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新千歳空港駅「複線・直通化」で何が変わるか。JR・国交省が検討へ

事業費は1,000億円規模

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JR北海道の新千歳空港駅で、大規模改修が検討されていることがわかりました。複線化のうえ、苫小牧・石勝線方面へ直通運転できるよう改造されます。実現した場合、どのような効果が得られるのでしょうか。

輸送力増強に迫られて

新千歳空港駅が開業したのは1992年。新千歳空港ターミナルビルのオープンにあわせて、南千歳~新千歳空港間2.6kmの新線が建設されました。以前の千歳空港駅(現・南千歳駅)から分岐する形でトンネルが掘られ、新千歳空港ターミナルの地下に1面2線が設置されています。

南千歳~新千歳空港間は、単線の盲腸線となっています。新千歳空港駅のホーム長が6両編成までしか対応していないこともあり、輸送力増強が難しく、増加する空港客をどう捌くかが課題となっていました。

新千歳空港駅

千歳線本線のルート変更

この対応策として浮上したのが、今回の新構想です。南千歳~新千歳空港間を複線化し、新千歳空港から苫小牧、帯広方面へ抜ける新線を建設、新千歳空港の盲腸線状態を解消しようというものです。

北海道新聞2018年5月2日付によりますと、「南千歳~新千歳空港間について、苫小牧側への貫通のほか、複線化を行う。帯広・釧路方面に通じる石勝線の起点も南千歳駅から新千歳空港駅に変更する」という大がかりなもので、国土交通省が大規模改修の検討に着手したとのことです。

また、NHK2018年5月2日放送は、「JR北海道が空港と鉄道のアクセスを改善するため新千歳空港駅から乗り換えなしで道南や道東方面に向かうことができるよう路線の改修工事を検討し(中略)、今後、財源について国などと協議したい考え」と報じました。

要するに、千歳線本線のルートを新千歳空港経由に変更し、南千歳~新千歳空港~苫小牧を直通させるということを、JRが国交省に要請し検討を始めた、ということのようです。

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ルートはどうなる?

詳細な経路は未発表ですが、報道内容が事実とした場合、千歳線がどのように変わるかを考えてみましょう。

新線は苫小牧方面と帯広方面の両方向に伸びることから、新千歳空港駅からなるべく早く東へ向かい、旧美々駅(現・信号場)付近まで地下新線を敷くことが考えられます。

これを苫小牧方面への本線とし、途中で石勝線への路線を単線で分岐させ、南千歳~追分間にある駒里信号場付近で現石勝線に接続させるのが、合理的なルートでしょう。

分岐駅となる新千歳空港駅はホームを1面増設し、2面4線にする必要がありそうです。既存ホームの延伸もこのタイミングで行われるでしょう。あるいは、駅そのものを移転して作りなおすことも考えられます。

工事内容としては、南千歳駅~新千歳空港駅に単線トンネルを1本掘り、新千歳空港駅でホームを1面増設または駅移転新設、新千歳空港~美々信号場付近へ複線トンネルまたは単線トンネル2本を掘ることになります。

ただし、このルートの場合、新線は滑走路の地下を通ります。そのため、滑走路の強度に影響を及ぼさないよう、トンネルは深い位置を掘らなければなりません。そのため地下線の勾配は大きくなりそうで、貨物列車は新線を通さずに、旧線を活かしたままにするのではないかと想像します。

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札幌へ特急でアクセス可能に

新千歳空港駅を千歳線本線に組み込む「直通化」構想は、駅建設時に検討された経緯があります。しかし、工費節約のため、現在のような単線の6両ホームという貧弱な設備になりました。

したがって、今回の直通構想はJR北海道にとっては悲願であるともいえます。そして直通構造にしたほうが、空港駅の能力を高められるのは間違いなく、国交省も前向きに検討しているのでしょう。

では、本当に新千歳空港経由が本線化された場合、利便性でどのような変化が起こるのでしょうか。

最大の変化は、函館、室蘭、帯広、釧路方面の特急列車が、すべて新千歳空港駅を経由するということです。「スーパー北斗」「すずらん」「スーパーおおぞら」「スーパーとかち」といった優等列車が、すべて新千歳空港駅に停車します。

