JR羽田空港アクセス線、気になる疑問点。新駅、運賃、ダイヤはどうなる?

臨海部ルートも2031年度開業へ

JR東日本が建設中の羽田空港アクセス線が、2031年度に東山手ルートと臨海部ルートで同時開業を目指す方針であることが明らかになりました。気になる疑問点をまとめてみましょう。

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2031年度に同時開業

JR東日本の羽田空港アクセス線は、羽田空港と東京都心を結ぶ鉄道新線です。東海道貨物線の一部を旅客化しつつ、新線も建設し、羽田空港から東京駅、上野駅、渋谷駅、新宿駅、新木場駅などに直通列車を運行する構想です。

計画では、羽田空港の国内線第1ターミナルと第2ターミナルの間に「羽田空港新駅」を設け、東京貨物ターミナルまで約5.0kmの「アクセス新線」を建設します。そこから田町駅付近への「東山手ルート」、大井町駅付近への「西山手ルート」、東京テレポート駅付近への「臨海部ルート」の3ルートを建設します。

先行して着手しているのはアクセス新線と東山手ルートの羽田空港~田町間12.4kmです。2023年4月に本格的な工事に着手していて、2031年度の開業予定です。

残る西山手ルートと臨海部ルートについては、これまで開業予定が明らかにされていませんでした。しかし、2024年7月24日の日経電子版が、臨海部ルートも2031年度の開業予定と報道。各社も後追いで報じたことから、臨海部ルートと東山手ルートは同時期に開業する方針であることが明らかにされました。

羽田空港アクセス線
画像:「羽田空港アクセス線(仮称)整備事業」環境影響評価調査計画書より

 
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羽田からお台場が13分

臨海部ルートは、東京貨物ターミナル付近から分岐して、東京テレポート駅でりんかい線に乗り入れて新木場駅に達します。

JR線からりんかい線への乗り入れには、りんかい線の車庫線を使用します。りんかい線は品川区の八潮地区に車両基地を持っていて、東山手ルートが通る東京貨物ターミナルに隣接します。

したがって、東山手ルートからりんかい線の車庫線への渡り線を設ければ、他に大きな工事をする必要なく、りんかい線に乗り入れられ、臨海部ルートを開業させることができます。

開業目標を2031年度に設定したということは、りんかい線を運営する東京臨海高速鉄道との調整が済んで、東山手ルートとの同時開業にメドが立ったということでしょう。

これにより、2031年度に、羽田空港から東京駅方面と、新木場駅方面の2系統が、羽田空港アクセス線として同時開業する見通しとなりました。羽田空港~東京間は18分、羽田空港~新木場間は20分が見込まれています。羽田空港~東京テレポート(お台場)間なら、13分程度でしょう。

東京駅方面は、上野東京ラインに乗り入れて、大宮方面に直通します。新木場方面は京葉線に直通せず、新木場止まりになる見通しです。

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運転本数は?

2019年5月に公表された東山手ルートの環境影響評価書によりますと、羽田空港アクセス線の運転本数は毎時8本、1日144本を予定しています。上下合わせた数字とみられますので、15分間隔での運転を想定していることになります。

臨海部ルートの運転本数については、公式発表がありません。筆者の予想として記しておくと、東京都区部の鉄道ですので、東山手ルートと同様に、少なくとも15分間隔程度の運転本数は確保するのではないでしょうか。

両線とも15分間隔となった場合、羽田からは約7分半ごとに列車が出発することになります。

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車両は?

車両については、正式発表された事項はありません。

東山手ルートの場合、上野東京ラインに直通することが明らかにされていますので、同線の最大15両編成がグリーン車付きで乗り入れるとみられます。羽田空港駅ホームは15両編成に対応していますので、上野東京ラインのフル編成に対応可能です。

臨海部ルートは、りんかい線の車両と共通運用になるのであれば、10両編成のロングシート車両が乗り入れてくるでしょう。りんかい線のホーム長の問題もあり、上野東京ラインと同じ車両にはならないとみられます。

すなわち、東山手ルートと臨海部ルートは、異なる車両運用となるでしょう。

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運賃収受の問題

臨海部ルートの開業で気になるのは運賃です。利用区間によっては、りんかい線の運賃を適切に収受できないのではないか、という疑問が生じます。

たとえば新宿方面から羽田空港へ向かう場合、中央線と東山手ルートを東京駅で乗り継げば、全線がJR東日本です。一方、埼京線と臨海部ルートを東京テレポート駅で乗り継げば、大崎~東京テレポート間はりんかい線です。

しかし、新宿駅と羽田空港駅はJR東日本の駅なので、東京駅経由のきっぷで改札口を抜けられます。ICカードの場合も、東京駅経由で計算されるでしょう。そうすると、りんかい線の運賃は収受されないことになります。

解決する方法として、羽田空港駅の改札を、東山手ルートと臨海部ルートで分ける方法が考えられます。ただ、駅の位置図を見ると、ホームと改札口の間に通路がありそうで、そこで動線を分けるのは難しいようにも感じられます。頭端式ホームのようですので、作るとしたら、ホーム先端を半分に分けて別改札にする形でしょうか。

JR羽田空港駅
画像:JR東日本プレスリリース

もう一つの方法として、羽田空港発着の運賃の一部を、東京臨海高速鉄道に一定ルールで分配する案です。これが実現できれば、たとえば新木場以東の千葉方面への乗り入れも検討できそうです。

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八潮新駅計画

JR羽田空港アクセス線に、途中駅の計画はありません。ただし、沿線の品川区では、駅設置に向けた検討をおこなっています。

2023年に策定された「品川区まちづくりマスタープラン」では、八潮地区の東京貨物ターミナル付近一帯を「鉄道車両基地エリア」と定め、「新駅の設置に向けた検討」をする方針を定めました。新駅設置に向けて、鉄道用地の土地利用転換も視野に入れており、大規模な再開発が行われる可能性もありそうです。

品川区まちづくりマスタープラン

品川区マスタープラン
画像:品川区マスタープラン

りんかい線と東山手ルートの分岐部は、この「鉄道車両基地エリア」です。臨海部ルートへの渡り線工事が行われるのであれば、自治体としては、新駅設置を想定した形を要望したいところでしょう。

ここに新駅ができると、東京、新宿、台場の3方向と羽田空港への結節点となります。オフィスやホテルなどの立地としては有望でしょう。

ただ、現状は車両基地と貨物ターミナルが中心のまちで、その機能は重要で、移転が困難な施設が多そうです。となると、土地利用転換といっても容易ではないかもしれません。

東山手ルートと臨海部ルートが一気に開業することで、結節点となる八潮地区の新駅に動きが出るかも注目したいところです。(鎌倉淳)

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