城端線・氷見線「再構築計画」の全詳細。JR西日本から分離、あい鉄に移管へ

新型車両も導入

城端線・氷見線の再構築実施計画がまとまりました。JR西日本から分離し、あいの風とやま鉄道へ移管することなどが柱です。内容の詳細をみていきましょう。

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城端線・氷見線46kmを再構築

鉄道事業の再構築事業を実施するのは、城端線高岡~城端間29.9kmと氷見線高岡~氷見間16.5kmの、あわせて46.4kmです。輸送密度は城端線が2,481人、氷見線が2,157人です。

再構築事業は、2023年10月に施行された改正地域公共交通活性化再生法の枠組みを使います。再構築計画の期間は2024年2月ごろから2034年3月までの約10年間です。

城端線

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JRからあい鉄へ移管

再構築の最大のポイントは、事業主体の変更です。城端線・氷見線の事業主体をJR西日本から、あいの風とやま鉄道(あい鉄)へ変更します。

事業主体変更前に、JR西日本は、新型鉄道車両の導入や交通系ICカード対応などの投資をおこないます。新型鉄道車両導入完了の時期をメドに、あい鉄がJR西日本にかわり、城端線・氷見線の事業主体となります。

新型車両導入完了は、計画開始の5年後を予定しています。したがって、2029年4月頃をメドに、城端線・氷見線がJR西日本から分離されることになります。

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電気式気動車を導入

新型車両は、現在のキハ 40・47 系に代わり、電気式気動車などの新しいタイプの気動車を導入します。

国内のJR路線で導入されている普通列車用の形式としては、JR東日本で営業投入されているGV-E400系や、JR西日本の量産先行車DEC700形などがあります。

城端線・氷見線でどのような形式が導入されるかは未定で、車両メーカーの技術開発の動向を踏まえて決定します。車両数は34両とし、現在より10両増やします。車両の増備は、後述する増便に対応するためです。

そのほか、冬季の安全安定運行を図るため、除雪用保守用車も1台導入します。

GV-E400系羽越線
GV-E400系

 
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駅ホームをかさ上げ

新型車両導入にあわせて、駅のホームの高さを760mmから920mmにかさ上げし、車両乗降時の段差を解消します。

また、内方線付き警告ブロックを整備し、視覚障がい者のホームからの転落防止などの安全対策を図ります。

内方線付き警告ブロックとは、点状ブロックの内側に安全側を示す1本線を追加し、ブロックのどちら側が線路かがわかるようしたものです。

毎時2本を運行

列車本数も増やします。朝夕の通勤・通学時間帯に増便と増車を実施するほか、日中の時間帯にも増便し、現行の毎時約1本の運行を約2本の運行とします。

高岡駅における城端線と氷見線の接続時間も短縮します。さらに、パターンダイヤなど、利用しやすいダイヤを取り入れます。

現在、朝の時間帯に、JR城端線からあい鉄に乗り入れしている2本の列車は、現在と同規模の定員を確保して運行を継続します。

日中の時間帯のパターンダイヤ導入に向け、車両の速度向上を図るため分岐器を改良します。新型車両の加速性能の向上にともない、踏切鳴動の改修や、ATSの移設もおこないます。

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全駅交通系ICカード対応に

交通系 IC カードへの対応に関しては、あい鉄への移管前に、城端線・氷見線の全駅に交通系 IC カードに対応した改札機などを設置します。これにより、すでに交通系 IC カードに対応しているあい鉄など他路線とのシームレスな乗り継ぎを実現します。

事業主体の変更にともない、指令の移転、気象監視システムの整備、券売機の改良、駅案内表示の改修(多言語表記)なども実施します。

事業主体の変更後には、列車の発車時刻や乗り場、接近表示をおこなう旅客案内システムを導入します。列車のリアルタイム運行情報をインターネットで提供します。

軌道については、現在敷設されている古いレールを更新するとともに、木まくら木の3本に1本を PCまくら木に更新します。各駅の連動装置の更新なども実施します。

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城端線・氷見線の直通運転も

城端線と氷見線の直通運転も実現する予定です。そのため、ターミナルの高岡駅を改良します。

城端線と氷見線の直通運転に関しては、高岡市などが過去に検討しています。2017年度の「城端線・氷見線直通化の課題整理」によりますと、現況の城端線・氷見線の直通列車は城端線ホームを使用するため、氷見方面の列車があい鉄の上下線と支障しています。

また、城端線・氷見線が単線であり、交換駅が限定されていることや、高岡駅を通過するJR貨物も考慮した信号システムとなっていることから、ダイヤ設定に制約があります。

高岡駅改良は、こうした状況を改善するためのものです。しかし、高岡駅構内は、あい鉄と城端線・氷見線、車両検修庫、JR貨物線を考慮した複雑な配線となっていて、直通化のための配線を完成するまでに、線路の切り替えを6回も要する大事業になります。

