2040年までに開業する鉄道新線総まとめ。夢の新路線はいつできる?

通勤新線から新幹線、リニアまで

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北海道新幹線

これから開業しそうな鉄道新線計画、2030年代以降の開業としては、北海道新幹線・新函館北斗~札幌間が目玉でしょう。2031年春の開業予定とされています。

ただ、トンネル工事で最大4年の遅れが生じていて、予定通りの開業は難しくなっているようです。工期短縮策を採るにせよ、2033~2034年頃の開業にずれ込みそうです。

途中駅は新八雲、長万部、倶知安、新小樽の3駅。終点札幌駅は、在来線ホームより東側に設置されます。

新幹線開業と引き替えに、並行在来線である函館線函館~長万部~小樽間がJR北海道より分離されます。このうち、長万部~小樽間はバス転換が決定済み。函館~新函館北斗は三セクとして存続する見通しです。新函館北斗~長万部間は最終結論が出ていません。

北海道新幹線
画像:鉄道・運輸機構
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なにわ筋線

2031年春には、JR・南海なにわ筋線が開業する予定です。大阪地下駅(うめきたホーム)からJR難波、南海新今宮へ至る路線で、JRと南海が共同で営業します。

建設するのは大阪駅の南西付近を起点とする7.2kmです。途中、中之島駅、西本町駅、南海新難波駅の3駅を設けます。関西高速鉄道が鉄道施設を整備・保有し、JR西日本と南海電鉄が、それぞれ運営主体となり列車を運行します。

完成すれば、JR特急「はるか」「くろしお」や、南海特急「ラピート」がなにわ筋線経由に移管される予定です。

なにわ筋線
画像:JR西日本

阪急電鉄も大阪駅うめきたに乗り入れる予定で、同時期に開業する予定です。うめきたから十三を経て新大阪に至る路線です。

現時点で詳細な計画は明らかになっていませんが、なにわ筋線と一体的に整備する予定で、阪急電鉄は2031年春のなにわ筋線と同時開業を目指す方針を明らかにしています。

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横浜地下鉄ブルーライン

横浜市営地下鉄ブルーラインも2030年頃に開業しそうです。あざみ野から先、新百合ヶ丘まで約6kmを延伸する計画で、2019年に事業化が正式に決まりました。

あざみ野~新百合ヶ丘間に4駅を設置します。嶮山(あざみ野ガーデンズ付近)、すすき野、ヨネッティ王禅寺付近です。終点、新百合ヶ丘駅では小田急線と接続します。開業目標は2030年とされていますが、まだ流動的です。

横浜市営地下鉄ブルーライン延伸ルート図
画像:横浜市
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多摩都市モノレール

東京都下では、多摩都市モノレールの箱根ヶ崎延伸も計画が進んでいます。上北台~箱根ヶ崎間の約7kmを延伸します。

東京都都市整備局が、2022年10月に計画の詳細を公表しました。多摩都市モノレールの現在の終点である上北台駅を出ると、すぐに西方面に折れ、新青梅街道沿いに進みます。武蔵村山市を横断して、JR八高線の箱根ヶ崎駅にて同線と接着します。

途中駅は6駅。終点の箱根ヶ崎駅を含めて、計7駅を新設します。

開業時期は明確ではありませんが、導入空間となる新青梅街道の拡幅整備の事業期間は、現時点で2028年度までとなっています。となると、多摩都市モノレールの箱根ヶ崎延伸は、2030年代前半には開業しそうです。

多摩都市モノレール延伸全体図
画像:「多摩都市モノレール(上北台~箱根ケ崎)建設事業」環境影響評価調査計画書より

多摩都市モノレールには、下図のように多数の構想路線がありますが、現時点で開業の見通しが立っているといえるのは、上北台~箱根ヶ崎間のみです。

このほか、多摩センター~町田間についても、都道47号線を中心に全体の半分の約7kmで導入空間が確保されていて、実現へ向け準備が進んでいます。ただ、残り区間では道路計画がない部分もあり、事業化にはもう少し時間がかかりそうです。

ルート案は決定していますので、2040年ごろには町田延伸が実現するかもしれません。

多摩都市モノレール構想
画像:八王子市
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熊本空港アクセス鉄道

熊本空港アクセス鉄道は、JR豊肥線の肥後大津と熊本空港を結ぶ6.8kmの鉄道新線計画です。いったんは三里木~熊本空港のルートが決まりましたが、再検討の結果、肥後大津で分岐することになりました。2022年11月に、熊本県とJR九州が建設に向け合意しました。

完成すれば、熊本駅~熊本空港駅間を直通する列車が運行され、所要時間は約44分を見込んでいます。

ただ、採算性に課題があり、現時点では国の補助基準を満たしません。熊本県は国に対して基準の見直しを求めていますが、実現できるかは見通せません。

熊本県は、2034度末の運行開始を目標としています。国が基準見直しをすれば実現可能なスケジュールですが、現時点ではあくまで目標にとどまります。

熊本空港アクセス鉄道ルート案
画像:熊本県

熊本市電

熊本では市電の延伸計画もあります。現在の市電の終点・健軍町から新市民病院まで約1.5kmを延伸するものです。

健軍町から県道熊本高森線を東へ向かい、自衛隊熊本病院や陸運支局などの横を通り熊本市民病院へ至ります。熊本市は2021年3月に基本設計を公表し、概算事業費を135億円としました。事業期間は7年を見込んでいます。

当初は2026年度の開業を目指していましたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、計画は停滞しています。事業着手にはもう少し時間がかかりそうで、開業は2030年代になりそうです。

