近江鉄道が上下分離へ。全線存続へ地元負担の枠組みを構築

負担割合は協議

近江鉄道が上下分離に移行する方針が固まりました。2024年度にも新体制へ移行する見込みです。

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ピークの4割に落ち込んで

近江鉄道は1898年に営業を開始した歴史ある鉄道で、琵琶湖の東岸に本線(米原~貴生川)、多賀線(高宮~多賀大社前)、八日市線(八日市~近江八幡)の計59.5kmの路線網を有します。

2018年度の輸送人員は483万人と、ピークだった1967年度の4割に落ち込んでいます。ただ、もっとも落ち込んだ2002年度の369万人からは、110万人増加しています。

1994年度に赤字転落して以来25年間、黒字化は一度もなく、2018年度までの累積赤字は44億円を超えました。2027年度までの10年間で56億円もの設備更新費用が見込まれていることもあり、近江鉄道は「民間企業の経営努力による事業継続は困難」との見方を示しています。

近江鉄道

3月に存続を決議

こうしたことから、2019年11月に滋賀県と沿線の5市5町が地域公共交通活性化再生法に基づく法定協議会を設置。協議の結果、2020年3月に全線の存続を決議しました。

その後、国の財政支援を得るため地域公共交通計画の策定を進めており、存続の際の運営形態や自治体の財政負担割合が議論の焦点となっています。

運営形態に関しては、これまで開催された協議会で上下分離方式への移行が議論されてきましたが、京都新聞12月4日付によりますと、12月17日に開かれる次回(第5回)協議会で上下分離が正式に決まり、負担割合は県と沿線市町で「1:1」になる見込みとのことです。

移行時期は2024年度以降で、管理団体が鉄道施設や車両を保有し、近江鉄道に車両などを無償貸与します。

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負担割合は?

焦点となるのは、沿線市町村の負担割合でしょう。各市町村内の営業距離に応じて負担するのが一般的ですが、それだけで決めると不公平な側面もあるため、近江鉄道の場合は、各市町村内の駅数や定期利用者数も含めた指標で算出する案が検討されているとのことです。

要するに、利用者の多い自治体ほど多く負担する、という枠組みが模索されているようです。というのも、近江鉄道の輸送密度や利用状況は区間によりずいぶん異なるからです。

下図は、近江鉄道の輸送密度と、駅別の利用人員です。

近江鉄道輸送密度
近江鉄道の輸送密度。画像:近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会

近江鉄道駅別利用者数
駅別利用者数。画像:近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会

利用者が多いのは、東近江市、近江八幡市、彦根市周辺です。そのため、定期利用者数を指標に含めるなら、この3市の負担が多めになりそうです。ただ、近江八幡市や彦根市は、近江鉄道がなくても中心地にJR線がありますので、重い負担を引き受けてまで存続させる必要性に乏しいという事情もあります。

負担の枠組みがどうなるのかはまだ見通せませんが、上下分離で自治体が中心となり、近江鉄道を支える体制ができるのであれば、何よりです。

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