北海道で外国人観光客はどこへ行く? 登別、洞爺湖、ニセコに人気集中

道東へ足を伸ばすのは数パーセント

北海道を訪れる外国人観光客が増えています。2016年度は5年連続で過去最高を記録。国別ではマレーシアと韓国が高い伸びになっています。殺到する外国人旅行者は、北海道のどこを訪れているのでしょうか。

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訪日客の10人に1人が北海道へ

北海道が発表した2016年度の観光入込客数調査報告書によりますと、同年度に北海道を訪れた外国人旅行者は230万人。15年度と比べ10.6%増で、5年連続で過去最高を更新しました。

これは日本全体の2016年度外国人旅行者数2482万人の9.3%を占めています。おおざっぱにいって、訪日外国人旅行者の10人に1人が北海道を訪れている計算になります。

また、北海道の観光客における外国人旅行者の占める割合は、4.6%となっています。これもおおざっぱにいうと、北海道の観光客の20人に1人が外国人という計算です。

ニセコ

中国と台湾で過半数

多いのはアジア地域からで、202万6500人が北海道の土を踏みました。中国が54万人、台湾が52万人で、この両国・地域で全体の46%を占めます。

調査対象となっている国・地域別でランキングを作ってみると、以下のようになります。( )内は前年度比です。

1位 中国 54万6600人(▲1.4%)
2位 台湾 52万9600万人(▲3.3%)
3位 韓国 42万4300人(△41.7%)
4位 香港 17万800人(△3.5%)
5位 タイ 16万8700人(△8.7%)
6位 マレーシア 12万5800人(△64.9%)
7位 アメリカ 6万5100人(△23.5%)
8位 シンガポール 6万700人(△21.9%)
9位 オーストラリア 4万8200人(△3.7%)
10位 カナダ 2万100人(△24.8%)
11位 ロシア 1万300人(△1.0%)

※参考値として、インドネシアが2万6000人、フィリピンが1万1500人、イギリスが1万1500人となっています。

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LCCが観光客を呼ぶ

統計を見ると、韓国とマレーシアからの観光客が急増していることがわかります。

マレーシアからの観光客急増は、2015年に就航したエアアジアによるクアラルンプール・新千歳空港直行便の影響が大きいようです。これにあわせて北海道もマレーシアでの観光PRに力を入れたことから、観光客が急増しました。マレーシアの訪日観光客の約31%が北海道を訪れたそうです。

韓国については、もともと訪日観光客が増加傾向にあったうえに、アシアナ航空やチェジュ航空による新規路線の就航や増便が相次いだことで訪れやすくなったことが理由とされています。マレーシアよりも訪日客の絶対数が多いため、全体の北海道訪問者数押し上げの牽引役となりました。

マレーシア、韓国どちらも、航空路線の開設や増便が旅行者増に直結しています。とくにLCCは観光客誘因効果が大きいようです。

台湾は他国へ分散

かつて北海道の外国人観光客の主役だった台湾は頭打ちです。これもLCCが理由で、台湾から東南アジア各地へのLCC路線が拡大したことなどで、外国旅行需要が周辺諸国へ分散したとのことです。

また、トランスアジア航空の解散によって、北海道への直行便の座席供給量が減少したこともマイナス要因となったことです。

最大勢力の中国は微減となってますが、前年度、前々年度と急増したので、その反動のようです。新千歳空港で増便があった一方、函館空港や旭川空港への直行定期便が運航休止したことなどが影響しました。

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道東訪問客は少ない

外国人旅行者は北海道のどこを訪れたのでしょうか。圏域別の宿泊延べ数で見てみると、道央圏が463万人泊の72.9%で圧倒的です。次いで道北圏、道南圏、釧路・根室圏、十勝圏、オホーツク圏の順となっています。

2016年度は台風の影響があり、十勝圏、釧路・根室圏、オホーツク圏が減少した一方、道北圏、道央圏、道南圏が増加しました。なお、この調査では、上川・留萌・宗谷の3振興局は「道北圏」に分類しているようですので、旭川市や層雲峡は道北です。

