不通が続いている日田彦山線の添田~夜明間について、BRTでの復旧が本決まりとなりそうです。鉄道復旧を求めていた東峰村が、BRT受け入れの姿勢を示しました。代替となるBRTの専用道の区間を延伸する案も提案されています。
JR九州がBRT提案
日田彦山線の添田~夜明間は、2017年7月の九州豪雨で被災して不通が続いています。路線を保有するJR九州は、2019年4月の「第4回日田彦山線復旧会議」で、鉄道、バス、BRTによる復旧案の選択肢を提示。鉄道案の場合は、年1億6000万円の地元負担を条件としました。
沿線自治体は地元負担なしの鉄道復旧を求めましたが、JR九州が拒否。2020年2月の第5回会議の後、3つの沿線基礎自治体のうち、添田町と日田市がBRTによる復旧案の受け入れに転じました。これに対し、東峰村だけが鉄道による復旧を求めていました。
小川知事が東峰村訪問
西日本新聞2020年5月18日付によりますと、福岡県の小川洋知事が5月16日に東峰村を訪問。渋谷博昭村長や佐々木紀嘉村議会議長らと会談し、鉄道復旧の断念を伝え陳謝しました。
その上で「彦山~筑前岩屋間のみをバス専用道とするJR九州のBRT案ではなく、自民党福岡県議団の独自案を踏まえて大分県により近い宝珠山駅までの延伸案を提案し、JRと交渉したい考え」を伝えました。東峰村側は容認の意向を示したということです。
JR案と自民党案
JR九州のBRT案では、添田~彦山間と筑前岩屋~夜明・日田間は一般道を利用し、彦山~筑前岩屋間は線路跡を活かした専用道にします。彦山~筑前岩屋間には分水嶺があり、鉄道跡の釈迦岳トンネルを活かしてスムーズに越え、それ以外の部分は、一般道を走ることで集落に近い位置に停留所を設ける、という案です。
これに対し、自民党県議団は独自に以下の4案を提示しました。
(1)添田~彦山間を一般道、彦山~夜明間を鉄道復旧
(2)添田~彦山間を一般道、彦山~筑前岩屋間をバス専用道、筑前岩屋~夜明間を鉄道復旧
(3)全線バス専用道
(4)彦山~大行司(の先)間をバス専用道、他は一般道
今回、小川知事が東峰村に提示した「福岡県案」は、自民党県議団の案(4)をベースにしたもので、彦山~宝珠山間を専用道としてBRTにすることを求める、というものです。
専用道を拡大すると
最終的に、JR九州との交渉がどうなるかはわかりませんが、BRT化を全自治体が受け入れるのであれば、日田彦山線の添田~夜明間の鉄道は廃止となります。その前提で、BRTの専用道区間について、議論が交わされることになります。
福岡県が示した筑前岩屋~宝珠山間のBRT化のメリットは、専用道区間を長く取ることによって、定時性を確保し速達化も図れることです。
一方で、JR九州案では一般道区間を通ることで、集落近くに停留所を設けられることがメリットです。JR九州では、筑前岩屋~大行司駅間4.2kmで、集落近くに3つの停留所を設ける計画を示しています。これにより、地域の集落からBRTを利用しやすくなります。
福岡県案のように、この区間を専用道にすると、集落近くにバス停が設けられないことになります。東峰村住民の「つかいやすさ」を重視するならJR九州案が優れているでしょう。
定時性や速達性を重視するなら福岡県案が優れていますが、筑前岩屋~宝珠山間の専用道は一般道と並行していて、一般道に信号が多くないので、速達性に大きな差はなさそう。また、渋滞が頻発するエリアでもないので、定時性の確保は一般道でもある程度可能です。
端からみれば、地域輸送では住民の「つかいやすさ」を重視した方がいいように思えます。が、福岡県案では日田彦山線の東峰村区間のほぼ全域が専用道になり、「鉄道に近い形で村に路線を残す」という点で、政治的な意味があるのかもしれません。
最終的には地元自治体とJRが話し合って決めることですが、どんな結論になるか注目です。(鎌倉淳)