本州と北海道の間にはさまざまな会社のフェリーが就航しています。全てのフェリー航路と所要時間、価格、格安利用術などを比較しながらまとめてみましょう。
6社13航路
まずは、本州~北海道間のフェリー航路を一覧表にしてみました。6社13航路があります。
旅客運賃はオフシーズンの最低運賃、車両運賃は4m~5mの乗用車の最低運賃を示しています。いずれも時期により価格は大きく変わります。運航本数は1日あたりの標準的なスケジュールを示していて、路線により週1回程度の運休日があります。また、時期により減便や増便がおこなわれることもあります。
航路 | 運航会社 | 所要時間 | 運航 本数 |
旅客 運賃 |
車両 運賃 |
---|---|---|---|---|---|
大間 函館 |
津軽海峡 フェリー |
1時間30分 | 2往復 | 2,320円 | 15,800円 |
青森 函館 |
津軽海峡 フェリー |
3時間40分 | 6往復 | 2,860円 | 19,760円 |
青森 函館 |
青函 フェリー |
3時間50分 | 8往復 | 2,200円 | 17,500円 |
青森 室蘭 |
津軽海峡 フェリー |
7時間 | 1往復 | 5,090円 | 24,550円 |
八戸 苫小牧 |
シルバー フェリー |
7時間30分 | 4往復 | 6,000円 | 28,000円 |
仙台 苫小牧 |
太平洋 フェリー |
15時間 | 1往復 | 9,500円 | 29,500円 |
大洗 苫小牧 |
商船三井 フェリー |
18時間 | 2往復 | 9,500円 | 34,000円 |
名古屋 苫小牧 |
太平洋 フェリー |
40時間 | 1往復 | 12,300円 | 38,900円 |
秋田 苫小牧 |
新日本海 フェリー |
10時間30分 | 1往復 | 5,600円 | 22,200円 |
新潟 苫小牧 |
新日本海 フェリー |
20時間 | 1往復 | 8,500円 | 25,500円 |
新潟 小樽 |
新日本海 フェリー |
16時間30分 | 1往復 | 8,500円 | 25,500円 |
敦賀 苫小牧 |
新日本海 フェリー |
20時間30分 | 1往復 | 12,000円 | 37,500円 |
舞鶴 小樽 |
新日本海 フェリー |
21時間 | 1往復 | 12,000円 | 37,500円 |
※運賃は大人1人の最安クラスの最低価格を表示。クラスや季節により変動する。車両は4m~5mの乗用車。
※運航本数は1日あたりの標準的な数字。路線により欠航日あり。
多彩な航路
最も所要時間が短いのが青森県の大間と北海道の函館を結ぶ航路。わずか1時間30分です。もっとも所要時間が長いのが名古屋~苫小牧間で40時間です。
運航本数が多いのは青森~函館間で、2社あわせて1日14往復が運航しています。
順にご紹介していきましょう。なお、運航本数は時期により異なります。また、各航路とも学割や往復割引があり、だいたい10~20%オフとなっていますが、原則として記載は省略しました。乗用車運賃は4m~5mの金額を表示していて、旅客1名を含みます。
大間~函館
最も短い航路が、津軽海峡フェリーの大間~函館間。「ノスタルジック航路」の愛称があり、下北半島先端の大間〜函館を毎日2往復しています。所要時間は1時間30分です。
使用船舶は2013年建造の大函丸で、1,912トンの中型船です。大部屋のカジュアルシートが主体で、旅客運賃は2,320円~3,130円。乗用車運賃は15,800~21,670円です。インターネット予約で10%の割引があります。
どちらかと言えば地元住民向けの航路ですが、旅行者としても、下北半島を観光した後、北海道に渡るというルートを組み立てるのに役立ちます。
