北陸新幹線金沢~敦賀間の建設費が大幅増。「再評価」4カ月後に判明

2割近くも上振れて

建設中の北陸新幹線金沢~敦賀間の建設費が、2000億円以上も膨らむ見込みであることがわかりました。4カ月前に事業の再評価を終えたタイミングでの事業費上振れの公表です。

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人件費・資材費の高騰で

北陸新幹線金沢~敦賀間の建設費は、現行計画で1兆1858億円です。ところが、2018年7月26日に国土交通省が自民党の作業部会で報告したところによりますと、工事費は2,260億円の上振れが見込まれ、総額で1兆4000億円を超える見通しとなりました。約19%増えることになります。

人件費や資材費の高騰や、消費税の10%への引き上げ、東日本大震災を受けて耐震設計基準を強化したことなどが影響したためとしています。

人件費や資材費の高騰は見通せなくともやむを得ない部分はありますが、それにしても「2,260億円」というのは、大きな数字です。建設費の高騰は、そのまま国や地元負担の増加につながります。

新九頭竜橋
新九頭竜橋。画像:福井県

「事業の再評価」をしたばかり

ところで、北陸新幹線の敦賀延伸事業については、2018年3月に「北陸新幹線(金沢・敦賀間)事業に関する再評価報告書」が公表されたばかりです。

公共事業の再評価は、事業採択後5年経過した時点で行うことが定められています。社会経済情勢の変化、投資効果、進捗状況など事業必要性や、事業の進捗の見込み、コスト縮減の可能性などの視点に基づいて、事業の再評価を行うものです。

国土交通省では、再評価の結果によって、「必要に応じて見直しを行うほか、事業の継続が適当と認められない場合には事業を中止する」としています。

北陸新幹線敦賀延伸認可は2012年6月29日なので、5年後の2017年度に再評価が行われ、年度末となる2018年3月に再評価報告書が公表されました。

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費用便益比も変わる?

公表された再評価報告書では、総事業費について「認可時の金額である11,858億円(平成23年4月価格)である。乗換利便性向上設備の追加が決定されたことにより、約250億円増額となっている」と記されているだけです。人件費や資材費の高騰については触れられていません。

そして、同区間の費用便益比を開業後50年で1.0と試算し、残事業の投資効率性については1.3としています。しかし、今回の建設費見直しを織り込めば、数字が変わる可能性もあるでしょう。何しろ建設費が2割近くも増えるのです。

報告書には「総事業費の縮減は、事業効率性向上に直結することから、従来から積極的に取り組んでおり、今後とも更なるコスト縮減に向けて努力していく」と記されています。しかし、現実には、報告書公表のわずか4カ月後に、総事業費やコストの縮減どころか、大幅に増えることが発表されたわけです。

まさか、再評価後を見計らって事業費上振れを公表したのではないと信じたいところです。しかし、2,000億円もの建設費上振れが、この4ヶ月間で急に判明するものなのか、と思わなくもありません。

新大阪延伸は大丈夫か

人件費増や資材の高騰は昨年度の段階ですでに社会的に顕在化しており、消費税増税も予定されていたことです。こうした「社会経済情勢の変化」を織り込まない「再評価」に、いったい何の意味があったのか、不思議で仕方ありません。

北陸新幹線は、今後、敦賀~新大阪間の建設が予定されており、その建設費は2兆1000億円と試算されています。

これが最終的に3兆円もかかったりしないのか。心配しているのは、筆者だけでしょうか。(鎌倉淳)

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