不通が続いているJR津軽線蟹田~三厩間について、沿線自治体の外ヶ浜町長が自動車交通への転換を検討する意向を示しました。仮にこの区間が廃止されると、青春18きっぷ北海道新幹線オプション券が使えなくなりそうですが、どうなるのでしょうか。
「バス転換に賛成」
JR津軽線は2022年8月の大雨で蟹田~三厩間が被災し、現在も不通が続いています。JR東日本と沿線自治体が今後の地域交通のあり方について協議をしており、JRはバスや乗合タクシーなどの自動車交通への転換を提案しています。
沿線の基礎自治体は外ヶ浜町と今別町ですが、外ヶ浜町はすでに鉄道での復旧にこだわらない姿勢を示しています。12月3日に開かれた町内の意見交換会で町民の意見を聞いた山崎結子町長は、「外ヶ浜町はバス転換には賛成だと表明をしていく」と述べ、自動車交通への転換へ向けた具体的な検討に入る姿勢を表明しました。
もうひとつの沿線自治体である今別町は鉄道の維持を求めているので、津軽線蟹田~三厩間の存廃はまだ正式に決まっていません。しかし、同区間の輸送密度がきわめて低いこともあり、鉄道での復旧見通しは厳しくなっています。
オプション券が利用不能に?
地域住民の方にとっては、日常の足がどうなるかという重要な問題です。地域住民の方にとっての利便性が最も重要であることは承知の上ですが、ここでは、あまり重要でない、「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」について考えてみます。
青春18きっぷ北海道新幹線オプション券は、青春18きっぷで津軽海峡区間を渡る際に、北海道新幹線の奥津軽いまべつ~木古内間と、道南いさりび鉄道の木古内~五稜郭間を利用できるチケットです。価格は2,490円です。
奥津軽いまべつ駅へは、同駅と隣接している津軽二股駅まで津軽線を利用します。津軽二股駅は蟹田~三厩間にありますので、この区間の鉄道が廃止されたら、奥津軽いまべつ駅へJR在来線でアクセスすることができなくなります。
つまり、オプション券が利用不能になってしまうかもしれないのです。
3つの対処方法
これに対し、JR側の対処方法として考えられるのは、以下の3つです。
まず、オプション券での北海道新幹線の利用区間を新青森~木古内間に拡大する方法です。オプション券の価格は当然値上げされるでしょう。しかし、本州側の接続駅が新青森駅になれば、旅行者としてはアクセスしやすくなります。
奥津軽いまべつ駅の停車列車が少ないのに対し、新青森駅は全列車が停車します。したがって、オプション券の区間が拡大すれば、津軽海峡区間で利用できる新幹線の本数も激増します。したがって、旅行者としては、もっとも望ましい形での対処方法でしょう。
次に、オプション券そのものを廃止してしまう方法です。旅行者は青春18きっぷで津軽海峡区間を渡ることができなくなり、フェリーや新幹線に各自別料金を払って利用することになります。
最後が、蟹田~奥津軽いまべつ間に設定されるであろう代替バスに、青春18きっぷで乗車できるようにする方法です。同様の事例としては、三陸エリアや日田彦山線のBRTが挙げられます。
「代替バス案」になる?
何も決まった事実はありませんが、筆者の個人的な予想として、もっとも可能性が高いのは、最後の「代替バス案」ではないかと思います。
JRは、津軽線蟹田~三厩間の自動車交通への転換を提案していますが、引き続き公共交通機関として関わりを残す姿勢を示しているようです。代替バスを運行する場合、JRが引き続き手がけるということです。
地元自治体としても、代替交通がJRのネットワークに残ることを望むでしょう。となると、蟹田~三厩間は、バス転換しても、引き続き「JR線」であり続けることになります。この場合、三陸や日田彦山線BRTのように「青春18きっぷで乗車可」とすることに支障はありません。
他の事業者のバスに転換して「JR線」でなくなってしまう可能性もあるでしょうが、その場合も、特例で、この区間のみ他社代替バスに乗車可とすることはできるでしょう。
使い勝手は変わる?
では、実際に蟹田~奥津軽いまべつ間がバス利用になった場合、北海道新幹線オプション券の使い勝手はどう変わるのでしょうか?
蟹田での列車とバスの接続にもよりますが、きちんと接続を取るのであれば、使い勝手が大きく悪くなることはないでしょう。ただし、奥津軽いまべつ駅での新幹線との接続が改善されない限り、使い勝手が良くなることもないでしょう。
現状では、オプション券利用の場合、津軽海峡区間全体の乗り継ぎが悪く、したがって使い勝手も悪いです。そのため、蟹田~奥津軽いまべつ間がバスになったところで、いまより使いにくくなる余地はそれほどないのではないか、という気もします。
そもそも形式的
そもそも、現状、新幹線と在来線の酷い乗り継ぎを放置していることからみても、JRがオプション券を積極的に売ろうとしている気配はありません。
「青春18きっぷでJR全線がつながっている」ことを示す目的の、いわば形式的なきっぷの気配すら漂います。であるなら、バス転換後に実用性を高めることはせず、「つながっている」形式を整えるにとどめるのではないか、と思われます。
その点で、実用性を高める「新青森拡大案」や、つながっている形式を失う「オプション券廃止案」は、採用されないのではないか、という気がします。(鎌倉淳)