小田急多摩線延伸の詳細。相模原まで2033年先行開業へ!

上溝延伸は微妙に

小田急多摩線の唐木田~上溝間の延伸について調査した報告書がまとまりました。上溝までの一括整備では採算性に難がある一方、相模原駅までの先行整備は良好な結果となり、事業化へ向け動き出しそうです。

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8.8kmの延伸計画

小田急多摩線は、新百合ヶ丘~唐木田間10.6kmを結ぶ鉄道路線です。唐木田から先、JR相模原駅、上溝駅を経て愛川町に入り、相模川西岸を通り小田急本厚木駅まで延伸する構想があります。

このうち、唐木田~上溝間8.8kmの延伸計画が具体化しており、2014年5月には、町田市と相模原市が、協力して延伸の取組みを進めることについて覚書を交わし、リニア中央新幹線の橋本駅が開業する2027年度を開業目標としました。

延伸計画は2016年の国土交通省交通政策審議会答申198号にも盛り込まれ、相模原市、町田市と都心部のアクセス利便性の向上を期待できる路線とされました。同時に、収支採算性に課題があり、事業計画についての検討を求められました。

答申を受け、相模原市と町田市は、2016年に8月に「小田急多摩線延伸に関する関係者会議」(関係者会議)を設置。小田急、JR、学識経験者などを交え、2019年2月まで7回にわたり延伸の採算性などを検討してきました。その結果をまとめた報告書がこのほど公表されました。

小田急多摩線延伸概略図
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書
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3駅を設置

報告書によりますと、小田急多摩線は、唐木田車庫の東側2線を活用して路線を南方向へ延ばします。

唐木田駅延伸
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

唐木田~相模原間の小山田バス停付近に一駅(中間駅)を設け、相模原駅、上溝駅とあわせ計3駅を設置します。

小山田の中間駅は高架相対式ホームです。

小山田中間駅概略図
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

相模原駅北側では、一部返還された相模総合補給廠の跡地の道路下に地下路線を通し、JR相模原駅と接着します。

小田急相模原駅
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

相模原駅は地下駅で相対式ホーム。地下通路でJR横浜線と連絡し、乗換時間は293秒と想定しています。

小田急相模原駅概略図
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

上溝駅は高架の島式ホームです。JR相模線と並行にホームを設置し、改札口の位置も合わせます。乗換時間は190秒の想定です。上溝駅の後方には2本の留置線を配置します。

小田急上溝駅計画図
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

小田急多摩線内の追い越しを可能にするため、小田急多摩センター駅を2面4線化します。多摩センター折り返し列車を設定しやすくするため、同駅の唐木田寄りに引き上げ線も設けます。

小田急多摩センター2面4線化
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

路線の最高設計速度は100km/hです。全体の8割近くにあたる6.8kmがトンネルという、地下主体の路線です。概算建設費は1,300億円です。

小田急多摩線延伸路線概要
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書
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相模原~新宿48分

関係者会議の報告書では、開業時期を2033年と想定しました。

急行運転も想定しており、ピーク時の急行は唐木田駅と中間駅を通過します。オフピーク時の急行は両駅にも停車し、多摩センター~上溝間は各駅停車となります。

小田急多摩線延伸停車駅
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

運転本数は、ピーク時に毎時9本(急行3本、各停6本)、オフピーク時に毎時6本(急行3本、各停3本)と想定しました。10分間隔をベースとし、ラッシュのみ急行を20分間隔で追加設定する形です。

多摩センター~上溝間の所要時間は、ピーク時の急行で8分40秒~55秒、オフピーク時の各駅停車で11分20~25秒と想定。ピーク時に相模原~新宿間が48分、上溝~新宿間が51分で結ばれます。

小田急多摩線延伸所要時間
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書
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採算性に課題

運賃は小田急電鉄の運賃体系に50円の加算運賃を上乗せする設定です。新宿~相模原間が37.9kmなので、現在の運賃体系に当てはめれば460円+50円=510円になります。新宿~上溝間は、550円と計算できます。

事業方式は上下分離を想定しており、第三セクターなどの公的主体が整備し、小田急電鉄が運営します。

想定輸送人員は2033年に1日あたり73,300人、2045年に67,100人。想定輸送密度は2033年50,500人キロ、2045年に46,000人キロとなりました。

こうした仮定を「基本ケース」として、延伸の事業性を検討したところ、事業採算性は、単年度資金収支で黒字転換まで11年、累積資金収支は黒字転換まで42年となりました。

費用便益比については、開業後30年が1.2、50年が1.4となりました。

国の支援を受けて事業化するには、費用便益比が1.0を上回り、累積資金収支が40年を下回らなければなりません。小田急多摩線の上溝延伸の試算では、費用便益比は問題ないものの、累積資金収支に課題が残ります。

要するに、費用対効果は悪くないけれど、採算性に難がある、ということです。

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二つの改善案

採算性を改善する方策として、報告書では二つの案を提示しています。一つ目は、相模原駅の位置を少しずらし、JR横浜線との移動距離を13m短くする案です(駅位置変更ケース)。

相模原駅位置修正案
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

これにより、乗換時間が少し短くなり、2045年の想定輸送人員が1,500人増えると試算しました。結果として、累積資金収支が2年短縮し、40年となります。

二つ目は、利用者の多い唐木田~相模原間5.8kmを第1期整備区間として先行開業する案です(段階整備ケース)。この場合、相模原駅乗り換えは、地下連絡通路ではなく、既存のJR相模原駅橋上駅舎を経由する形として検討します。垂直移動が増えるため、乗換時間は少し延びて305秒となります。

先行開業案では、唐木田~相模原間の事業費は870億円、2045年の想定輸送人員が49,500人、想定輸送密度が44,400人キロとなりました。いずれも「基本ケース」より減少するものの、累積資金収支は26年で黒字転換となり、劇的に改善します。

小田急多摩線延伸案比較
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書

ただ、この場合、第2期となる相模原~上溝間のみを単独で事業採算性を測った場合、厳しい数字になることが予想されます。そうなると、第2期に回された相模原~上溝間延伸の着工は困難になる可能性が小さくありません。

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先行整備を軸に

報告書の公表を受けて、相模原市の本村賢太郎市長はコメントを発表。「市としては、上溝駅までの全線整備やさらなる延伸を見据え、唐木田―相模原の先行整備を軸に検討を進めたいと考えている」としました。

上溝周辺住民への配慮を見せてはいますが、まずは唐木田~相模原間の着工を優先する方針を鮮明にしたといえます。

開業時期は未定ですが、報告書では建設期間を約6年と想定し、2033年開業と仮定しています。今から事業化に向けて作業を開始すれば、2027年のリニア開業に合わせるのは難しくとも、2033年は非現実的な開業時期ではありません。多少ずれても、2030年代に相模原開業を迎えるのは、夢ではなさそうです。

一方、相模原~上溝間の延伸は見通せなくなりました。さらに上溝から先、本厚木までの延伸構想については、現時点では全く未定です。(鎌倉淳)

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