大間港は高速道路から離れていて、アクセスが便利ではないので、たんに本州から北海道へ渡るのには、あまり向かない航路です。
青森~函館
本州~北海道間のメイン航路といえるのが、青森~函館間航路です。津軽海峡フェリーと青函フェリーが運航しています。所要時間はいずれも3時間40〜50分です。
両者の違いをおおざっぱにいうと、津軽海峡フェリーが旅客主体の大型フェリー、青函フェリーが貨物主体の中型フェリー、という点です。船内設備は津軽海峡フェリーが充実していて、価格面では青函フェリーが安いです。
津軽海峡フェリーはスタンダードクラスで旅客が2,860円~3,850円、青函フェリーは2等で2,200円~2,700円です。乗用車は津軽海峡フェリーが19,760円~27,100円。青函フェリーが17,500~21,500円です。
津軽海峡フェリーは、インターネット予約で10%割引になります。
青函フェリーは、ウェブサイトで「割引クーポン」を印刷して窓口購入時に提示すれば、割引を受けられます。割引率は時期や対象により異なりますが、10%~20%程度です。
使用船舶は、津軽海峡フェリーは9,000トン級、青函フェリーは3,000トン級です。
どちらも同じ「青函航路」ですが、雰囲気はだいぶ違います。ゆったりした船旅を味わいたいなら津軽海峡フェリー、安く移動するのに徹するなら青函フェリー、という使い分けになるでしょうか。
函館港のフェリーターミナルも異なり、津軽海峡フェリーはJR七重浜駅から1.5km。青函フェリーはJR五稜郭駅から約2kmです。青森港のフェリーターミナルは両者ほぼ同じ位置にあり、いずれも青森駅から約3km程度です。
青森~室蘭
2023年10月開設の新航路。9,000トン級のブルーマーメイドが1日1往復しています。青森発が日中便、室蘭発が夜行便で、所要時間は約7時間です。
運賃は5,090円~6,160円。乗用車の航走料金は24,550~29,700円です。
室蘭側のターミナルはJR室蘭本線室蘭駅より徒歩約15分と、鉄道アクセスは良好です。夜行便は青森港に3時頃に到着するので、夏場なら青森駅まで3kmほど歩けば、始発列車に間に合います。
八戸~苫小牧
川崎近海汽船「シルバーフェリー」が八戸~苫小牧を毎日4往復しています。所要時間は7時間30分。
使用船舶は9,000トン級で、2等から特等まで6種類の船室から選べます。レストランや浴室など、船内設備も充実しています。
本州側と北海道側の両方で高速道路アクセスがいいので、トラックによく使われる航路です。所要時間は8時間で、夜行便も人気があります。
旅客運賃は2等で6,000円。乗用車は28,000円。季節変動がないのが特徴で、オフシーズンの乗用車運賃は、大洗航路と差が小さい場合もあります。
安く乗るには、インターネット予約で、10%の割引となります。旅客向けには高速バスとのセット券として「なかよしきっぷ」があります。青い森鉄道とのセットきっぷは「てつなかきっぷ」です。価格は以下の通りです。
▽札幌・八戸なかよしきっぷ 6,500円
▽札幌・盛岡なかよしきっぷ 8,400円
▽青森・苫小牧てつなかきっぷ 7,200円
仙台~苫小牧
太平洋フェリーが毎日運航しています。所要時間は15時間です。
使用船舶は15,000トン級と13,000トン級で、2等からロイヤルスイートまで、最大9種類の客室があります。船内設備としては、レストラン、大浴場、ラウンジ、カラオケ、ゲームコーナーなどを備えます。
運賃は2等で9,500円~12,400円。乗用車運賃は29,500円~40,000円。期間が4つに分かれていて、時期による価格変動が大きいですが、最低ランク(A期間)が圧倒的に長いです。安く乗るには、インターネット予約やJAF会員割引で、A期間(閑散期)は10%の割引となります。