熊本市電延伸
画像:熊本市
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東京メトロ有楽町線

2030年代半ばになると、東京都内の地下鉄新線が開業時期を迎えます。有楽町線、南北線、大江戸線、臨海地下鉄の計画があります。

このうち、先行しているのが東京メトロ有楽町線の豊洲~住吉間です。「豊住線」とも呼ばれる計画で、2022年8月に都市計画素案が公表され、概要が明らかになりました。

総延長は5.2km。途中3駅を設けます。枝川駅、東陽町駅、千石駅です。豊住~住吉間の所要時間は約9分です。

開業予定は明確ではありませんが、2030年代半ばを予定しています。東京メトロが整備・運営します。

メトロ有楽町線住吉延伸全図
画像:東京都都市計画素案

東京メトロ南北線

有楽町線延伸と同時期に建設されるのが、東京メトロ南北線の品川延伸です。「品川地下鉄」などとも呼ばれる計画で、2022年6月に都市計画素案が公表され、概要が明らかになりました。

総延長は、白金高輪~品川間の2.5kmです。途中駅は設置しません。

開業予定は2030年代半ばです。導入空間となる環状4号の事業期間が2032年までですので、順調にいったとして、環状4号開通の数年後に地下鉄開業という形になるでしょう。こちらも東京メトロが整備・運営します。

南北線品川延伸パンフレット
画像:「東京都市計画 都市高速鉄道第7号線 東京メトロ南北線の分岐線(品川~白金高輪間)計画のあらまし」
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都営地下鉄大江戸線

都営地下鉄大江戸線にも延伸計画があります。大江戸線放射部の終点光が丘駅~大泉学園町までの約3.2kmです。

導入空間となる道路として都市計画道路補助230号線の整備が進んでいます。途中駅として、土支田、大泉町、大泉学園町の3駅を設置します。大泉学園町駅は、西武池袋線大泉学園駅から北2kmほど離れた位置です。

2019年の「未来の東京」戦略ビジョンで、大江戸線は「関係者と事業化について協議・調整を進める」と位置づけられました。東京都は2022年度予算に「地下鉄12号線の延伸に関する調査」と明示した経費を主要事業として初めて計上しており、計画は前進しています。

しかし、現時点では事業着手に至っておらず、明確な開業見込みはありません。環境アセスに3年、建設に10年かかるとすれば、順調にすすんでも2030年代半ばの開業になりそうです。

大江戸線延伸
画像:大江戸線延伸ニュース第17号
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臨海地下鉄

都心部・臨海地域地下鉄(臨海地下鉄)は、東京駅や銀座地区と晴海・有明地区を結ぶ新線計画です。2016年の国土交通省交通政策審議会答申198号に計画が盛り込まれ、2022年11月25日に東京都が事業計画を発表しました。

臨海地下鉄の区間は東京駅~有明・東京ビッグサイト間の約6.1kmです。途中に新銀座、新築地、勝どき、晴海、豊洲市場の5駅を設けます。

秋葉原でつくばエクスプレスと直通運転する計画もあります。運営主体などは未定です。東京都では2040年までの開業を目指しています。

都心部・臨海地域地下鉄地図
画像:「都心部・臨海地域 地下鉄構想 事業計画検討会 事業計画案(令和4年11月)」より

つくばエクスプレス

つくばエクスプレスは、開業以来、東京駅への延伸構想があります。

現時点では具体的に決まったことはありませんが、臨海地下鉄の事業化が決定したことで、いよいよ動き出しそうです。つくばエクスプレスの東京駅は臨海地下鉄と共用する構想なので、臨海地下鉄の事業化が決まった以上、つくばエクスプレス延伸の事業化決定も時間の問題と考えられるからです。

つくばエクスプレス延伸
画像:2016年国土交通省交通政策審議会答申

つくばから先の延伸計画もありますが、どこに延伸するかも決まっていない段階です。

筑波山方面、水戸方面、茨城空港方面、土浦方面の4つの方面が候補となっていて、2023年3月に決定する予定です。ただ、決定したからといって、すぐに実現する話ではありません。

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小田急多摩線

小田急多摩線では、相模原方面への延伸計画があります。2019年5月に公表された調査報告書で、唐木田~上溝間8.8kmの延伸計画のうち、唐木田~相模原間5.8kmを優先して事業化する方針が示されました。途中、小山田付近に駅ができる予定です。

ただ、その後、事業化に向けて目立った動きはありません。報告書では2033年が開業年度とされましたが、これは収支採算性を探る上での仮定であって、現時点で正式にアナウンスされた開業目標ではありません。

事業着手に至る可能性は高いものの、開業は早くても2030年代半ば以降になりそうです。

小田急多摩線延伸概略図
画像:小田急多摩線延伸に関する関係者会議報告書
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新空港線

新空港線は、東急多摩川線矢口渡駅から、東急蒲田駅、京急蒲田駅を経て、大鳥居駅に至る新線計画です。東急・京急の両蒲田駅を結ぶことから「蒲蒲線」とも呼ばれます。

このうち、矢口渡~東急蒲田~京急蒲田間を優先して整備する方針が決まっています。2022年6月に、東京都と大田区が整備について合意。上下分離による整備と費用負担の割合が決まりました。同年10月には、大田区と東急電鉄が、鉄道設備を保有する第三種事業者として「羽田エアポートライン株式会社」を設立し、事業化に向けて動き出しました

着工予定や開業時期は未定ですが、大田区では、京急蒲田までを2030年代に開業させる目標を掲げています。都市計画決定から着工まで3年程度、着工から開業まで10年程度がかかるとすれば、早くても2030年代後半の開業になりそうです。

新空港線(蒲蒲線)
画像:大田区

次ページでは、秋田新幹線や山形新幹線の新トンネル計画をご紹介。そのほか、事業化が決定していないものの、実現可能性のある新線も掲載します。

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