JR北海道が、ローカル線の整理に本格的に乗り出すようです。「利用者が少なくJRだけでは維持するのが難しい路線」を2016年秋までに公表する方針を固めたそうです。NHKや北海道新聞が報じ、JR北海道が発表しました。
路線の廃止を含めて協議する方針
NHK2016年7月27日付によりますと、「JR北海道は鉄道事業の抜本的な見直しのため、2016年秋までに、JRだけでは維持するのが難しい路線を公表したうえで、沿線の自治体などと路線の廃止を含めて協議する方針」を固めたとのことです。
そのうえで、路線を廃止してバスなどほかの交通機関に代替できるかどうかや、自治体などが駅舎や線路などの施設を保有しJRが運行する「上下分離方式」の導入などについて沿線の自治体と協議する方針だそうです。
廃線ありきではない
北海道新聞2016年7月28日付によりますと、「廃線ありきではなく、減便、運賃引き上げなどによる路線維持や地元負担の可否なども話し合った上で、持続可能な道内鉄道網を決めたい考え」としています。
具体的には、「単独での路線維持が可能な路線と困難な路線」をJRが公表したうえで、「困難な路線」については市町村に呼びかけ、線区ごとに協議会など話し合いの場を設けるとのことです。
道新では、「JRはこれまで、廃止する路線や駅などを決めた後で関係自治体などとの協議を行っていたが、反発を招きやすいため、今後は地元との協議を先行させる方式にあらためる」と報じています。
こうした報道を受け、JR北海道は7月29日に島田修社長が記者会見。秋までに各路線について自社単独で維持が可能か困難かを公表したうえで、沿線の自治体と維持やコスト負担などについて協議する方針を明らかにしました。
JR北海道が、ローカル線の整理に着手していることは、この2~3年で明らかになっていますが、いよいよその対象路線が公表されることになります。
JRは選別をおこなわない
JR北海道で廃止が検討されそうな路線については、「JR北海道はどこまで廃線にするのか」で記事にしました。おおざっぱにいって、札沼北線、石勝線夕張支線、留萌線、日高線は廃止が視野に入っており、根室線滝川~新得、宗谷北線、花咲線、釧網線あたりは微妙、という状況にみえます。
ただ、上記のNHKや道新の報道が事実なら、JR北海道は赤字ローカル路線について、自社で廃止・存続の選別をおこなわず、自治体にその判断を委ねる姿勢に転じたようです。
つまり、JR北海道は、輸送密度の低い路線について、一律に「どうしましょうか?」と自治体にボールを投げ、「バス転換」か「上下分離」、あるいは「補助金による赤字補填」などを選ばせることになるのでしょう。
となると、「微妙」だった宗谷北線や花咲線も、この協議対象になるのは間違いありません。協議対象に組み込まなければ、それじたいが「JRによる選別」になってしまうからです。
JRが第二種鉄道事業者に?
では、この協議は、今後どのように進むのでしょうか。筆者の予想ですが、まずは輸送密度500人キロの上記8区間について、JRが協議を自治体に要請していくとみられます。
自治体がそれに応じれば「バス転換」か「上下分離」かなどが話し合われますが、輸送密度が特に低い札沼北線、石勝線夕張支線はバス転換の方向に進まざるを得ないでしょう。
留萌線、日高線、根室線富良野~新得間、宗谷北線、花咲線、釧網線については、協議が難航しそうです。そのため、こうした「ローカル幹線」は、まず上下分離の検討が軸になるのでは、と予想します。
上下分離の内容については明らかではありませんが、沿線自治体が第三種鉄道事業者となり、JR北海道が第二種鉄道事業者になる案が検討されるようです。
とはいえ、JR北海道が第二種事業者になったとしても、大きな赤字が生じるのは間違いありません。そのため、第二種事業者も第三セクターになる可能性もありそうです。
判断を自治体に丸投げ
今回のJR北海道が提案する「協議」は、要するに、宗谷北線や花咲線といった「JRの一存では廃止を決断しづらい路線」について、判断を自治体に丸投げするスキームに見えます。JR北海道が単独の運営を断念するという点において、事実上の廃止宣告に近いものといえるでしょう。
JR北海道の窮余の策と感じられますが、輸送密度の極端に低い路線を維持するのが困難なこともまた事実です。JR北海道が投げるボールに、自治体はどう対応するのでしょうか。(鎌倉淳)