神戸市営地下鉄西神・山手線と阪急神戸線の相互乗り入れの構想は、実現に至らないようです。神戸市は、投資に見合う効果が得られないと判断し、事業化の検討を終了します。
梅田~西神中央を直通運転
阪急神戸線と神戸市営地下鉄西神・山手線の相互乗り入れ構想は、阪急と地下鉄を接続させ、梅田~西神中央間で直通運転を行うものです。
2004年の近畿地方交通審議会答申に直通構想が記載されたのを受けて、阪急電鉄が推進姿勢を示し、2013年に久元喜造神戸市長が誕生すると、神戸市側も前向きな姿勢に転じました。2018年からは、神戸市が具体的な接続方法や概算事業費、需要予測の検討を行ってきました。
事業費回収の見込みが立たない
検討開始から2年。2019年度末を前に、この検討が一区切りを迎えそうです。神戸新聞2020年3月6日付によりますと、「現時点で投資に見合う効果が見込めない」として、神戸市は具体的な検討をいったん終了するとのことです。
同紙によれば、「必要な事業費は2千億円規模と試算」したものの、「相互乗り入れで得られる効果は限定的と推計。事業費回収の見込みが立たないと判断し、具体的な検討をいったん終え」ました。
「投資に見合う効果が見込めない」、すなわち事業化できないという結論を出したわけです。計画は白紙に返ることになります。
接続地点が難題
もともと、阪急・神戸地下鉄直通構想は、両線の接続地点をどこにするかが難題でした。
当初、阪急側は、王子公園~神戸三宮間を地下化させて、三宮駅付近で接続させる意向を示していました。しかし、三宮駅周辺で両線を接続するには、大がかりな地下駅や地下新線を新設する必要があり、巨費がかかります。
そのため、新神戸駅周辺で接続する案や、長田駅、板宿駅周辺で接続する案も検討されました。一時は新神戸接続案が有力と報じられたりもしましたが、神戸新聞2019年11月25日付では「JR三ノ宮駅北側の地下に新駅を設けて接続させる案を検討」と、三宮周辺接続案に戻ったことを伝えています。
このときの報道では、新神戸接続案に関し「神戸三宮-大阪梅田間の所要時間が延びる」と問題点を示したうえで「利便性を重視して三宮で接続させる方向」としました。
ただし、現行の地下鉄三宮駅については、「周辺の地下空間が限られており、乗り入れに伴う乗降客の増加に対応できない。6両仕様の既存ホームに8両の阪急電車を停車させるための拡張も必要だが、地下鉄の運行を続けながらの工事実施は極めて難しい」と課題を指摘しました。
たしかに巨費だが
こうした検討を経て、最終的に、JR三ノ宮駅北側に地下新駅を作る案に絞られていったようです。具体的にどのような形で両線を接着する計画だったかは定かでありませんが、おそらくは、阪急線を三ノ宮地下新駅に乗り入れさせたうえで、同駅西側から新たな地下線を伸ばし、地下鉄線の三宮~大倉山間のどこかで接着させる構想だったのでしょう。
実現すれば大阪梅田~西神中央が一本の線路で結ばれ、西神地域の利便性が格段に上がります。しかし、費用対効果の悪さから、実現に至らなかった、ということのようです。
三宮地下新駅案の総事業費が約2,000億円ならば、たしかに気が遠くなるような巨費です。2019年に開業した相鉄・JR直通線が1,114億円でしたので、その倍近い金額です。これだけのお金を投じるなら相応の便益が求められるのはやむを得ないことで、それが見込めないならば構想の実現は難しいという判断にならざるを得ません。
神戸新聞によりますと神戸市は「乗り入れ構想は撤回しない」とのことで、「交流人口の増加など社会環境の変化をにらみながら、再検討の時期を探る」としています。人口減少時代を迎え、職住近接の流れが強まるなか、「交流人口」が増加するのはなかなか難しそう。結局のところ、事実上の構想断念という形になってしまう可能性が高そうです。(鎌倉淳)