久留里線「廃止協議」はどう進むか。JR東日本がバス転換打診へ

久留里~上総亀山間

JR東日本が、久留里線の久留里~上総亀山間について、バス転換を視野に地元自治体に協議を打診しました。JR東日本が、災害以外で廃線協議を持ちかけるのは初めてで、どのような方向に進むのでしょうか。

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自治体に協議を打診

JR久留里線は、木更津~上総亀山間を結ぶ32.2kmの路線です。全線非電化単線のローカル線で、2012年に導入したキハE130系100番台で運転しています。

JR東日本によりますと、久留里線のうち末端区間の久留里~上総亀山間9.6kmについて「鉄道の特性である大量輸送のメリットを発揮できていない状況」にあるとして、地元自治体の千葉県と木更津市に対し、「総合的な交通体系に関する議論」の申し入れをしました。

「鉄道特性が発揮できていない」「総合的な交通体系」という表現から、鉄道路線廃止によるバス転換を含めた協議の申し入れと解釈してよさそうです。

久留里線キハE130形

 

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輸送密度55

久留里線は終日ほぼ1時間間隔で運行されていますが、久留里で折り返す列車が多く、久留里~上総亀山間の運行本数は、1日に下り8本、上り9本のみです。

久留里~上総亀山間の2021年度の輸送密度は55。年間の運輸収入は100万円で、2億7,900万円の赤字を計上しています。営業係数は19,110で、JR東日本が公表している路線では、陸羽東線鳴子温泉~最上間の20,031に次いで悪い数字です。

久留里線の収支と輸送密度
区間 営業キロ(km) 運輸収入(万円) 赤字額(万円) 営業係数 輸送密度(人キロ)
木更津~久留里 22.6 6,800 80,600 1,273 1,091
久留里~上総亀山 9.6 100 27,900 19,110 55

 

輸送密度、運輸収入とも全JR線のなかでも最低に近い水準で、営業係数も非常に高いです。久留里線は行き止まりの盲腸線で、廃止してもネットワークへの影響が少ないという状況もあり、JR東日本としてバス転換を提案する、ということでしょう。

一方、久留里線の木更津~久留里間については、輸送密度1,091、年間収入6,800万円、赤字額8億600万円です。こちらの数字も悪いですが、この水準のローカル線なら各地にあるからか、現時点では議論の俎上にのぼらないようです。

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民営化後初の廃止提案

JR東日本では、会社発足以来、岩泉線や大船渡・気仙沼線の一部など、災害で被災した路線を復旧せずに廃止した例があります。また、整備新幹線の並行在来線にあたる信越線の横川~軽井沢間も廃止しています。しかし、特段の環境変化のない営業運行中のローカル線を廃止したことはありません。

久留里線の末端区間の廃止が実施されれば、民営化後、初めての事例となります。関東地方(一都六県)の鉄道路線の廃止事例としては、2007年の鹿島鉄道以来となります。

再構築協議会の対象になるか

JRと地元自治体との協議の見通しについては、いまのところはっきりしません。

今国会に上程されている改正地域公共交通再生法が成立すれば、ローカル線の存廃について、「再構築協議会」での協議が可能になります。

ただ、再構築協議会の対象は、複数の広域自治体(都道府県)にまたがる路線を想定しているので、久留里線のような短距離の末端区間は対象外でしょう。

となると、任意協議会で協議する形になりそうです。

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