そのため、直通化には37.8億円もの費用が見込まれています。移管前に検討をおこなうものの、直通化の実現はあい鉄移管後になる見込みです。

そのほか、過去の「課題整理」では、「新高岡駅の複線化」も検討しています。実現すれば「南北両方向に接続するダイヤの設定が可能となるほか、高岡・新高岡駅間のシャトル運行も可能となるなど、より効率的なダイヤの実現の可能性がある」としています。ただし、新高岡駅の複線化については、再構築計画で触れられていません。

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連携交通も整備

城端線・氷見線の再構築では、駅周辺や連携する交通機関の整備にも力を入れます。各駅周辺の駐車場や駅前ロータリーを整備するほか、鉄道利用者の駐車場割引制度の導入などにより、パーク&ライドを推進します。

駅を起点とした市街地周遊バスを運行したり、まちなかを回遊するモビリティを整備し、鉄道と連携した利便性向上もはかります。

市営バス路線も再編するほか、デマンド型乗合交通の運行範囲も拡大し、鉄道ダイヤとの接続を改善、強化します。

アニメのモニュメントも

路線バスが駅へ乗り入れられるよう、駅へのアクセス道路も整備します。駅の空調設備を整備するなど環境改善も図り、駅空間の活用を促す取り組みも進めます。

駅から中心市街地や観光施設に至る街路に、アニメキャラクターのモニュメントを設置するなど、鉄道を利用して訪れる観光客が散策を楽しめる環境も整備します。

モニュメントの詳細は明らかではありませんが、氷見線沿線は藤子不二雄両氏の出身地でもあり、ドラえもんや忍者ハットリ君などが対象になりそうです。

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総額341億円

再構築にかかる鉄道施設整備費用は、総額で約341.2億円です。

内訳は新型車両の導入に176億円、運行本数増や車両導入による施設改良に44.8億円、ICカード対応に4.6億円、移管にともなう整備に13億円、既存設備の再整備に50億円、直通化に37.8億円、旅客案内システムの整備に15億円となっています。

城端線・氷見線再構築
画像:第4回城端線・氷見線再構築検討会資料

鉄道施設整備費については、社会資本整備総合交付金や、先進車両導入支援等事業などの補助制度を活用し、県、沿線4市、JR 西日本が負担します。

このほか、「城端線・氷見線経営安定基金(仮称)」として40億円を準備します。

JR 西日本は総額で150億円を拠出し、このうち86億円を鉄道施設整備費に充当します。残りは事業主体の変更時に経営安定基金に拠出します。計画の変更や延長が生じても、JR西日本の拠出額は増減しません。

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利用者25%増目指す

再構築により、利用者数は増加を見込みます。2022年度は1日9,609人でしたが、2033年度には1日12,000人以上を目指します。割合でいえば25%増です。

路線の収支は、10億8600万円の赤字から、7億600万円の赤字にまで縮小を目指します。

城端線・氷見線収支予測
画像:第4回城端線・氷見線再構築検討会資料

 

移管後5年間は、この収支差(7億600万円)を、基金からあいの風とやま鉄道へ支援します。合計で約36億円です。

移管6年後からは、経営状況を踏まえて沿線自治体が支援額を決めます。JR西日本は、当初拠出した基金の残額(46億円)の範囲内で経営支援をします。

要するに、6年目以降は、自治体予算とJR西日本の基金で赤字を補填することになります。

ここに国の補助金が入らないことは、ポイントの一つです。国は、鉄道施設整備に対しては、最大2分の1の補助にくわえて交付税措置もするという手厚い支援を用意していますが、欠損補助(赤字補填)は一切しません。

城端線・氷見線経営安定基金
画像:第4回城端線・氷見線再構築検討会資料

 

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モデルケースに

城端線・氷見線の再構築は、国の補助を存分に活かし、JRの協力のもと、しっかりした内容にまとまっていると感じられます。これだけの内容を短期間の協議で合意できたのは、沿線自治体が過去にLRT化などを含めた活性化策を検討してきた経緯があるからでしょう。

鉄道施設整備の約340億円は、ローカル線への投資としては巨額にみえます。しかし、10年間の総額なので、1年あたりなら34億円、1kmあたりなら年7400万円程度に過ぎず、地域の公共交通機関維持に投じる金額としてみれば、合理的な範囲と解釈することもできるでしょう。利用者が大幅に増えるのであれば、公共事業としては割に合う金額です。

全国に先駆けて実施されるこの計画、今後のローカル線再構築のモデルケースにもなりそうです。(鎌倉淳)

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