JR6社2020年度中間決算を読み解く。売上高半減、厳しい状況続く

JR旅客6社の2020年度中間決算がまとまりました。第一四半期に比べると回復基調にありますが、依然として厳しい経営状況を映す決算です。

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JR6社決算

さっそく、JR旅客6社の2020年度中間決算を見てみましょう。下表では、各社の鉄道旅客運輸収入と、連結決算の売上高(営業収益)、営業損失をまとめてみました。

JR6社2020年度中間決算
会社名 鉄道運輸収入 前年度比 営業収益 前年度比 営業損失
JR北海道 166億円 45% 519億円 61% 385億円
JR東日本 4343億円 46% 7872億円 52% 2952億円
JR東海 1893億円 26% 3378億円 35% 1135億円
JR西日本 1825億円 40% 3899億円 51% 1447億円
JR四国 53億円 44% 115億円 46% 140億円
JR九州 326億円 42% 1245億円 58% 205億円

鉄道運輸収入は40%台

鉄道運輸収入は、JR東海を除く5社が対前年度比で40%台。新型コロナで、鉄道の売り上げの半分以上が吹っ飛んだといえます。とくに低かったのがJR東海で、26%と落ち込みました。

JR東海は全収入における東海道新幹線の売上比率が高いという特徴があります。新型コロナの影響で中長距離旅客の戻りが鈍いため、東海道新幹線の利用が伸び悩み、鉄道の売上高が激減しています。結果として、連結の営業収益も6社中唯一の対前年度比30%台に沈んでいます。

連結営業収益については、対前年度比で落ち込みが小さかったのがJR北海道。鉄道運輸収入が半減したものの、不動産賃貸業や小売業が踏ん張り、JR6社のなかでは売上高の減少を最小限に食い止めた形です。結果として、営業収益に占める鉄道運輸収入の割合は約3割にまで減りました。

JR東日本、JR西日本、JR九州は、いずれも鉄道運輸収入が対前年度比40%台、営業収益が同50%台と、似たような決算となりました。ただ、営業収益に対する営業損失率では、JR東日本、JR西日本がいずれも約37%で、JR九州の16%と差が開いています。JR九州は、鉄道事業の売上高の割合が低いこともあり、相対的に傷が浅いといえそうです。

深刻なのはJR四国で、営業損失率が121%です。会社の収入を上回る損失を出しているわけで、危機的な状況と言えます。JR四国は2021年春にも運賃値上げをする意向を示していますが、この数字を見ればやむを得ない措置でしょう。

E7系

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業績予測を比較する

次に、各社の2020年度通期決算の業績予測を見てみます。鉄道運輸収入と連結決算の売上高(営業収益)、連結決算の営業損失の通期予測です。非上場2社は業績予測を公表していません。

JR6社2020年度業績予測
会社名 鉄道運輸収入 前年度比 営業収益 前年度比 営業損失
JR北海道
JR東日本 1兆200億円 57% 1兆9300億円 65% 5000億円
JR東海 5160億円 38% 8630億円 47% 1850億円
JR西日本 4350億円 51% 9200億円 61% 2900億円
JR四国
JR九州 776億円 53% 2917億円 67% 323億円

 

鉄道運輸収入に関しては、JR東日本、JR西日本、JR九州がそれぞれ50%台。JR東海が30%台の予想です。上半期実績をベースにした業績予測で、各社とも下半期での大きな回復を計算に入れていない様子です。

営業収益に対する営業損失率の予測が高いのがJR西日本の31%、次いでJR東日本の25%、JR東海の21%、JR九州の11%と続きます。各社とも手堅い予測で、再び緊急事態宣言が出されるような状況にならない限り、ここから大きく下振れすることはなさそう。とくにJR西日本は、新型コロナからの回復をやや厳しめに見積もっている印象です。

電車は混んできたが

体感的には、10月に入ってから、列車の混雑状況が急速に戻りつつあるように感じます。実際のところ、JR東海のデータでは、10月の27日までの東海道新幹線の東京口が44%、大阪口が46%で、対前年比で半分くらいまで戻っています。名古屋近郊は80%となっていて、8割方回復しています。

JR西日本では、10月の運輸収入は近距離が対前年比74%、中長距離が52%、定期が125%となっていて、定期客が急に戻っていることがわかります。利用状況では東海道新幹線が47%、近畿圏が79%となっていて、こちらも中長距離客が約半分、通勤・通学客は8割方戻ったことがわかります。

JR東日本は10月の月次情報が未発表ですが、「新幹線5割、通勤電車8割」の回復状況は、おそらく全国共通とみられます。春先のガラガラの状況は終わったと言えるでしょう。

ただ、テレワークが普及した状況で、どこまで鉄道利用が戻るかは疑問です。通勤・通学客がコロナ前と同じように勤務先や学校に通うとは限りませんし、ウェブ会議で事足りることを知った企業は、出張を絞ることでしょう。観光客もインバウンドが復活するまで100%にはならないでしょうし、それには数年はかかるでしょう。

となると、10月で「新幹線5割、通勤電車8割」まで戻ったのはいいとして、この先の回復のペースは鈍いことが予想されます。まして、感染症が流行しやすい冬が始まります。そう考えると、鉄道事業者には厳しい局面が続きそうで、業績回復は視界不良の状況が続きます。(鎌倉淳)

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