2018年の世界文化遺産登録をめざす「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」について、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関イコモスが登録を勧告しました。7月までに正式登録される見通しです。2018年夏は、登録遺産が点在する長崎の離島が観光ブームに沸きそうです。
国内22件目の世界遺産
2018年度の世界遺産登録は、6月24日~7月4日にバーレーンで開かれる世界遺産委員会で正式に決まります。事前の登録勧告が覆ることは少ないため、「長崎・天草の潜伏キリシタン関連遺産」の正式登録はほぼ決まったことになります。登録されると、国内の世界遺産は計22件目となります。
長崎・天草キリシタン関連遺産は、現存する国内最古の教会の大浦天主堂や、キリスト教が禁じられた江戸時代に信仰を続けた信者が暮らした天草の崎津集落など、計8市町の12件の資産で構成されます。イコモスは一部資産で対象地域の変更を求めましたが、全体の価値を評価し、登録勧告となりました。
構成遺産の目玉は長崎市の大浦天主堂と感じられますが、12件の遺産のうち、九州本土にあるのは4件のみ。残る8件のうち1件が熊本の天草に、7件が五島列島や平戸といった長崎の離島に位置します。となると、2018年夏は、長崎の離島が世界遺産ブームに沸きそうです。
禁教時代に特化
「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」は、もともと「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」という名称で、2016年の本登録を目指していました。しかし、同年にイコモスが推薦内容について「禁教時代に特化すべき」と指摘したため、構成資産の再検討をしていたものです。
キリスト教迫害は、過去、世界各地で起きたことです。ただ、日本の場合、禁教時代に信徒が人目に付かない離島などに逃れ、仏教徒を装ったりするなど、宗教形態を変えながら、潜伏キリシタンとして子孫に信仰を伝承していきました。こうした例は世界的にみても稀で、そこに価値がある、というのがイコモスの指摘の趣旨ようです。
逆に、キリスト教会は世界中に至る所にあるので、「教会群とキリスト教関連遺産」だけでは、世界遺産に登録する意義を見いだしにくい、ということなのでしょう。
旅行者的にはややわかりにくい
禁教時代特化により、「教会群とキリスト教関連遺産」は「潜伏キリシタン関連遺産」にテーマを変えました。それにより、田平天主堂など禁教期と関連の薄い遺産が除外され、さらに、教会など建物が中心だった構成内容から、教会と周辺を含む「集落」として捉え直すといった変更がなされています。
たとえば、「江上天主堂」は「江上集落」に、「頭ケ島天主堂」は「頭ケ島集落」などと、構成資産の名称が変わっています。そのため、観光的にはシンボルとなり得る教会・天主堂が、構成遺産の名称に含まれていないケースが多く、旅行者的にはややわかりにくい世界遺産となっているので気をつけましょう。
日本人旅行者的な視点で見ると、長崎の離島の教会群は、それが禁教時代と関係あろうがなかろうが、隠れキリシタンの息吹が伝わる静かな魅力があります。これを機会に、長崎の離島で、教会堂めぐりの旅を楽しんでみてはいかがでしょうか。(鎌倉淳)