東北南部から北海道へ快適に旅行できるフェリーです。
大洗~苫小牧
商船三井フェリー「さんふらわあ」が大洗~苫小牧を毎日2往復運航しています。所要時間は18時間です。首都圏と北海道を結ぶメイン航路として知られています。
両港を19時ごろに出発する夕方便と、深夜1時ごろに出発する深夜便があります。一般旅行者に適しているのは夕方便でしょう。目的地に14時ごろに着くので、その日の宿泊地に余裕を以て到着できます。
使用船舶は夕方便が13,000トン級、深夜便が11,000トン級です。設備が豪華なのは夕方便で、レストラン、大浴場、キッズランド、ゲームコーナー、ドッグランなどを備えます。深夜便にはレストランやキッズコーナーなどはありません。
客室は、夕方便がツーリストからスイートまで6種類あります。深夜便はカジュアルとデラックスの2種類のみです。最安値の船室であるツーリストは、夕方便にしかありません。
運賃は、適用期間が5段階に細かく分かれているのが特徴で、季節により価格の差が激しいです。
ツーリストクラスの旅客運賃が9,500円~21,000円。乗用車は34,000円~49,000円です。
安く乗るには、インターネット予約で5%の割引になります。また、フェリーと高速バスがセットになった、「パシフィックストーリー」というプランがあり、東京駅~札幌駅間が9,900~20,000円となっています。
商船三井フェリーには株主優待券があり、1枚で5,000円の割引になります。金券ショップなどで購入できるかもしれません。
名古屋~苫小牧
上述の「仙台~苫小牧」の太平洋フェリーが、隔日で名古屋まで運航しています。所要時間は約40時間で、現時点で国内最長航行時間のフェリーです。19時に出発して、到着は翌々日の11時。2泊3日かかります。
使用船舶は15,000トン級です。2等からロイヤルスイートまで、最大9種類の客室があります。船内設備としては、レストラン、大浴場、ラウンジ、カラオケ、ゲームコーナーなどを備えます。
運賃は2等で12,300円~16,100円。乗用車運賃は38,900円~54,400円。期間が4つに分かれていて、時期による価格変動が大きいですが、最低ランク(A期間)が圧倒的に長いです。安く乗るには、インターネット予約やJAF会員割引でA期間(閑散期)は10%の割引となります。
時期により「早得」などのバーゲンチケットがあり、28日前までの予約で、旅客が最大50%割引、乗用車が最大30%割引になります。オフシーズンのみ、座席数限定の設定です。
途中、仙台に寄港することもあり、所要時間が長く実用面ではやや難がありますが、距離のわりに低価格です。2泊3日の船旅を楽しむつもりなら良い旅になるでしょう。
新日本海フェリーの航路
ここから先は、日本海側のフェリーで、すべて新日本海フェリーの航路です。本州側が秋田、新潟、敦賀、舞鶴の4港で、北海道側が小樽と苫小牧東の2港です。関西(舞鶴・敦賀)と北海道(小樽・苫小牧)は、どちらも同じ運賃となっています。
小樽港は南小樽駅から約1.6kmと近く、小樽駅や小樽築港駅からのバス便もあることから、乗用車なしの旅行者にも利用しやすいです。
苫小牧東港は日高線の浜厚真駅まで1.6kmと近いですが、列車の運行本数は少ないです。港から南千歳駅までの連絡バスがあります。
新日本海フェリーは全体として手頃な価格で利用できますが、割引運賃は少ないです。インターネット割引はなく、安く乗るには往復割引(10%)や学生割引(20%)といった一般的な割引しかありません。
家族旅行の場合は「家族割」、55歳以上には時期により「GOGO割」(15%~25%割引)が設定されています。
2024年6月1日から運賃が改定されます。以下では、改定後の運賃を掲載しています。
秋田~苫小牧
