JR西日本の中国地方のローカル線の輸送密度が低すぎる件について、先日、記事を掲載しました(記事)。ローカル線の利用者が少ないことは知られていますが、想像よりもかなり少ないことに衝撃を受けた方もいらっしゃると思います。
では、他のJR各社はどうなのでしょうか。今度はJR四国を調べてみました。JR四国は、JR旅客6社のなかでもっとも鉄道運輸収入が少ない会社です。中国山地も人口が少ないですが、四国山地も多そうには見えません。そうしたエリアを走るローカル線の輸送密度はどの程度なのでしょうか。
JR四国の輸送密度
JR四国は決算資料で、利用者の多い区間と少ない区間の輸送密度を発表しています。2014年3月期の決算資料に示されたのは、以下の路線です。データは2013年度のものです。
▽輸送密度の高い区間
本四備讃線 宇多津~児島 21,716
予讃線 高松~松山 9,463
▽輸送密度の低い区間
予土線 北宇和島~若井 268
予讃線海線 向井原~伊予大洲 387
鳴門線 池谷~鳴門 1,890
牟岐線 徳島~海部 1,968
(いずれも単位:1kmあたり人/日)
まず、芸備線・東城~備後落合の「8」というような衝撃的な数字はありませんでした。とはいうものの、予土線の268もかなり少ない数字です。予土線のなかでも最も利用者が少なそうな県境(近永~江川崎間)を取り出せば、100を割っているかもしれません。
輸送密度「低い順」ランキング
もっと詳細なデータはないか、と探すと、「社会資本整備審議会 道路分科会 国土幹線道路部会 説明資料」というものが見つかりました。高速道路、とくに本四連絡橋の料金値下げで受ける影響に関して、JR四国が国土交通省に提出した資料のようです。日付は2013年4月11日で、ここに2011年度のJR四国の区間別輸送密度が掲載されていました。
この資料を基に、2011年度のJR四国各線の1kmあたり輸送密度を低い順に並べてみましょう。4000人/日までをランキングにしてみました。
(単位:人/日)
1位 予土線 北宇和島~若井 252
2位 牟岐線 牟岐~海部 283
3位 予讃線海線 向井原~伊予大洲 406
4位 牟岐線 阿南~牟岐 722
5位 土讃線 須崎~窪川 1,216
6位 鳴門線 池谷~鳴門 1,646
7位 土讃線 琴平~高知 2,680
8位 徳島線 佐古~佃 2,980
9位 予讃線山線 松山~宇和島 3,249
10位 高徳線 引田~徳島 3,490
11位 内子線 内子~新谷 3,806
※資料では正確な区間を明示していませんが、掲載されている地図からおおよそ推定できます。上記の区間は地図を見た上での筆者の推測です。細かい部分は異なっている可能性があります。
土讃線の苦戦が浮き彫りに
JR西日本のローカル線に比べれば、輸送密度500以下の区間は少なく、「JR四国は意外と大丈夫だな」などと考えてしまいそうです。しかし、冷静にみれば、多くの区間で「特定地方交通線レベル」の輸送密度4,000を割り込んでいます。
とくに目を引くのが土讃線の琴平~高知間の「2,680」という数字。本州から県庁所在地高知へ向かう区間で、特急も走っているのに、この程度の輸送密度ということには驚かされます。JR西日本の中国山地の路線も厳しい数字でしたが、四国山地の路線も同様に厳しいといえます。
土讃線のこの区間は山岳路線であるがゆえに列車の高速化が難しく、高速バス相手に苦戦している様子が浮き彫りになったといえます。上記のランキング外ですが、土讃線は高知~須崎が4,122で、平野部では数字がよくなっています。
ランキング1位、2位は予土線と牟岐線の末端区間で、どちらも輸送密度200台です。いつ廃止されてもおかしくない数字といえるでしょう。
輸送密度「高い順」ランキング
一方、同じ資料で、JR四国で輸送密度の高い区間は、以下の通りです。
(単位:人/日)
1位 予讃線 高松~多度津 22,179
2位 本四備讃線 宇多津~児島 20,537
3位 予讃線 多度津~観音寺 9,189
4位 予讃線 今治~松山 7,083
5位 予讃線 観音寺~今治 5,488
6位 土讃線 多度津~琴平 5,282
JR四国の経営が、瀬戸大橋線と予讃線頼りであることがわかります。この資料によりますと、全体の収入の4割を本州連絡関連に依存しているということです。
乗って残そうJR四国
JR四国全体の平均輸送密度は2013年度のデータで4,535にまで落ち込んでおり、輸送密度4,000を超える区間は4割にも満たない、というのが現状です。人口減少を考えれば、将来的に会社平均が「特定地方交通線レベル」になってもおかしくありません。
これだけ全体の数字が低いと、どのローカル線が危ない、というような話ではない気がします。いくら経営安定基金があるとはいえ、新幹線も大都市近郊区間も持たないJR四国は、今後も大変そうです。
乗って残そうJR四国。みなさん、次の旅は四国へどうぞ。