月以降、順次改造を開始する予定です。
ミリ波列車無線を利用した早期地震検知システムもN700Sに導入します。
地震時のブレーキ制御の改良については、N700Sに加え、N700Aも対象です。ただし、2032年7月までに廃車を予定しているN700Aは除きます。
なお、グリーン車のサービス向上については、既存車両への改造に先立ち、2027年12月以降に投入するN700Sの新製車両から先行して実施する予定です。