新日本海フェリーが週6往復運航しています。新潟~苫小牧東間のフェリーが、秋田に立ち寄る形です。所要時間は10時間30分で、秋田発が日中便、苫小牧発が夜行便です。
使用船舶は、18,000トン級の大型フェリーで、レストラン、カフェ、大浴場、コンファレンスルーム、ゲームコーナーなどを備えます。
客室はツーリストJからスイートまで8種類あります。大部屋のツーリストJも含めて、ベッド・スペースは指定されています。
ツーリストJの旅客運賃は5,600円~8,800円。乗用車運賃(5m未満)は22,200円~30,600円です。
秋田港へは秋田駅から連絡バスがあります。
新潟~苫小牧
新潟~苫小牧東を週6往復運航しています。一部を除き、途中で秋田に寄港します。そのため所要時間は長めで、約20時間かかります。秋田発が日中便、苫小牧東発が夜行便です。
使用船舶は、秋田~苫小牧航路と同じで、船内設備や客室も同じです。
ツーリストJの旅客運賃は8,500円~13,000円。乗用車運賃は25,500円~36,500円です。
新潟港へは、新潟駅から連絡バスがあります。
新潟~小樽
新日本海フェリーが週6便運航しています。所要時間は16時間30分です。
使用船舶は14,000トン級で、レストラン、カフェ、大浴場、チルドレンルーム、ゲームコーナーなどを備えます。
客室はツーリストCからスイートまで9種類あります。最安値のツーリストCも含めて、全てベッドが備えられています。
ツーリストCの旅客運賃は8,500円~13,000円。乗用車運賃は25,500円~36,500円です。
敦賀~苫小牧
新日本海フェリーが毎日運航しています。直行便と、新潟・秋田への寄港便があります。直行便が原則として毎日運航なので、関西~北海道間の旅行の場合、直行便利用でいいでしょう。所要時間は20時間30分です。
使用船舶は、17,000トン級の大型フェリーで、レストラン、カフェ、大浴場、コンファレンスルーム、ゲームコーナーなどを備えます。
客室はツーリストAからスイートまで8種類あります。最安値のツーリストAも含めて、全てベッドが備えられています。
ツーリストAの旅客運賃は12,000円~20,500円。乗用車運賃は37,500円~50,500円です。
敦賀港へは敦賀駅から連絡バスがあります。
舞鶴~小樽
新日本海フェリーが毎日運航しています。所要時間21時間です。
使用船舶や船内設備、客室は、敦賀~苫小牧航路と同等です。価格も同じです。
舞鶴港へは、神戸三宮や大阪なんばOCATから連絡バスが運航されていて、東舞鶴駅からは1.6kmほどと近いです。連絡バスもあります。
そのため、公共交通機関利用の旅客には、舞鶴~小樽航路が敦賀~苫小牧航路よりも便利です。
神戸三宮~舞鶴間の高速バスとフェリーがセットになった、「神戸バス得きっぷ」「北海道バス得きっぷ」もあります。12,000円~13,000円です(学割あり)。
本州・北海道のフェリー利用術
以上が、本州・北海道間のフェリー航路の全てです。
メインルートをひとつ挙げるとすれば、いまも昔も、青森~函館間の「青函航路」でしょうか。運航本数が豊富で、価格は手頃、乗船時間も短く、利用しやすい航路です。
首都圏からは「さんふらわあ」の大洗~苫小牧航路がポピュラーで、夕方便は家族連れでも利用しやすいです。
関西からは舞鶴~小樽間の新日本海フェリーが一般旅客に人気です。17,000トン級という大型の高速フェリーを投入していて、距離のわりに所要時間が短いという長所もあります。
八戸~苫小牧のシルバーフェリーも便利です。東北道をひたすら走り、夜行便で8時間休み、北海道へ!という旅行者も多いです。
北海道への旅は、フェリーを使うと時間はかかりますが、そのぶん距離の遠さを実感でき、旅行気分が盛り上がります。時間をかけて行くからこそ、旅がより充実したものになるに違いありません。(鎌倉淳)