川崎市でBRT(バス高速輸送システム)が3月1日に運行を開始します。連節バスが川崎駅東口と臨海部の水江町を直結し、将来は東扇島にも延伸する計画です。
臨海部の基幹的交通軸
川崎市では、臨海部の交通ネットワークの整備を進めています。2021年に公表した『臨海部の交通機能強化に向けた実施方針』では、基幹的交通軸のひとつとして「臨海部中央軸」を位置づけ、バス高速輸送システム(BRT)を導入することを盛り込みました。
その開業時期は2022年度とされていましたが、川崎市はこのほど、2023年3月1日に運行を開始すると正式発表しました。その名も「KAWASAKI BRT」という名称で、運行区間は川崎駅東口~水江町間です。
運行するのは川崎鶴見臨港バス。車両は日野自動車といすゞ自動車が共同開発した連節バス(「ブルーリボン・ハイブリッド連節バス/エルガデュオ」)で、全長18メートル、定員は114名です。
川崎BRT時刻表
BRTが運行するのは、平日朝夕ラッシュ時のみ。それぞれの時間帯で、12分間隔で運行をします。
時間帯により運行種別が変わり、混雑方向(朝下り、夕上り)がおもに「BRT特快」、逆方向がおもに「BRT快速」となります。「特快」は川崎駅~臨港警察署前までの停留所を通過します。
「KAWASAKI BRT」の時刻表は以下の通りです。
前後2箇所で乗車可能
川崎駅前の発着場所は、駅前広場から大通りを渡った21番停留所。川崎駅では、前ドアと後ろドアの2カ所で乗車が可能です。前ドアは現金・ICカードとも使えますが、後ろドアはICカード専用です。中ドアからの乗車はできません。
川崎駅以外では、前ドアが乗車専用、中・後ドアは降車専用となります。運賃は均一220円で、一般バスと同じです。
ほぼ全線に専用・優先レーン
運行区間のほぼ全線にバス専用、優先レーンが整備されています。PTPS(公共車両優先システム)も導入します。
「専用・優先レーン」「公共車両優先システム」「特快・快速運行」の3つを組み合わせることで、速達性を高めるというわけです。
川崎駅~水江町の所要時間は、特快の下りが22分、上りが27分程度で、現状より数分、短縮します。停車バス停を絞ることで、定時性も向上するでしょう。
バス停と車内では、バスロケーションシステムを使用した目的地への到着予測案内も表示します。
東扇島への運行も
BRTの当面の運行区間は水江町までですが、延伸計画もあります。
現在、京浜運河をまたいで水江町と東扇島をつなぐ「川崎港 東扇島~水江町地区臨港道路」を建設中で、完成後はBRTの運行区間を拡大し、東扇島に乗り入れる予定です。
道路の完成予定は2023年度で、BRT延伸は2024年度以降を見込みます。
その場合は、川崎駅と東扇島を「特快BRT」が直結するわけで、川崎の臨港地域の交通アクセスが大きく改善するでしょう。
将来的には、羽田空港と浜川崎を結ぶ臨海部横断軸や、川崎駅と浜川崎を結ぶ浜川崎・南渡田アクセス軸にもBRTを補完的に導入する計画もあります。
川崎市の臨海部は、通勤需要が強い一方で定住人口が少ないという環境です。鉄道を作るほどではないけれど、一般のバスでは需要に対応しきれないという点で、BRTのような輸送モードに適したエリアに感じられます。
その点で、川崎BRTは、BRTのモデルとしても注目を集めそうです。(鎌倉淳)