JR北海道の路線見直し問題で、北海道の有識者会議による検討結果が公表されました。当初報じられた「5段階のランク付け」は行われなかったものの、維持困難とされる12線区について、論点が示されています。
最終報告に向けた論点整理
北海道では、道内鉄道網の方向性を検討する有識者会議「鉄道ネットワーク・ワーキングチーム」が、鉄道網のあり方に関する考え方について検討してきましたが、このほど、最終報告に向けた論点整理が行われました。
2018年2月3日付でまとめられた資料によりますと、「新幹線札幌開業が予定される2030年度を念頭に、中長期的かつ全道的な観点から」鉄道網の検討を行うとしています。
持続的な鉄道網の確立に向けた基本的な考え方として、「JR北海道の徹底した自助努力を前提に、国の実効ある支援とともに、地域においても可能な限りの協力、支援を行うことが重要」としました。国も道も市町村もJRも、みんなで協力しよう、ということです。
個別線区のあり方を整理
こうした前振りの後、「鉄道網(維持困難線区)のあり方」として個別線区について記しています。全文を転載しましょう。なお、路線名については、当サイトによる便宜的な呼称を一部用いています。
<道央・道南地域>
(1)札沼北線(北海道医療大学~新十津川間:47.6km)
・ 他の交通機関や利用の状況などを踏まえる必要。
(2)日高北線(苫小牧~鵡川間:30.5km)
・ 他の交通機関や利用の状況などを踏まえる必要。
(3)日高南線(鵡川~様似間:116.0km)
・ 線路と海岸線が近く、自然災害が頻発するなど厳しい環境に置かれた路線。
・ 利用状況や、昨年11月に公表されたバスやDMV等に関する調査結果を踏まえる必要。
(4)室蘭東線(沼ノ端~岩見沢間:67.0km)
・ 他の交通機関や利用の状況などを踏まえる必要。
・ 貨物輸送のあり方について、地域での検討・協議と並行して、関係機関による議論が必要。
<道北地域>
(5)宗谷北線(名寄~稚内間:183.2km)
・ ロシア極東地域と本道との交流拡大の可能性を見据える必要。
・ 国土形成や、本道の骨格を構成する幹線交通ネットワーク。
(6)根室北線(滝川~富良野間:54.6km)
・ 利用状況や農産物輸送を一部担っていることを踏まえる必要。
・ 貨物輸送のあり方について、地域での検討・協議と並行して、関係機関による議論が必要。
(7)根室中線(富良野~新得間:81.7km)
・ 圏域間のネットワーク形成などの観点に十分配慮が必要。
(8)富良野線(富良野~旭川間:54.8km)
・ 現状の観光利用だけで、鉄道を維持していくことは難しい。
・ 関係機関が一体となって、観光路線としての特性を発揮するよう取組を行う必要。
(9)留萌線(深川~留萌間:50.1km)
・ 利用状況や、2019年度の高規格幹線道路の全線開通などを踏まえる必要。
<道東地域>
(10)石北線(新旭川~網走間:234.0km)
・ 国土形成や、本道の骨格を構成する幹線交通ネットワーク。
・ 貨物輸送のあり方について、地域での検討・協議と並行して、関係機関による議論が必要。
(11)釧網線(東釧路~網走間:166.2km)
・ 現状の観光利用だけで鉄道を維持していくことは難しい。
・ 関係機関が一体となって、観光路線としての特性を発揮するよう取組を行う必要。
(12)花咲線(釧路~根室間:135.4km)
・ 北方領土隣接地域における鉄道の役割を十分考慮する必要。
・ 国の北方領土対策や高規格幹線道路整備の状況も踏まえる必要。
ランク付けに近い記述に
今回の論点整理では、当初、5段階に分けた「ランク付け」がなされるとの報道がありました。しかし、自治体からの反発が強かったからか、最終的にそうしたランク付けはなくなり、「個別線区について、存廃など直接結論を出すものではない」という前提にされています。
ただ、個別文面を見ると、記述に強弱があり、実質的にはランク付けに近い方向性が示されていると見ていいでしょう。
それを整理すると、以下のように分けられます。
1 幹線交通
宗谷北線、石北線
2 鉄道の役割を十分考慮
花咲線
3 観光路線として取り組み
富良野線、釧網線
4 貨物輸送のあり方を議論
室蘭東線、根室北線
5 圏域間に配慮が必要
根室中線
6 利用状況を踏まえる必要
札沼北線、日高線全線、留萌線
筆者なりに記述を読み解くと、上記の6段階に見えますが、「5と6」は存続が難しいという意味ではほぼ同じカテゴリです。
有識者会議の結論としては、1、2の宗谷北線、石北線、花咲線は維持し、5、6の根室中線、札沼北線、日高線、留萌線の廃止は受け入れる、という方向に見えます。
それ以外の路線については、どの程度の負担を受け入れるか、国や道、地元自治体などで議論が必要という「論点」を示したのではないでしょうか。(鎌倉淳)