1位 道央圏 463万人(△3.5%)
2位 道北圏 79万人(△8.1%)
3位 道南圏 48万人(△0.6%)
4位 釧路・根室圏 16.4万人(▲2.2%)
5位 十勝圏 16.0万人(▲14.3%)
6位 オホーツク圏 11万人(▲0.8%)

オホーツク圏を訪れた観光客は、全体の1.9%。釧路・根室圏は2.6%に過ぎません。

滞在市町村、国別ランキング

市町村別に見ると、札幌市が251万人泊で最も多く、次い登別市が48万人泊、函館市41万7000人泊、倶知安町35万4000人泊、洞爺湖町28万2000人泊と続きました。

観光客の国別に市町村滞在日数をみると、訪れるエリアの傾向が異なります。宿泊延べ数の多い市町村を、国別にランキングしてみましょう。

■中国
1位 札幌市 60.9万人泊
2位 登別市 8.6万人泊
3位 函館市 8.4万人泊
4位 洞爺湖町 8.3万人泊
5位 旭川市 7.4万人泊

札幌の滞在日数が長く、そのほか、登別、洞爺湖といった道央の温泉地が好みのようです。

■台湾
1位 札幌市 50.8万人泊
2位 函館市 22.3万人泊
3位 登別市 17.4万人泊
4位 上川町 9.7万人泊
5位 洞爺湖町 9.2万人泊

函館の滞在者数は、中国の2倍以上です。台湾人には函館の夜景、登別の温泉、層雲峡が人気のようです。

■韓国
1位 札幌市 46.3万人泊
2位 登別市 9.8万人泊
3位 壮瞥町 3.5万人泊
4位 洞爺湖町 3.5万人泊
5位 小樽市 2.8万人泊

全体的に、道央エリアに集中しています。壮瞥町が多いのも特徴的です。韓国人がよく泊まるホテルでもあるのでしょうか。

■香港
1位 札幌市 25.0万人泊
2位 倶知安町 6.5万人泊
3位 登別市 4.0万人泊
4位 ニセコ町 3.3万人泊
5位 小樽市 2.9万人泊

スキー・スノボ客が多いようで、倶知安町、ニセコ町といったスキーエリアが上位に入りました。

■タイ
1位 札幌市 19.6万人泊
2位 旭川市 2.2万人泊
3位 上川町 2.1万人泊
4位 函館市 1.9万人泊
5位 小樽市 1.5万人泊

札幌市に集中していることと、登別や洞爺湖といった他国に人気の温泉エリアがランク外なのが特徴です。札幌以外では、旭川市、上川町の訪問客が多いです。

■シンガポール
1位 札幌市 10.5万人泊
2位 倶知安町 4.1万人泊
3位 函館市 1.5万人泊
4位 ニセコ町 1.482万人泊
5位 登別市 1.480万人泊

香港と似てスキー・スノボ客が多いようで、倶知安町、ニセコ町が2位、4位に食い込みました。

■オーストラリア
1位 倶知安町 9.7万人泊
2位 札幌市 2.8万人泊
3位 ニセコ町 2.4万人泊
4位 富良野市 1.7万人泊
5位 新得町 1.1万人泊

倶知安町、ニセコ町、富良野市、新得町と、スノーリゾートのある市町村が並びました。宿泊延べ数で倶知安が札幌の3倍という数字を見ると、ニセコでスキー・スノボのために長期滞在している様子がうかがえます。

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温泉とスキー・スノボが人気?

全体では、札幌市、登別市、函館市、倶知安町、洞爺湖町がベスト5です。札幌市は別格として、函館から道央にかけての温泉地とスキー・スノボエリアが、外国人にとっての「北海道ベストルート」になっていることがうかがえます。

「温泉&スキー」というと、日本人向けに思えてしまいますが、リゾートとしての普遍的に高い価値を持っているのかもしれません。

登別、洞爺湖、倶知安・ニセコに人気が集中する一方で、釧路、根室、網走といった、道東エリアを訪れるのは2~3%にすぎません。

逆にいえば、こうしたエリアは、まだまだ外国人観光客にとってはフロンティアなわけで、これから伸びる余地があるといえそうです。(鎌倉淳)

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