これにより、道南、道東方面から、新千歳空港アクセスの利便性が向上するでしょう。

スーパー北斗

旧ターミナル時代の状況に

ただ、もっと大きな意味として、新千歳空港から札幌市内へ、特急列車でのアクセスが可能になるという点が挙げられます。

特急の所要時間は快速「エアポート」と大きく変わりありませんが、利用者は着席サービスを求めやすくなりますし、JR北海道は特急料金分の増収が見込めます。

札幌~苫小牧間の普通列車も空港経由になりますので、現状のダイヤをそのまま当てはめても、札幌方面へ毎時7~8本の特急・快速・普通列車の設定が見込めます。現状は毎時4本ですから、ほぼ倍増といっていいでしょう。

増発なしで、札幌と新千歳空港のアクセス列車を増やせるのですから、JR北海道にとって大きなメリットがあります。新千歳空港駅の容量が劇的に増えるので、たとえば千歳発着の普通列車を新千歳空港まで延ばすといった、あまりコストのかからない増発もしやすくなります。

そもそも、空港ターミナルが現位置に移転する前の千歳空港駅(現・南千歳駅)は千歳線本線上にあり、石勝線の分岐駅でした。当時は、快速「エアポート」はなく、特急列車が札幌への高速アクセスを担っていました。その状況に完全に戻るわけではないでしょうが、特急が空港輸送に復帰するわけです。

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空港整備勘定を活用

いいことづくめに思えますが、問題は建設費です。道新によれば、「事業費は1千億円規模」とされており、数キロの新線としてはかなり高額です。JR北海道に投資余力がないことから、国の特別会計である「空港整備勘定」の活用が考えられているそうです。

空港整備勘定は、文字通り空港の整備や、その運営の円滑化を図ることなど目的としている予算です。空港使用料などを財源としており、2018年度予算規模は4,316億円です。

仮に新千歳空港駅の改修に1,000億円かかるとしたら、空港整備勘定の予算の4分の1に相当する金額になります。さすがに負担が大きすぎる気もしますし、そもそも論として、空港使用料で鉄道を作るのは、筋違いにも感じられます。

完成すれば新千歳空港の利便性が上がり、空港利用者の利益になるので、説明できる範囲内の用途として受け入れられるかもしれません。

ただ、前例を作ったら、今後、他の空港でも「空港整備勘定を使った鉄道整備」を求める自治体や鉄道会社が出てきそうです。そのため、適用できる要件定義も必要になるでしょう。

国交省には、「空港アクセス鉄道等整備事業費補助」という別の補助スキームもあります。しかし、鉄道事業者の一部負担を前提としている仕組みなので、経営難にあえぐJR北海道が使うのは困難でしょう。

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開業時期は2020年代半ばか

気になる開業時期ですが、道新では、「早ければ2022年の完成を目指す」としています。

2022年ということは、2021年度予算で完成させるということですから、来年度(2019年度)予算からスタートしたとして、3年分の予算で完成させることになります。さすがにこれは困難に思えますので、現実的に可能なのは2020年代半ばではないでしょうか。

JR北海道や国土交通省が建設を急ぐ姿勢を見せているのは、それだけ新千歳空港客の増加が著しいからでしょう。また、JR北海道の収支改善を一刻も早く進めたいという思惑も見え隠れします。

2020年6月に道内7空港民営化が始まるため、タイミングとして予算計上の大義名分が立てやすいことも理由として挙げられそうです。

さらに、2023年開業を目指す日ハム新球場の建設にともなう新駅構想があり、千歳線の輸送力増強の方向性を早く決定しなければならないという事情も影響しているかもしれません。

JR北海道の収益基盤強化

ただ、やはり1,000億円規模の建設費となると高額で、はたして構想が実現するのか疑問がないわけではありません。費用対効果を厳密に測れば、事業として成立しないのではないか、と思われるからです。

それでも、このプロジェクトは経営難のJR北海道の収益基盤を強化する方策として効果が高そうですし、インバウンド受け入れ体制を整備するという国策的側面としても意味があります。

新千歳空港駅の容量が増えれば、空港から道内リゾート地へ直通列車を運行させるといった企画も可能になり、道内のインバウンド輸送強化にも資することでしょう。

そうした効果を考えると、最終的に着工に至る可能性は高いと、信じたいところです。(鎌倉淳)


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